• 検索結果がありません。

IAS 11, IAS 18, IFRIC 15

IAS 11.30, IFRS 15.BC164

3.5.5 買戻し契約

概要

企業が資産を顧客に販売するとともに、それを買い戻すことを約束するか、または買い戻すオプ ションを有する場合、企業は買戻し契約を行っていることになる。買戻し契約が金融商品の定義 を満たす場合、新基準の適用範囲外となる。満たさない場合、その買戻し契約は新基準の適用範 囲に含まれ、その種類(先渡取引、コール・オプション、プット・オプション)及び買戻し価格 に応じて会計処理が異なる。

新基準の規定

先渡取引またはコール・オプション

IFRS 15.B66-B67

企業が資産を買い戻す義務(先渡取引)または権利(コール・オプション)を有している場合、顧

客は資産の支配を獲得していない。これは、顧客は資産を物理的に保有しているものの、資産の使 用を指図する能力や資産から経済価値を得る能力が制限されているためである。企業が当初の販売 価格よりも低い金額で買い戻すと見込まれる場合は、契約全体をリースとして会計処理する。反対 に、企業が当初の販売価格と同額以上の金額で買い戻すと見込まれる場合は、その取引を融資契約 として会計処理する。買戻し価格を販売価格と比較する際には、貨幣の時間価値を考慮しなければ ならない。

IFRS 15.B68-B69, B75

融資契約として会計処理する場合には、企業は資産を引き続き認識するとともに、受け取った対価

について金融負債を認識する。顧客から受け取る対価の金額と顧客に支払う対価の金額との差額 は、金利及び、該当があれば処理コストまたは保有コストとして認識する。オプションが未行使の まま消滅する場合には、負債及び関連する資産の認識を中止し、収益を認識する。

顧客は資産の支配を獲得しない

(資産を買い戻す売手の義務)先渡取引 コール・オプション

(資産を買い戻す売手の権利)

資産が当初の販売価格よりも低い価格で買い戻されるか?

リース契約 融資契約

はい いいえ

92

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

プット・オプション

IFRS 15.B70-B71

顧客が、当初の販売価格よりも低い価格での資産の買戻しを企業に要求する権利を有する場合、企

業は契約開始時に、顧客が当該権利を行使する重大な経済的インセンティブを有しているか否かを 評価する。この評価において、企業は以下を含む要因を考慮する。

-

買戻し価格と買戻し日における当該資産の予想市場価値との関係

-

権利が消滅するまでの期間

IFRS 15.B70, B72

顧客がプット・オプションを行使する重大な経済的インセンティブを有する場合、企業はその契約

をリースとして会計処理する。反対に、顧客が重大な経済的インセンティブを有していない場合に は、企業は返品権付きの製品販売として会計処理する(8.1を参照)。

IFRS 15.B73, B76

資産の買戻し価格が当初の販売価格以上であり、かつ、資産の予想市場価値よりも高い場合には、

融資契約として会計処理する。このケースでは、オプションが未行使のまま消滅する場合には、企 業は負債及び関連する資産の認識を中止し、オプションの消滅日に収益を認識する。

IFRS 15.B75

買戻し価格を販売価格と比較する際に、企業は貨幣の時間価値を考慮する。

KPMGの見解

改訂後のアプローチは買戻し価格に焦点が当てられている

現行の会計処理は、所有に伴うリスク及び経済価値が移転したか否かに焦点を当てているが、新 基準においては、買戻しの権利または義務の性質及び当初の販売価格と比較した買戻し価格に関 するガイダンスが含まれている。その結果、買戻し契約に関する会計上の取扱いは、新基準にお いてはより簡潔となるケースもあるが、現行実務とは相違する場合がある。

買戻し価格が当初の販売価格以上であるか?

はい いいえ

プット・オプション

(資産の買戻しを売手に要求する顧客の権利)

顧客はプット・オプションを 行使する重大な経済的インセンティブを

有しているか?

買戻し価格は資産の いいえ 予想市場価格よりも大きいか?

はい はい いいえ

融資契約 リース 返品権付き

の販売

93

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

IFRS 15.BC431

IFRS 15.BC424

IFRS 15.B66, BC423

ただし、プット・オプションを有する顧客がその権利を行使する重大な経済的インセンティブを 有するか否かを判定する際には、判断が要求される。この判定は契約開始時に行われ、その後に 資産の価格が変動してもアップデートしない。この判定に際し、類似の取決めにおける過去の顧 客の動向を考慮する。

買戻し契約に関する規定は、再販価格の保証が付された契約には適用できない

両ボードは、最低再販価格の保証が付された契約のキャッシュフローは、プット・オプションが 付された契約のキャッシュフローと類似すると考えられるが、資産を支配する顧客の能力に相違 があるため、収益の認識は相違する可能性があるとしている。これは、顧客がプット・オプショ ンを行使する重大な経済的インセンティブを有する場合には、資産を消費、変更または売却する 顧客の能力が制限されているが、企業が再販価格の最低金額を保証する場合はそうではないため である。したがって、見積キャッシュフローが類似する契約であっても、会計処理が相違する結 果となる場合がある。

条件付きの先渡取引またはコール・オプション

一部のケースで、先渡取引やコール・オプションが将来の事象を条件とする場合がある。個々の 取決めについて事実及び条件をすべて評価することが必要となるが、条件付きの先渡取引やコー ル・オプションを返品権(8.1を参照)として取り扱うことが、それらの取引の経済的実体に最 も整合する場合がある。そのようなケースでは、取決めをリースや金融取引として会計処理する のではなく、返品権に関する契約条項から生じる変動対価の認識及び測定に関する原則を適用す ることが適切である。

例えば、鮮度が落ちやすい財の製造企業は、最終顧客が期待するような品質と鮮度の製品を受け 取ることができるようにするため、古い製品を返品または交換する権利を顧客に付与する条項を 顧客との合意に含める場合がある。これらの状況のもとで、当該製造企業は製品をいつでも買い 戻せる無条件の権利を有していない。製造企業がこの権利を適用するには、製品の販売期限が過 ぎていなければならない。

この例では、販売期限が過ぎていなければ、顧客は製品を返品する権利を有していないため、資 産の使用を指図し、残りの便益のほぼすべてを受け取る顧客の能力は、条件となる事象が発生し ない限り、及び発生するまで、条件付きのコール・オプションの存在により制限されない。その 結果、顧客は条件となる事象が発生するまで、資産に対する支配を有する。したがって、この例 では製造企業は取決めを返品権付きの販売として会計処理する。

先買権

売手は、顧客が購入した資産の顧客による将来の販売について先買権を有する場合がある。当該 権利により、売手は資産を、その資産の販売について第三者が顧客に支払うことに合意するのと 同一の価格で買い戻すことができる。

この権利は、顧客が資産を支配することを妨げないため、コール・オプションでもプット・オプ ションでもない。したがって、通常は買戻しの合意とはならず、そのため売手による収益認識に 影響を与えない。さらに、顧客が資産を売手に返品する権利を有していないため、売手は返品を 見積らない。

94

© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

現行のIFRSとの比較

IAS 18.IE5