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小売技術の発展プロセス

4. ヨーロッパの小売業

4.2. 小売技術の発展プロセス

110 価格

・低価格

・EDLP と HILO の中間

・アメリカのスーパーマーケ ットおよびディスカウントス トア業態の確立

・大きなバイイングパワー

・規模の経済

・低いオペレーションコスト

・低い粗利率(15~20%)

売上

・非常に大規模 ・上位企業への市場の集中化

(1960 年代後半~70 年代)

・所得水準の増加

・大きなセリングパワー(大 規模店舗+多店舗+大量陳 列)

・高い坪効率

・店舗の独立性

品ぞろえ

・広範な品ぞろえ(4~5 万品 目)

・各カテゴリーの品目数は限 定的(浅い品ぞろえ)

・女性の就業の増加

・購買習慣の変化

・ワンストップショッピング コンセプト

広告・販促

・大量陳列

・生鮮食品の対面販売

・安売り販売プロモーション の実施

・市場での購買習慣 ・大きなバイイングパワー

・規模の経済

・低いオペレーションコスト

サービス

・広い駐車場

・単一階の売場

・長い営業時間

・女性の就業の増加

・購買習慣の変化

・低いオペレーションコスト

・ワンストップショッピング コンセプト

サプライチ ェーン

・店頭在庫

・店舗納品

・物流センターへの集約

・高い在庫回転率

・店舗の独立性

・小売業管轄の物流センター

役割

・小売取引の主体

・チャネルリーダー

・購買習慣の変化

・アメリカのスーパーマーケ ットおよびディスカウントス トア業態の確立

・大規模小売グループ

出典:筆者作成

4.2. 小売技術の発展プロセス

111

な精神が芽生えた証左であるといえる121。年代ごとに、重要な小売技術について、その発展 経緯を見てみたい。

1950 年代はヨーロッパでカウンターサービスからセルフサービスへの移行が進んだ時期 であるが、セルフサービス自体の起源はより以前に遡る。セルフサービス技術は、クラレ ンス・ソーンダース(Clarence Saunders)が 1915 年にキャッシュ&キャリー(C&C)業態 を開店することにより、アメリカの卸売業に持ち込まれたのが最初である。その後、彼は このコンセプトを小売業に流用し、1916 年、テネシー州メンフィスにピグリー・ウィグリ ーストア(Piggly Wiggly Store)をオープンした。その後ピークの 1922 年には、店舗数 は 2660 まで伸びたが、その後投機問題などから分社化されてしまう122

再度セルフサービス技術が活用されたのは、マイケル・カレン(Michael Cullen)が 1930 年に最初のスーパーマーケットをオープンしたことによる。そしてスーパーマーケット業 態は、1932 年にロバート・オーティス(Robert Otis)とロイ・ドーソン(Roy Dawson)が オープンしたビッグベアストア(Big Bear Store)で本格的な成功を収め、1930 年代を通 じて発展していった。

ヨーロッパでは、1950 年代にアメリカからの業態コンセプトの輸入というかたちでスー パーマーケット業態が広まったが、それと同時にセルフサービス技術も浸透していった。

1950 年にヨーロッパ全体で 1200 店舗であったセルフサービス店は、1960 年には 45500 店 舗へと 37.9 倍に増加した(図表 4-13)。なおフランスでセルフサービス方式が導入された のは、1948 年であるとされている。パリで開始した食料品店のグーレ・チュルパン(Goulet Turpin)とサンテティエンヌ(Saint-Etienne)に開設したカジノ(Casino)が最初であっ たといわれる123

図表 4-13 欧州のセルフサービス店(1960 年)

国名 店舗数 オーストリア 500 ベルギー 350 デンマーク 850 フィンランド 395 フランス 1,800 ドイツ※1 22,600 アイルランド 150 イタリア 200 オランダ 2,250 ノルウェー 1,800 スペイン 400 スウェーデン 4,760

112

スイス 1,720 イギリス 7,750 西ヨーロッパ計 45525

※1 ザールおよび西ベルリンを含む 出典:Jefferys and Knee(1962)、p.106

4.2.2. 1960 年代

業種店が衰退し、総合店が拡大した 1960 年代からは、消費者はワンストップショッピン グの利便性を享受できるようになった124。専門業種店に代わり、肉の加工やパンの製造、野 菜の包装などの工程が、工場で集約化され、マスマーチャンダイジングを可能にした125。専 門小売店のシェアは、フランスでは 50.1%(1966 年)から 30.1%(1977 年)へ、イギリ スでは 41.7%(1966 年)から 35.9%(1976 年)へ、西ドイツでは 14.4%(1968 年)から 13.2%(1979 年)へ減少している(図表 4-14)。

図表 4-14 国別小売業の年間販売額

食料品小売業 64,871,349 100.0% 4,988,969 100.0% 45,100,074 100.0%

各種食料品小売業 32,359,465 49.9% 2,907,655 58.3% 38,601,536 85.6%

専門小売業(業種店) 32,511,884 50.1% 2,081,314 41.7% 6,498,538 14.4%

イギリス(1966年)

単位:千ポンド ※2 フランス(1966年)

単位:千フラン ※3

西ドイツ(1968年)

単位:千マルク ※4

食料品小売業 204,303,157 100.0% 12,016,000 100.0% 107,928,381 100.0%

各種食料品小売業 142,796,690 69.9% 7,700,000 64.1% 93,686,500 86.8%

専門小売業(業種店) 61,506,467 30.1% 4,316,000 35.9% 14,241,881 13.2%

イギリス(1976年)

単位:千ポンド ※2 フランス(1977年)

単位:千フラン ※3

西ドイツ(1979年)

単位:千マルク ※4

※1 出典:INSEE, "Recensement de la Distribution Année 1966."

※2 出典:Business Statistics Office, Department of Industry, "Report on the Census of Distribution and Other Service."

※3 出典:Statistisches Bundesamt, "Handels-und Gaststättenzählung."

出典:田島・宮下(1985)、資料 2 より作成。

在庫管理、粗利管理などにおいて統計処理が始まったのは戦後になってからであったが、

1960 年頃には大規模小売業は、コンピュータによる総合的な統計処理を行うようになって いた126。マーク式やパンチ式注文書による注文や計算機による再発注量の自動計算なども普 及しつつあった。しかしながらこのような進展は、非常に大きな小売業に限定されていた。

また戦後からは小売統計の整備も進み、一部の国からパフォーマンス比較の基本ツールと して活用できるようになっていた。戦前から小売企業が個別に行っていた企業間、店舗間

113

のコスト比較の試みが開花し、次第に多くの企業がそれらデータを活用し始めたのも、こ の時期からである127

本格的に小売オペレーションの機械化や情報化が進展したのは、人件費が急増した 1960 年以降である。ここから、ハイパーマーケットにとって重要な技術である店舗における在 庫管理や、在庫のパレット化、マテリアルハンドリングの機械化(引き上げ機の採用)が 行われるようになった。工場で包装された商品をパレットでそのまま店頭に運ぶことがで きるようになり、陳列棚や陳列のためのスタッフが不要になった。さらに、情報の IT 化も 重要な変化であった。バックオフィスやチェックアウトに機械を導入することにより、小 売業の技術は大きく進化した。IT 化により、店舗内での発注、在庫コントロール、商品ト ラッキングが可能になり、労働力が大幅に節約された。特にスキャン方式による POS シス テムは、人件費や在庫管理の面で大きな効率化につながった。しかしながらその浸透は遅 く、アメリカでは 1979 年に 1450 店、1980 年に 2940 店のスーパーマーケットがスキャンシ ステムを導入していたが、ヨーロッパでは、1980 年代半ばまでにたった 32 の店舗しか導入 していなかった128。ドイツでは 1977 年に初めて導入された129

ナショナルチェーン化が進み、市場シェアの集中化が本格化した時代には、チェーンス トアの店舗フォーマットの標準化が進んだ(イギリスは 1950 年代、フランスおよびドイツ は 1960 年代後半)130。チェーンストアは標準化を進め、複製の経済を発揮することで、さ らなる優位性を築いていった。

4.2.3. 1970 年代

1970 年代からは、店舗の大規模化が進んだ。これに伴い、マスマーチャンダイジングが 進展し、大量販売の商品政策を緻密に計画し、高度にコントロールする企業が出てきた。

広範な商品ミックスを管理し、綿密な価格政策の下、低価格の商品を大量販売することで 利益を確保する手法が、いっそう精緻化された131

マスマーチャンダイジングの進展に伴い、店舗は倉庫機能を併せ持つようになる。在庫 のパレット化、昇降機の使用など、マテリアルハンドリングの自動化が進み、さらには倉 庫で行われていた作業が店頭で行われるようになっていった132

マテリアルハンドリングの自動化とともに、情報ハンドリングの自動化も進展した。POS システムやスキャンシステムの導入が拡大した。カテゴリー・マネジメントが取り入れら れたのもこの時期である。カテゴリー・マネジメントは 1970 年代に北米の非食品大規模流 通業で生まれた手法である。その後、アメリカの食品部門およびヨーロッパの流通業者に よって採用され、1994 年には、ヨーロッパの流通業者の 22%がカテゴリー・マネジメント を採用し、28%がその実施を計画していた133。カテゴリー・マネジメントが取り入れられた 理由には、(1)品目数の増加、(2)提供物の差別化志向、(3)機能別組織(バイヤーとマ ーチャンダイザーの分離)の限界、(4)IT の発展によるデータ活用レベルの向上134が挙げ られる。「機能別組織の限界」については、価格交渉をするバイヤーとマーチャンダイジン

114

グの決定を行うマーチャンダイザーとが分離していることにより、取引先との交渉の窓口 が複数になったり、成果責任の所在があいまいになったりする。それを解消するために、

カテゴリーレベルでの権限と成果責任の所在を明らかにし、マーチャンダイジングを精密 に行うことを可能にしたのが、カテゴリー・マネジメントの手法である。

ドーソン(1982)は、アズダ(ASDA)の商品政策に、小売業の大きな進化の一端が垣間 見られると指摘する。アズダは、商品選定の際に次のような基準を用意した。

①速い在庫回転と高いスペース効率により、利益貢献すること。非食品では、運転資本が 極小化する在庫回転 10 を目標とすること。

②在庫管理を精緻化し、商品入手可能率 100%を達成するために、メーカーの倉庫使用条件 を制限し、配送期日を厳密に厳守させること。

③新商品の導入により、店舗に多くの労働力の投入が必要にならないこと。

④消費者がアズダを 1 番の選択肢として考えるような品ぞろえを提供すること。この品ぞ ろえは、在庫回転基準により厳密に調整されること。

商品政策にもとづいて適切な顧客サービスを提供することにより、利益、運転資本、在 庫回転、スペース効率が厳密にコントロールされるようになった様子がうかがえる。

商品政策のコントロールが精緻化されるに従い、1970 年代末からはまずイギリスで、ロ ジスティクスの分野に小売業のコントロールが及んだ。自主的なロジスティクス戦略の開 発を達成した流通業グループによる統制力の増大とともに、配送の合理化と集中化が進行 した。多数で小規模であった配送センターは、次第に規模を拡大し、数が減少した。

フランスの物流は、実質的には 80 年代までメーカーの手に握られており、メーカーは自 社の中央倉庫ないしは地方倉庫から直接、あるいは卸を通じて商品を配送していた。小売 業による統制が進んだのは、90 年代からであった。大規模流通業者が在庫センター、プラ ットフォーム、(少数例ではあるが)輸送用車輛部隊を持ち始め、ロジスティクスの集中化 が進んだ。1994 年には、流通業者の地方倉庫から配送される製品(主要食料品)の比率は 平均 87%であり、ドイツ、スぺイン、イタリアを上回り、先行したイギリスに追いつく水 準となった。また、全カテゴリーで万遍なく多いという点も指摘できる(図表 4-15)。し かしながら、在庫水準は他国に比べて低い状況にある。特に小売の店頭と地方プラットフ ォームにおける在庫日数が多くなっている(図表 4-16)。

図表 4-15 流通業者の地方倉庫から配送される製品の比率

イギリス イタリア スペイン ドイツ フランス 超生鮮食品 65 20 70 60 75 生鮮食品 90 80 60 50 90 缶詰、瓶詰 97 95 95 75 90