IAS 2, IAS 36
IAS 11.7-10, IAS 18.13
6.6 売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティ
新基準の規定
IFRS 15.B63
知的財産のライセンスに帰属する売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティについて、以下のいずれか遅いほうの時点でその金額を認識する。
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その後の販売または使用が発生した-
売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティの一部または全部が配分されている履行義務 が充足(または部分的に充足)されたIFRS 15.B63A, B63B
これは一般規定の例外であり、以下のいずれかの場合に適用する。-
ロイヤルティが知的財産のライセンスにのみ関連している-
ライセンスが、ロイヤルティが関連する支配的な項目である(例:ロイヤルティが関連する他 の財またはサービスからよりも著しく多くの価値を顧客がライセンスから得る場合)企業はロイヤルティを、この例外規定の対象となる部分と、(収益認識累計額の制限を含む)変動 対価に関するガイダンス(3.3.1を参照)の対象となる部分とに分割しない。
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設例51 ロイヤルティ-知的財産のライセンスが支配的な項目である場合
映画配給会社Dは、映画を6週間にわたって映画館で上映する権利のライセンスを興行企業Tに供 与する。D社は、映画館にディスプレイするためのグッズをT社に提供し、ラジオCMを流すこと で合意した。それらと交換に、D社はチケットの売上高の30%に相当するロイヤルティを受け取る。
D社は、T社がライセンスから得る価値が、関連する活動から得る価値よりも著しく大きいと合 理的に期待しており、そのため、映画を上映するライセンスが、この売上高ベースのロイヤル ティが関連する支配的な項目であるとD社は結論付ける。
D社はロイヤルティの免除規定を売上高ベースのロイヤルティ全体に適用するため、広告宣伝活 動が提供される時点でロイヤルティの見積額に基づき収益を認識することはできない。
ライセンス、ディスプレイ用グッズ及び広告宣伝活動がそれぞれ別個の履行義務である場合、D 社はその後の売上が生じた時点で、または生じるにつれ、売上高ベースのロイヤルティを個々の 履行義務に配分する。そして、履行義務が充足されているか否か(この例では知的財産を使用す る権利が、顧客に移転したか否か、または広告宣伝サービスが完了したか否か)に基づき個々の 履行義務に配分されたロイヤルティを認識する。
KPMGの見解
IFRS 15.63A
売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティに関する例外規定により、様々な種類のライセ ンスの会計処理が整合したものとなる
売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティに関する例外規定の実務への主な影響として、
2種類のライセンス間の区分の重要性が低くなり得ることが挙げられる。特に、ライセンスの対 価が売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティのみで構成されている場合は、ライセンス が顧客に、知的財産へのアクセス権と知的財産の使用権のいずれを提供するのかに関係なく、同 一の(または、ほぼ類似した)パターンで収益を認識する可能性が高い。
知的財産のライセンスが「支配的」な項目であるか否かを判定する際には判断が要求される 企業は契約に含まれるライセンスと他の財またはサービス(ライセンスと区別できる場合もでき ない場合もある)と交換に、売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティを受け取る権利を 有する場合がある。知的財産のライセンスは、他の財またはサービスと組み合わされ、対価は、
契約に含まれるすべての財またはサービスに関する売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤ ルティの形式をとることが多い。
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ソフトウェアのライセンスは通常、販売後の顧客サポート・サービスやその他のサービス(例:ホスティング・サービス、実装サービス)またはハードウェアと一緒に販売される。その場 合、対価は区分されず、売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティの形式をとること が多い。
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フランチャイズのライセンスは通常、コンサルティングや研修サービス、または設備と一緒 に販売される。その場合、継続的な対価は売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティ の形式をとることが多い。137
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バイオテクノロジー及び製薬のライセンスは通常、研究開発サービス及び(または)顧客の ために薬品を製造する約束と一緒に販売されることが多い。その場合、対価は区分されず、売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティの形式をとることが多い。
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デジタル・メディアのライセンスは通常、対価は区分されず、売上高ベースのロイヤルティ の形式をとることが多い。このガイダンスは、ライセンスがロイヤルティの関連する支配的な項目である場合に、ロイヤル ティの例外規定が適用されることを明確にしている。「支配的」という文言は定義されていない。
ただし、新基準では、「ロイヤルティが関連する他の財またはサービスからよりも著しく多くの 価値を顧客がライセンスから得る場合がこれに該当する」とされている。
ライセンスが取決めにおける支配的な項目であるか否かの判定には、重要な判断が要求される。
例えば、企業によっては、知的財産のライセンスが財またはサービスの束の価値または有用性の 大部分またはほぼすべてを占める場合に、支配的な項目であると判定する場合がある。あるい は、知的財産のライセンスが財またはサービスの束の中で最も大きな項目である場合に、例外規 定が適用されると結論付ける可能性もある。このような解釈の相違は、ロイヤルティの例外規定 を取決めに適用するか否かの結論に影響を与え得るため、実務にばらつきが生じ、取引価格や収 益認識のタイミングに差異が出る可能性がある。
マイルストーンの達成を条件とする支払いへのロイヤルティの例外規定の適用
企業Xは企業Yに知的財産のライセンスを供与する契約を締結する。X社はライセンスと交換に、
Y社が50百万円の売り上げを達成すると、マイルストーンの達成を条件とする5百万円の支払い を受け取る権利を有する。
マイルストーンの達成を条件とする支払いは、顧客によるその後の売上に基づくため、ロイヤル ティの例外規定は通常、マイルストーンの達成を条件とする支払いに適用される。したがって、
X社はその後の売上が発生するまでは変動金額について収益を認識してはならない。ただし、こ の見解は、規制当局の承認や、臨床試験への登録といった他の事象や指標を参照して決定される マイルストーンの達成を条件とする支払いには適用されない。
例えば、生命科学産業における取決めは、薬品の知的財産のライセンスと研究開発サービスを実 施する義務が含まれ、その後に発生する報酬の一部は、規制当局が当該薬品を認可することを条 件として支払われることがよくある。
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現行のIFRSとの比較
IAS 18.IE20
現行のIFRSにおいては、ライセンス料またはロイヤルティを受領するか否かが将来の事象に依存する場合、企業はライセンス料またはロイヤルティを受領する可能性が高くなったときにのみ 収益を認識する。これは通常、ライセンス料またはロイヤルティの支払いのトリガーとなる将来 の事象が発生した時点である。
多くのケースで、新基準の売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティに関する例外規定に 従った場合の会計処理は、現行のIFRSと同一となる。ただし、新基準では、売上高ベースまたは 使用量ベースのロイヤルティは、販売または使用が発生する可能性が高い場合であっても、販売 や使用が発生するまで認識することを禁じられている。したがって、現在、売上または使用が発 生する前に売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティを認識している企業は、新基準にお いては収益の認識が遅くなる。
先述のKPMGの見解で示しているとおり、新基準の売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤル ティに関する例外規定がどのような場合に適用できるかは、必ずしも明確であるとはいえない。
将来の事象を条件とするすべてのライセンス料またはロイヤルティに広く適用されている現行 のIFRSでは、通常、このような問題はなかった。したがって、この例外規定が適用されない取決 めについては、(収益認識累計額の制限を含む)変動対価に関するガイダンスを適用する場合、
現行のIFRSのもとでよりも収益認識が前倒しされる可能性がある。