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比較経営論における外部環境要因

2. 小売技術の国際移転に関連する既存研究

2.4. 比較流通論

2.4.4. 比較経営論における外部環境要因

先述の国際技術移転研究では、企業側が操作可能な要因の解明を積極的に行っているも のの、経済的・社会的要因などの操作不可能な外部環境要因の影響も大いに指摘されてい る。外部環境要因のうち操作不可能なものについて企業は何もする必要がないわけではな

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く、それらに適応するように技術やオペレーションを変更したり、環境要因が変化するよ うに働きかけたりする必要がある。そこで、外部環境要因の影響をより詳細に分析してい る比較経営論について言及したい。比較経営論は、技術の中でも特に経営技術について、

国・地域ごとの比較を行う学問であるといえる。

ファーマー・リッチマン(1965)は、マネジメント・プロセスに影響を及ぼす外部環境

(図表 2-15)を、①教育文化的変数(6 項目)、②社会文化的変数(9 項目)、③政治・法 律変数(6 項目)、④経済変数(8 項目)に分け、マネジメント・プロセスの各要素にどの ように影響するかを整理41し、企業や国の効率を比較する重要性を指摘した。ここで重要な 視点は、環境要因およびマネジメント・プロセスともに、構成要素が体系的に作用し合う

“システム”と見なしている点である。したがって、部分的な要素だけを取り上げて比較 したり、作用を分析したりするのは意味がなく、システム全体を取り上げる必要性を指摘 している。しかしながら、それぞれのシステム内で各要素がどのような体系でシステムを 作り上げているのか、またその体系自体がどの程度効果・効率に影響を及ぼしているのか については、言及されていない。比較経営の研究では、差異を明らかにすることが第一義 であるため、その必要性は少ないのかもしれないが、それを国際経営に応用しようとした 場合、外部環境の制約要因を把握し、それに対して適切な(効果・効率を高めるような)

かたちで、マネジメント・プロセスの各要素を適用・適応することが必要となる。その際 には、環境およびマネジメント・プロセスのシステム体系について、またその効果・効率 への影響について、明らかにすることが望まれる。

図表 2-15 環境制約-マネジメント・プロセス-経営効果-企業効率間の関係

外部環境制約

(Cn.m

マネジメント・プロセス要 素

(Bn.m

経営効率および 経営上の効果

(X)

企業効率

(Ef

システム効率

(ET) 影響

影響 影響

決定

決定 B1 計画と革新(12項目)

B2 統制(7項目)

B3 組織(11項目)

B4 人事(10項目)

B5 指揮、リーダーシップ、動機 づけ(11項目)

B6 マーケティング(4項目)

B7 生産と調達(9項目)

B8 R&D(1項目)

B9 財務(5項目)

B10 広報・対外関係(6項目)

C1 教育文化的変数(6項目)

C2 社会文化的変数(9項目)

C3 政治・法律変数6項目)

C4 経済変数(8項目)

44 出典:Farmer and Richman(1965)、p.35

さらにネガンディ・プラサッド(1971)では、ファーマー・リッチマン(1965)の議論 を拡張し、図表 2-16 のようなモデルを提示している。実務に対して影響を及ぼす要因とし て、外部環境だけでなく、内部環境であるマネジメント・フィロソフィーの観点が追加さ れている。

図表 2-16 比較経営の構成要素:ネガンディ・プラサッドモデル

マネジメント・フィロソフィー マネジメント層のステークホル

ダーに対する態度 従業員 消費者 供給業者

株主 政府 地域社会

環境要因 社会経済

教育 政治 法律

経営実務 計画 組織化

人事 動機づけと指揮

統制

マネジメント効果

企業効果

影響 影響

影響

出典:Negandhi and Prasad(1971)、p.23

フィロソフィー、実務、効果性の各要素については、ネガンディ・エスタフェン(1965)

のアメリカの経営原理の発展途上国における国際移転の研究モデルにて提示されている

(図表 2-17)。外部環境の影響力を測るために、マネジメント・フィロソフィー、マネジ メント・プロセス、マネジメント効率の 3 つの要因について、アメリカにある米系企業、

インドにある米系企業、インドにあるインド系企業の 3 社を比較することで、どのような 外部環境要因がマネジャーのどのような機能に影響を及ぼすかが明らかになることが指摘 された。しかしながら、やはりここでも、外部環境の体系やマネジメント・プロセスの体 系およびその体系がどのようにマネジメント効率に影響を及ぼすかについては明らかにさ れていない。

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図表 2-17 ネガンディ・エスタフェン(1965)のモデル

<3 つの要因>

a)マネジメント・フィロソフィー

要素 1.消費者 2.従業員 3.サプライヤー 4.物流業者 5.政府と地域社会 6.株主

b)マネジメント・プロセス

要素 1.計画 2.組織化 3.人事 4.統制 5.指揮 c)マネジメント効率

要素

1.総・純利益 2.利益成長率 3.市場シェア成長率 4.株価成長率 5.労働移動率 6.消費者ランキング 政策

策定者 消費者 物流業者 従業員

サプライヤー 政府と地域社会

株主

統制

指揮 人事

計画 組織化

企業成長

企業 イメージ

労働移動率

△株価

△利益 利益

<検証設計>

P

2

P

3

Z

1

Z

2

Z

2 インドの米系企業

インドのインド系 企業

E

1

E

2

E

2

X

1

X

1

X

2 社会・経済、政治、法

律、文化的環境

マネジメント・フィロソ

フィー マネジメント・プロセス マネジメント効率

米国の米系企業

P

1

理論的根拠

P1 と P2 の差異は、外部環境要因(E1 と E2 との差)によるもの

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P2 と P3 の差異は、マネジメント・フィロソフィー(X1 と X2 との差)によるもの

出典:Negandhi and Estafen(1965)、p.316・Negandhi and Prasad(1971)、p.20

そこで、本研究の対象となる日仏の環境の差異を見てみたい(図表 2-18)。集団主義と 個人主義、年功序列と成果主義、曖昧な職務区分と明確な職務区分、企業別労働組合と階 層別労働組合、株式相互持合と家族所有というように、多くの面で相反する要因が経営管 理方式を決定していることがわかる。特に経済過程において、個より集団の利を追及する という発想は、大きく欧米と異なる点である。その点を高橋(2000)では、「日本の資本主 義が欧米先進国に比べて後発であったということは、官営工場と国立銀行によって工業化 を誘導しなければならない事態をもたらし、その時点から①企業と政府の強い結びつきを 作り出し、欧米にみられた工業化の理念である「自由主義」、「個人主義」、「合理主義」、「経 済主義」は育まれず、「ナショナリズム」こそが工業化の理念となったのである」と指摘し ている。

図表 2-18 経営管理方式の決定要因

国・地域 文化構造 企業内外の諸組織 経済過程

日本

z 宗教(神道、仏教、

儒教、道教の混交)

z 集団主義

z 公教育制度(企業内 教育とは分離)

z 法律(民法、刑法、

商法、経済法)

z 終身雇用・年功賃金 制

z 集団的意思決定(稟 議制度)

z 個人の職務区分が重 複

z 企業内教育・訓練 z 総合商社

z 仕入れ先企業の下請 け化

z 財界(経済 4 団体)

の組織

z 企業別労働組合

z 通産省指導の経済 政策

z 企業集団と株式相 互持合

z 総合商社による物 流

z 経済の二重構造 z 個人レベルの競争

でなく集団・企業集 団間の競争 z 狭隘な国内市場(貿

易立国)

フランス

z カソリック

z グ ラ ン ド ゼ コ ー ル

(ホワイト・カラー のためのカードル制 度)

z 強い社会階層の区別

z (社会階層の区別反 映)

z 職務給・成果による 昇進

z 個人の職務(権限・

責任)の範囲が明確

z 反資本主義・国家資 本主義

z 会社株式の家族所 有

47 z 貴族主義(官僚社会)

z 強い個人主義

な経営組織

z 各組織を代表する労 働組合

出典:高橋(2000)、282~283 ページ

以上のように、比較経営論の成果から、外部環境要因の影響は非常に大きくかつ根深い ものであること、しかも外部環境要因はバラバラに存在するものではなく体系化されたも のであること、外部環境要因はマネジメント・プロセスに影響を及ぼすだけでなくマネジ メント効率にも影響を与えることなどが見て取れる。いたずらに要因を列挙するのではな く、要因間の体系、またそれらに影響を受けるマネジメント・プロセスの体系について理 解することで、正しい作用関係が理解できるのではないだろうか。