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IAS 11.21

IAS 38

契約を獲得するためのコストの資産化

現行のIFRSには、顧客との契約を獲得するためのコストの会計処理に関するガイダンスは含ま れていない。IFRS解釈指針委員会は、販売コストの取扱いについて審議し、明確に識別可能な顧 客との契約を獲得するために直接発生した、回収可能な増分コストのみが、IAS第38号の適用範 囲に含まれる無形資産として認識する要件を満たすとした。

さらに、契約がIAS第11号の適用範囲である場合、契約に直接関連し、契約を獲得する過程で発 生した原価も、それらを区分して識別し、信頼性をもって測定することができ、かつ、その契約 を獲得する可能性が高ければ、工事契約原価の一部として含められる。

IFRS第15号は、このトピックについて明確化し、新たなコスト区分を導入した。契約を獲得する ための増分コストの資産化から生じる資産は、IAS第38号ではなく、IFRS第15号の適用範囲に含 まれる。

4.2 契約履行コスト

新基準の規定

IFRS 15.95, 96, BC308

契約を履行するために発生したコストが他の基準(例:IAS第2号「棚卸資産」、IAS第16号「有形固

定資産」、IAS第38号「無形資産」)の適用範囲に含まれない場合は、以下の要件のすべてを満たす ときに限り、資産として認識する。

-

既存の契約または特定の予想される契約に直接関連していること

-

将来において履行義務の充足に用いられる企業の資源を創出するか、または増価させること

-

回収が見込まれること

はい

契約履行コストとして資産化する 要件を満たすか?

いいえ

契約の履行に際して発生するコストは、

他のガイダンスの適用範囲に含まれるか? 当該他のガイダンスを適用する

発生時に費用処理する いいえ

はい 資産化する

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IFRS 15.97-98

以下の表は、特定の要件を満たす場合に資産化できるコストと、費用処理されるコストの例である。

他の要件を満たす場合に

資産化する直接コスト

発生時に費用処理するコスト

-

直接労務費-例えば、従業員の賃金

-

一般管理費-ただし、契約に基づき顧客に 明示的に請求可能な場合を除く

-

直接材料費-例えば、部材

-

充足した履行義務に関連するコスト

-

契約に含まれる履行義務の充足に直接関

連するコストの配分-例えば、償却費や減 価償却費

-

仕損した材料費、労務費、またはその他の 契約コスト(a)

-

契約に基づき顧客に明示的に請求可能な コスト

-

充足していない履行義務と部分的に充足 した履行義務のいずれに関連するコスト かが区別できないコスト

-

企業が契約を締結したという理由のみで 発生したその他のコスト-例えば、外注費

(a) これらのコストの進捗度の測定に対する影響については3.5.3.3を参照。

設例35 契約を履行するために発生する初期コスト

IFRS 15.IE192-196

管理サービス企業Mは、顧客YのITデータ・センターを固定の月額手数料で5年間管理する契約を

締結した。サービスを提供する前に、M社はY社のデータを移行しテストするための技術基盤を 設計し構築する。この技術基盤はY社に移転せず、別個の履行義務とはならない。この技術基盤 を確立するために発生する当初のコストは以下のとおりである。

(単位:千円)

設計サービス 400

ハードウェア及びソフトウェア 2,100

移行及びテスト 1,000

合計 3,500

これらの初期コストは、主に契約を履行する活動に関連するが、財またはサービスを顧客に移転 するものではない。M社はこれらのコストを以下のとおり会計処理する。

コストの種類 会計上の取り扱い

ハードウェア 有形固定資産に関するガイダンスに基づき会計処理する。

ソフトウェア 無形資産に関するガイダンスに基づき会計処理する。

データ・センターの設計、

移行、テスト

以下の理由から、新基準に基づき資産化する。

-

契約に直接関連する。

-

将来において履行義務を充足するのに用いられるであろう 企業の資源を創出または増価させる。

-

5年間の契約期間にわたって回収されると見込まれる。

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当初認識後、資産化されたハードウェア及びソフトウェアのコストは、他の適用可能なガイダン スに従って測定する。IFRS第15号に従い資産化されるコストは、IFRS第15号の償却及び減損に 関する規定の対象となる(4.3及び4.4を参照)。

KPMGの見解

IFRS 15.BC312-316

IAS 2

IFRS 15.IE110-115

学習曲線が含まれる契約

ノウハウ構築やプロセス改善による効率の向上により一定の期間にわたりコストが逓減する、重 要な学習曲線が含まれる契約について、新基準の適用によって会計処理が影響を受ける可能性が ある。両ボードは、新基準が、以下の両方の条件を満たす場合の学習曲線の効果に関する会計処 理を扱っていることを示した。

-

企業が所定の数の単位を引き渡す単一の履行義務を有している。

-

履行義務が一定の期間にわたり充足される。

そのようなケースでは、より多くのコストが発生する最初のユニットの製造時点で、より多くの 収益及び費用の認識が前倒しされる結果となる進捗度の測定方法(例:コスト対コスト法)を企 業が選択する可能性が高いと両ボードは指摘した。契約の初期における企業の履行の価値がその 後の履行よりも大きく、販売されるのが1つのユニットのみであるならば、企業はより高い価格 で販売していたであろうことから、両ボードはこの影響が適切であると考えている。さらに、コ ストが発生するにつれて支配が顧客に移転する場合、それらのコストは過去の履行に関連するた め、資産化するのは不適切となる。したがって、これらの条件が揃っており、コスト対コスト法 を用いている場合は、一般的に学習曲線を描くコストは資産化されない。

別のケースで、単一の契約に複数の履行義務が含まれており(例:設備や機械の複数の部品のよ うな複数の財や製品を販売する場合)、個々の履行義務がそれぞれ一時点で(例:財の支配の移 転時に)充足される場合は、企業は、他の基準書(例:棚卸資産に関するガイダンス)に基づき 履行義務のコストを会計処理することが多い。これは、契約を履行するためのコストが発生して いるが、履行義務が一定の期間にわたって充足されていない場合、企業は他のガイダンスの適用 範囲となる資産(例:棚卸資産)を創出している可能性が高いためである。

取引価格の上限を超過するコスト

特定の状況のもとでは、取引から得られる収益、または履行義務に配分する取引価格が、顧客に 移転する財の原価よりも低い金額に制限されることにより、契約の初期に損失が生じる場合があ る。このようなケースでは、他の特定のガイダンスで繰延べが要求されていない限り、その初期 の損失を繰り延べることは適切ではない。

例えば、企業が原価100千円の財を120千円の対価を明示して販売する。ただし、対価の総額に ついて将来、価格譲歩が行われるリスクがある。企業は、この契約は不利なものではなく、損失 の見越し計上は他の適用されるガイダンスのもとで要求されないと判定する。企業は取引価格を 制限し、90千円について重大な戻し入れが生じない可能性が非常に高いと結論付けた。支配の移 転時に、企業は90千円の収益と100千円の原価を認識する。この会計仕訳により、変動対価に伴 う不確実性が解消されるまで初期の損失が認識されることになる。変動対価及び収益認識累計額 の制限に関する説明は3.3.1を参照。

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現行のIFRSとの比較

IAS 11.21

IAS 11