• 検索結果がありません。

区別できるライセンスの本質の判定

IAS 2, IAS 36

IAS 11.7-10, IAS 18.13

6.3 区別できるライセンスの本質の判定

新基準の規定

IFRS 15.B56

契約に含まれる他の財またはサービスと区別できる知的財産のライセンスは、別個の履行義務であ

る。履行義務が一時点で充足されるか、一定の期間にわたり充足されるかを判定するために、企業 はその約束の本質が、顧客に以下のいずれの権利を提供するものであるかを検討する。

-

ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利

-

ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利 IFRSの規定

IFRS 15.B58

ライセンスを供与する際の企業の約束の本質は、以下の要件をすべて満たす場合に、企業の知的財

産にアクセスする権利を提供するという約束である。

127

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

IFRS 15.B59

知的財産に重大な影響を与える活動を企業が行うことを、顧客が合理的に期待しているか否かを判

定する際に、企業は自社のビジネス慣行、公表した方針、具体的な声明、及び企業と顧客との間に おける共通した経済的利害の有無を考慮しなければならない。

IFRS 15.B59A

要件1のもとで、以下のいずれかの場合に、企業の活動は知的財産に重大な影響を与えている。

-

当該活動が知的財産の形態(例:デザインや内容)または機能性(例:機能やタスクを実行する 能力)を変化させると見込まれる。

-

知的財産から便益を得る能力が、実質的に当該活動から得られるかまたは当該活動に依存して いる(例:商標から便益を得る能力は、商標の価値を維持するための企業の継続的な活動に依 存することが多い)。

知的財産のライセンスが重要な独立した機能性を有する場合、企業の継続的な活動は、それらの機 能性を変化させる場合を除き、知的財産に重大な影響を与えない。重要な独立した機能性を有する ことが多い知的財産の例として、ソフトウェア、生体化合物、薬剤化合物、完成したメディア・コ ンテンツ(例:映画、テレビ番組、マスター音源)がある。

IFRS 15.B62

時期、地域または用途等に関する契約条項は、以下のいずれかを表象する場合がある。

-

顧客がまだ支配していない知的財産を使用する、またはアクセスする権利を創出する場合にお ける追加のライセンス

-

顧客が支配する知的財産について約束したライセンスの単なる属性

これらの契約条項が複数のライセンスを表象しない場合には、ライセンスの供与における企業の約 束の本質(すなわち、ライセンスが使用する権利であるかアクセスする権利であるか)を判定する 際にそれを考慮しない。

ライセンス供与者が知的財産に対する有効な特許を有しており、その特許を維持し防御するとい う、ライセンス供与者が提供する保証も、ライセンスが企業の知的財産にアクセスする権利と企業 の知的財産を使用する権利のいずれを提供するかを判定する際に考慮しない。

128

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

設例43 特定されていないアップデートが付されたライセンスの性質の評価

ソフトウェア企業Xは、ソフトウェア・アプリケーションのライセンスを顧客Yに供与する。この 合意のもとで、X社は必要に応じてアップデートまたはアップグレードを提供する。Yはそれらを インストールするか否かを選択できる。

ソフトウェアの機能を変化させるが、財またはサービスをYに移転しない活動をX社が実施する ことは期待されていない。アップデートやアップグレードはソフトウェアの機能を変化させる が、それらの活動はライセンスの供与における企業の約束の本質を判定する際に考慮されない。

アップデートやアップグレードを提供する際のX社の活動は、約束した財またはサービスをYに 移転するものであり、Yに供与されたライセンスの性質を判定する際には考慮されない。したがっ て、このソフトウェアのライセンスは、一時点で充足される知的財産を使用する権利を提供する。

設例44 映画のライセンスの性質と宣伝活動の影響の評価

映画製作会社Cは顧客Dに完成した映画を上映するライセンスを供与する。C社は重要な宣伝活動 を行う予定であり、それは映画からの興行収益に影響を及ぼすと考えられる。宣伝活動は映画の 機能を変更しないが、映画の価値に影響を及ぼす可能性がある。

C社は、このライセンスは知的財産を使用する権利を提供するものであり、そのため一時点で移 転すると結論付ける可能性が高い。C社が映画の形態または機能性を変化させる活動を行うこと は期待されていない。この知的財産は重大な独立した機能を有するため、C社の宣伝活動は映画 から便益を得るDの能力に著しい影響を与えず、Dが使用可能な知的財産にも影響を与えない。

設例45 チーム名やロゴのライセンスの性質の評価-現在活動中のスポーツチーム

スポーツチームDはチーム名とロゴのライセンスを3年間供与することで衣料メーカーMと合意 した。このライセンスによりM社はチーム名とロゴを製品(ディスプレイ用の製品を含む)及び 広告宣伝に使用することが認められる。

この契約におけるDの約束の本質は、当該スポーツチームの知的財産にアクセスする権利をM社 に提供することであり、そのため当該ライセンスからの収益は一定の期間にわたり認識する。こ の結論に至る際に、Dは以下の事実をすべて考慮する。

-

M社はDが、ライセンス期間を通じて試合をし、競合チームと戦うことにより、チーム名及び ロゴの価値を維持する活動を継続して実施すると合理的に期待している。チーム名やロゴの 価値は、それらの継続的な活動から主に引き出され、またそれらの活動に依存するため、そ れらの活動は、M社に便益を提供する知的財産の能力に著しい影響を与える。

-

当該活動は、M社をプラスまたはマイナスの影響に直接さらす(すなわち、Dが試合をし、競 合チームと戦うか否かが、M社がチーム名やロゴを付けた服の販売にどの程度成功するかに 直接影響を与える)。

-

Dの継続的な活動により、それらの活動に伴い財またはサービスがM社に移転されない(す なわち、試合をするチームはM社に財またはサービスを移転しない)。

129

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

設例46 チーム名やロゴのライセンスの性質の評価-現在活動していないスポーツチーム 設例45を変更し、スポーツチームDはすでに何年も試合をしておらず、ライセンス供与者は、古 いチームやブランドの名称やロゴを、休眠中の企業や資金難の企業から知的財産を取得する、商 標コレクターのBであるとする。B社のビジネスモデルは、知的財産を改善したり維持したりす る継続的な活動を行わず、知的財産のライセンスを供与し、許可を得ずにその知的財産を使用し た企業から罰金を徴収するというものである。

B社のビジネス慣行に基づき、衣料メーカーMは、B社が知的財産の形態を変化させたり、知的財 産を維持したりする活動を行うと合理的に期待しない。したがって、B社は、この約束の本質が、

ライセンスが供与される時点で存在するB社の知的財産を使用する権利をM社に提供するもので あると結論付ける可能性が高い。

KPMGの見解

IFRS 15.IE289-296

IFRS 15.B58, BC410

IFRS 15.B62, BC414O-414R, IE303-306

フランチャイズのライセンスは通常、知的財産にアクセスする権利を付与する

新基準においては、フランチャイズ権は通常、知的財産にアクセスする権利を提供するものであ る。これは、フランチャイズ権が、商標を維持構築するライセンス供与者の活動にある程度影響 されるのが通常であるためである。例えば、ライセンス供与者は通常、顧客の嗜好の変化を分析 して製品の改良を行い、顧客はそのような製品の改良を利用し便益を受ける権利を有する。

新基準の設例57では、10年間のフランチャイズのライセンスについて、ライセンス期間にわたっ て知的財産へのアクセスを提供すると結論付けられる例を示している。

財またはサービスを顧客に移転しないライセンス供与者の活動のみを考慮する

知的財産のライセンスを提供する約束の本質を評価する際に、ライセンス供与者は、財または サービスを顧客に移転しない活動のみを考慮する。

ライセンスが企業の知的財産にアクセスする権利であるとみなすための3番目の要件は、ライセ ンス供与者の活動により顧客に財またはサービスが移転しないことである。知的財産に著しい影 響を与える可能性のある活動のすべてが、顧客に財またはサービスを移転する場合、この要件は 通常満たされず、一時点で認識することになる。

例えば、契約にソフトウェアのライセンスと顧客のソフトウェアをアップデートする約束が含ま れる場合、ライセンス供与者が顧客が権利を有する知的財産に著しい影響を与える活動を行わな いと結論付けられることはない。これは、アップデートの提供に、追加的な財またはサービスの 顧客への移転が含まれるためである。

企業の約束の本質の決定にライセンスの属性が与える影響

ライセンスは本質的に、顧客に権利の束を委譲するものである。ライセンスの様々な属性(例:

時期、地域または用途の制限)は、ライセンスで提供されるのが企業の知的財産を使用する権利 なのか企業の知的財産にアクセスする権利なのかの判定に影響を与えない。