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a. バウチャーの独立販売価格の算定:500千円(購入すると見込まれる製品の価格)×15%(増分値引率)

×80%(行使される可能性)

Cは当初の購入から30日以内に追加の製品200千円(値引前の価格)を購入し、150千円を現金で支 払う。

Cはバウチャーの失効まで追加の購入は行わない。したがって、失効日にR社はバウチャーに配分 されていた残余の金額を収益として認識する。

R社は以下の仕訳を行う。

(単位:千円)

借方 貸方

現金 2,000

収益 1,942

契約負債 58

コンピューターとバウチャーの当初の販売を認識する

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© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

借方 貸方

現金 150(a)

契約負債 23(b)

収益 173

追加の購入を認識する

契約負債 35(c)

収益 35

バウチャーの失効を認識する 注:

(a) 追加の製品の購入の値引後の販売価格:200-(200×25%)

(b) 履行義務の部分的な充足:58×(200(購入)÷500(期待される購入総額)

(c)

失効時の履行義務の清算:58-23

KPMGの見解

累積的な権利を付与する顧客のオプションは総額で評価する

多くのケースで、企業が顧客に付与する権利が、顧客が追加の購入を行うにつれて累積する。例 えば、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムにおいて、当初の取引で付与されるポイントは通 常、その後の取引で付与されるポイントと一緒に使用される。さらに、単一の取引で付与される ポイントの価値が低くても、累積的に行われる取引にわたって付与されるポイントの価値は合計 するとずっと高くなる可能性がある。そのようなケースでは、累積されるという権利の性質が取 決めの不可欠な要素となる。

これらの顧客のオプションが重要な権利であるか否かを判定する際に、企業は取引で受け取る権 利の価値の累計額、過去の取引から累積された権利、及び将来の取引から予測される追加的な権 利を検討する。

企業は関連するすべての定量的及び定性的な要因を考慮する。

重要な権利の行使

顧客が追加的な財またはサービスについて重要な権利を行使する場合、企業は以下のいずれかの アプローチを用いてそれを会計処理する。

-

当初の契約の継続:

このアプローチのもとでは、企業は重要な権利に配分される対価を、財またはサービスに係 る対価の契約オプションのもとでの追加(すなわち、取引価格の変更)として取り扱う。

-

契約変更:

このアプローチのもとでは、企業は、オプションの行使により移転する財またはサービスが

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契約に含まれる他の財またはサービスと区別できるかを評価するのに契約変更に関するガイ ダンスを適用する。評価の結果により、この契約変更を将来に向かって会計処理するか、累 積キャッチアップ調整により会計処理するかが決定される。

以下の設例は、オプションにより提供する財またはサービスが当初の契約で約束した他の財また はサービスと区別できる場合の2つのアプローチを例示しており、いずれのアプローチを適用し ても会計結果は類似することになる。

設例61 重要な権利の行使 シナリオ1

サービス・プロバイダーSは、サービスAを2年間にわたって100千円で提供する契約を顧客M と締結する。S社はMに、サービスBを2年間にわたって、通常400千円のところ300千円で購 入するオプションを提示する。S社はこのオプションが重要な権利を生じさせるものであり、

別個の履行義務であると判定する。S社は、独立販売価格に基づき、サービスAに75千円、サー ビスBを購入するオプションに25千円を配分する。契約開始から6ヶ月後に、MはサービスB を購入するオプションを行使する。

シナリオ2

シナリオ1を変更し、サービスAとサービスBは区別できないとする。オプションの行使日に おける進捗度は25%から10%に変更する。その他の前提条件は同じとする。

以下の表は、シナリオ1とシナリオ2のもとで、各アプローチによりS社がオプションの行使 をどのように会計処理するかを説明するものである。

当初の契約の継続 契約変更

将来に向かって会計処理 区別できる:

将来に向かって会計処理

区別できない:

累積キャッチアップ シナリオ1及びシナリオ2

サービスBについて2年間に わたり、325千円(25千円+

300千円)の収益を認識す る。

サービスAについての収益 認識の金額及びタイミング は変更しない。

シナリオ1:

サービスBについて2年間に わたり、325千円(25千円+

300千円)の収益を認識す る。

サービスAについての収益 認識の金額及びタイミング は変更しない。

シナリオ2:

取引価格を400千円(100千 円+300千円)に更新する。

進捗度を25%から10%に更 新する。

キャッチアップ調整21,250 円(400千円×10%-(75千 円×6÷24))を認識する。

残りの18ヶ月にわたり収益 360千円(400千円-400千 円×10%)を認識する。

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IFRS 15.88

IFRS 15.B42

IFRS 15.B40, B44-46

オプションを行使する可能性の見積りは更新しない

追加的な財またはサービスに関する顧客のオプションの独立販売価格を算定する際に、企業は、

顧客がそのオプションを行使する可能性を見積る。この当初の見積りは、オプションの独立販売 価格の見積りを算定する際のインプットであるため、その後に更新しない。新基準のもとでは、

企業は契約開始後の独立販売価格の変動を反映するために取引価格を再配分しない。

オプションを行使する、または失効させるという顧客の決定は、オプションに配分された金額の 認識の時期に影響を与えるが、取引価格の再配分が行われることにはならない。

「無料」のギフトカードやクーポンの独立販売価格の見積り

一部のケースでは、企業は顧客との独立の取引でギフトカードやクーポンを販売する場合があ る。さらに、顧客が他の財またはサービスを購入する取引で、同じ額面のギフトカードやクーポ ンを付与する場合がある。後者のケースでは、ギフトカードやクーポンは、重要な権利を顧客に 引き渡すものと識別される場合がある(例:企業が1千円の財の購入ごとに150円の価値のギフ トカードやクーポンを無料で提供する場合)。

これらのケースで、重要な権利として識別されるギフトカードやクーポンの独立販売価格は、独 立して販売されるギフトカードやクーポンの独立販売価格とは異なる場合がある。これは、ギフ トカードやクーポンを重要な権利として受け取る顧客は、独立した取引でギフトカードやクーポ ンを購入した顧客と比較して、行使する可能性が著しく低い可能性があるためである。

したがって、企業は、他の財またはサービスの購入に関連付けて顧客に提供される無料のギフト カードやクーポンについて、直接的に観察可能な独立販売価格がないと結論付ける可能性があ る。そのような場合、企業は収益認識モデルのステップ4のガイダンスを用いて独立販売価格を 見積る(3.4を参照)。

失効しないオプション

重要な権利に関する収益は、財またはサービスが将来に移転したときか、またはオプションが失 効したときに認識する。オプションが失効しない場合、企業は未行使の権利(すなわち、非行使 部分)に関するガイダンスを適用する場合がある(8.5を参照)。

販売時に発行されるクーポン

小売店では、購入が完了した後にレジでクーポンを印刷することがよくあり、それらは通常、短 期間で行使される。クーポンは販売時に、顧客に手渡されるか、顧客が購入を契約した財と同梱 される。顧客はそのようなクーポンを受け取ることに気づいていないことが多い。

これらのクーポンは、販促の一形態であることが多く、顧客は購入を行わずに類似の値引きを獲 得できることが多い(例:クーポンが新聞に印刷されている場合や、店舗やオンラインで無料で 入手できる場合)。

通常、これらのクーポンは、その付与時に収益の会計処理にほとんど、またはまったく影響しな い。クーポンが一般的な販促ではない場合、企業はクーポンが重要な権利を顧客に与えるもので あるか否か評価する。この評価には、行使の可能性の検討が含まれるが、大抵の場合、行使の可 能性が低いため、クーポンが重要な権利として識別される可能性は低い。

したがって、クーポンは行使時に収益の控除として認識されることが多い。

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8.4.2 カスタマー・ロイヤルティ・プログラム

新基準の規定

IFRS 15.B40

カスタマー・ロイヤルティ・プログラムは、顧客のオプションに関するガイダンスの適用範囲に含

まれることが多く、8.4.1で説明されている規定が適用される。顧客に重要な権利を提供するカスタ マー・ロイヤルティ・プログラムは、別個の履行義務として会計処理する。

設例62 カスタマー・ロイヤルティ・ポイント・プログラム

IFRS 15.IE267-270

小売業者Cは、自社の店舗でカスタマー・ロイヤルティ・プログラムを提供する。このプログラムで

は、顧客は、財に10円支払うごとに、1ポイント獲得する。ポイントは、将来の購入において1ポイン トにつき1円の現金値引として消化できる。C社は顧客のポイントのうち97%が消化されると予測し ている。この予測は、受け取る権利を有することになる対価の予測金額の見積りに利用できると考え られるC社の過去の経験に基づいている。X1年において、顧客は100,000円の製品を購入し、10,000 ポイントを獲得する。ポイントを除いた製品の顧客に対する独立販売価格は100,000円である。

顧客は当初の購入を行わなければ、将来の購入において値引きを受けられず、将来の購入における ポイントの行使時に顧客が支払う価格はそれらの項目の独立販売価格ではないため、カスタマー・

ロイヤルティ・プログラムは重要な権利を顧客に与える。

ポイントにより重要な権利が顧客に与えられるため、C社は、ポイントが個々の販売契約における 履行義務であると結論付ける(すなわち、顧客は製品購入時にポイントについて支払いを行ってい る)。C社はロイヤルティ・ポイントの独立販売価格を、顧客が行使する可能性に基づき算定する。

C社は、取引価格を独立販売価格の比率に基づき、製品とポイントに以下のように配分する。

履行義務 独立販売価格 (円)

販売価格の 比率

配分される 価格(円)

製品 100,000(a) 91% 91,000 (100,000×91%)

ポイント 9,700(b) 9% 9,000 (100,000×9%)

合計 109,700 100% 100,000 注:

(a) 製品の独立販売価格

(b) ポイントの独立販売価格(10,000×1×97%)

X2年に4,500ポイントが消化され、C社は引き続き、合計で9,700ポイントが消化されると予測し ている。C社は認識する収益と、対応する契約負債の控除額を以下のように算定する。

4,175円=9,000(ポイントに配分される価格)×4,500(X2年に消化されたポイント)÷9,700(消 化が予測されるポイントの合計)

X3年にさらに4,000ポイントが消化された。C社は、9,700ポイントではなく9,900ポイントが消 化されると予測し、見積りを更新する。C社は認識する収益と、対応する契約負債の控除額を以 下のように算定する。