• 検索結果がありません。

変動対価の金額の見積り 新基準の規定

概要

3.3 ステップ3-取引価格の算定

3.3.1 変動対価(及び収益認識累計額の制限)

3.3.1.1 変動対価の金額の見積り 新基準の規定

IFRS 15.53

変動対価が含まれる契約の取引価格を見積る際に、企業はまず、権利を得ることとなる対価の金額

を最も適切に予測できる方法を以下のいずれかから選択する。

期待値 考え得る対価の金額の範囲における確率加重平均金額の合計額を検討す る。これは、特徴が類似する多数の契約を有している場合に、変動対価の 金額の適切な見積りとなる可能性がある。

最も可能性の高い 金額

考え得る対価の金額の範囲における単一の最も可能性の高い金額を検討 する。これは、契約で生じ得る結果が2つしかない(または3つ程度)場合 に、変動対価の金額の適切な見積りとなる可能性がある。

IFRS 15.54

選択した方法は、企業が権利を得ることとなる変動対価の金額に関する不確実性の影響を見積る際

IFRS 15.BC195

に、同一契約の初めから終わりまで及び類似する契約に首尾一貫して適用する。

設例15 変動対価の見積り-期待値

電気製品製造業者Mは小売業者Rに1,000台のテレビを販売する(1台あたり50千円、合計50,000千 円)。M社はこの50千円とその後6ヶ月の間に当該テレビについて提示する最低価格との差異をR社 に補填することに合意した。M社は類似の契約に関する十分な経験に基づき、以下のように見積っ た。

今後6ヶ月における価格の引下げ 発生可能性

0 70%

5千円 20%

10千円 10%

M社は、関連する事実及び状況をすべて考慮し、権利を得ることとなる対価の金額を最も適切に 予測できるのは期待値法であると判定した。したがって、収益認識累計額の制限の考慮前の金額 として(3.3.1.2を参照)、テレビ1台あたりの取引価格を48千円と見積った(すなわち、(50千円

×70%)+(45千円×20%)+(40千円×10%))。

38

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

設例16 変動対価の見積り-最も可能性の高い金額

建設業者Cは建物を建設する契約を顧客と締結した。建設の完了時期に応じて、C社は110,000千円 と130,000千円のいずれかを受け取る。

結果 対価 発生可能性

期日までに完成する 130,000 90%

完成が遅延する 110,000 10%

この契約のもとでは生じ得る結果が2つしかないため、C社は、権利を得ることとなる対価の金額 を最も適切に予測できるのは最も可能性の高い金額であると判定した。C社は、収益認識累計額 の制限の考慮前の取引価格を、(3.3.1.2を参照)、最も可能性の高い金額である130,000千円と見 積った。

KPMGの見解

IFRS 15.BC200

IFRS 15.BC201

見積り方法を選択する際には、すべての事実及び状況を考慮する

起こり得る結果が2つしかない場合は特に、確率加重平均金額による見積りを用いると、契約に より発生する可能性が高くない金額で収益を認識することが起こり得る。そのような状況におい ては、最も可能性の高い金額を用いるほうが適切となり得る。ただし、企業が権利を得ることと なる対価の金額を最も適切に予測できる方法を選択する際には、すべての事実及び状況を考慮し なければならない。

期待値法-発生可能性の低い結果まで見積る必要はない

取引価格の見積りに確率加重平均法を用いる場合に、いくつかの発生し得る結果とその発生可能 性の全てではなく、そのうちのいくつかを用いることにより、考え得る結果を合理的に見積るこ とができることが多い。そのため、複雑なモデルや技法を用いて発生し得る結果のすべてを計算 に含める必要はない。

期待値法-見積額は個々の契約についての起こり得る結果である必要はない

類似の取引を多数有する企業は、期待値法で個々の契約の取引価格を見積るのに、類似の取引の ポートフォリオのデータを用いることが適切なことがある。そのような場合、見積られる取引価 格は、個々の契約について起こり得る結果でないが、期待される取引価格となることがある。

期待値法により取引価格の最善の見積りが得られると結論付けるためには、類似する取引の数が 十分に多くなければならない。契約の取引価格の見積りにポートフォリオのデータを用いること は、ポートフォリオ・アプローチ(2.3を参照)を適用することと同じではない。

企業は以下のいずれであるか判定するために判断を用いる。

-

それらの契約が十分類似している

-

期待値の算定対象となる顧客との契約が、その後の契約と引き続き整合すると予想される

-

類似する契約の量が、期待値を算定するのに十分である

39

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

IFRS 15.BC202

IFRS 15.53, 56, 79(a), BC200

例えば、取引価格の起こり得る結果が3通りある場合、企業は期待値を以下のように算定する。

(単位:円)

取引価格 発生可能性 確率加重平均

100,000 30% 30,000

110,000 45% 49,500

130,000 25% 32,500

期待値 112,000

取引の30%が100,000円、45%が110,000円、25%が130,000円という結果になると企業が見込ん でおり、それらを合計すると、個々の取引について企業が期待する価格となるため、112,000円 は起こり得る結果ではないが、条件が満たされる場合、当該期待値が適切となる。

2つの方法を組み合わせることが適切な場合がある

IFRS第15号は、不確実性を測定するのに契約開始から終わりまで同一の方法を用いることを要 求している。ただし、契約が複数の不確実性にさらされている場合、企業は個々の不確実性それ ぞれにつき適切な方法を選択する。これにより、期待値と最も可能性の高い金額を同一契約内で 組み合わせて用いることになる可能性がある。

例えば、建設契約において、契約価格が以下の2つの事項に依存する場合がある。

-

主要な原材料(例:鋼)の価格-鋼の価格の不確実性により、対価の金額に幅が生じる。

-

契約が特定の日までに完了した場合のボーナス-完成期日が達成できるか否かの不確実性に より、考え得る結果が2つ生じる。

このケースでは、企業は鋼の価格に基づく対価の変動には期待値法を、期日達成の可否に基づく 対価の変動については最も可能性の高い金額による見積方法を用いることが適切と考えられる。

過去の経験から証拠を得られる場合がある

企業は変動対価を見積る際に、特に期待値法のもとでは、類似する取引のグループから証拠を得 られる場合がある。期待値法を用いた見積りは通常、ポートフォリオごとではなく、契約ごとに 行われる。このように類似する取引のグループから証拠を得ることは、それのみではポートフォ リオ・アプローチを適用することにはならない(4.4を参照)。

例えば企業は、契約条項に業績に基づくボーナスが含まれる、多数の類似した契約を締結してい ることがある。個々の契約の結果に基づき、企業は100のボーナスを受け取るか、ボーナスをまっ たく受け取らないかのいずれかとなる。企業は過去の経験から、同種の契約の60%で100のボー ナスを受け取ると予測している。これに類する将来の個々の契約の取引価格について、企業は過 去の経験を考慮し、ボーナスの期待値である60と見積る。この例は、企業が期待値法を用いる場 合、取引価格が個々の契約について起こり得る結果とは異なる金額になる可能性があることを示 している。

類似する取引の数が、契約の取引価格の最善の見積りとなる期待値を算定するだけ十分なだけあ るか否か、及び「収益認識累計額の制限」(3.3.1.2を参照)を適用すべきか否かを判定する際に は、判断を用いることが必要となる。

40

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.