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新基準においても一定の期間にわたる収益認識を行うが、新たな要件が設定された

工事契約及びサービスの提供に関する契約は現在、進行基準で会計処理されている。新基準のも とでの会計結果は、現行の進行基準の会計処理と概ね整合するものの、収益を一定の期間にわ たって認識すると判定するための新たな要件が導入されている。

これまで進行基準で会計処理されていた一部の契約について、契約完了時に収益を認識しなけれ ばならなくなる可能性がある。反対に、契約によっては、新たな収益認識モデルに従い、一定の 期間にわたり収益を認識しなければならなくなる可能性もある。

3.5.1 支配の移転

新基準の規定

IFRS 15.31-32

財またはサービスは、顧客がその支配を獲得した時点で顧客に移転する。「支配」とは資産の使用

を指図し、資産からの残りの便益のほとんどすべてを獲得する顧客の能力を指す。支配には、他の 企業が資産の使用を指図して資産から便益を得ることを妨げる能力も含まれる。資産の便益とは、

(例えば、資産の使用、消費、売却、または交換により)直接または間接に獲得できる潜在的なキャッ シュフローである。

支配とは、資産に対する現在の権利であって、使用を指図し、資産からの残りの便益を獲得する能 力である。

はい いいえ

履行義務は一定の期間にわたって充足するか

(すなわち、要件のいずれかが満たされるか)(3.5.2を参照)

適切な進捗度の測定方法を識別する

3.5.3

収益を進捗度に応じて 一定の期間にわたって認識する

財またはサービスの支配が移転する 一時点で収益を認識する(3.5.4)

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支配

使用を指図する権利 ⇒

-

資産を自身の活動に使用する

-

他の企業が資産をその活動に使用することを許可する

-

他の企業が資産を使用することを制限する

残りの便益を獲得する権利 ⇒

-

資産の使用

-

資産の消費

-

資産の売却または交換

-

資産の担保差入れ

-

資産の保有

KPMGの見解

IFRS 15.BC118

収益認識に支配の概念を用いることは、資産の会計処理と整合する

IFRS第15号では、支配に基づくモデルが導入されている。企業はまず、財またはサービスの支配 が一定の期間にわたって顧客に移転するか否かを、新基準の要件に基づき判定する。財または サービスの支配が顧客に一定の期間にわたって移転するならば、移転のパターンを判定すること になる。一定の期間にわたって移転しないならば、財またはサービスの支配は一時点で顧客に移 転し、その場合、リスクと経済価値の概念は、支配の移転の指標として取り扱われる(3.5.4を参 照)。顧客がいつ支配を獲得するのかを検討して財またはサービスの移転を評価することにより、

検討の結果に差異が生じる可能性があり、収益認識のタイミングが著しく変更される可能性があ る。両ボードは、所有に伴うリスクと経済価値が顧客に移転したか否かを判断するのは容易で はないため、支配に基づくモデルを適用することにより、収益認識の時期に関する決定がより 首尾一貫したものとなり得ると考えている。

新基準では、支配に基づくアプローチの適用範囲が、サービス契約を含むすべての契約に拡大さ れている。両ボードは、財及びサービスは、顧客が受け取り、使用する時点で、たとえ束の間で あっても、資産であると考えている。新基準では、財またはサービスがいつ顧客に移転するのか の判定に、支配の概念が用いられる。これは、資産の認識及び認識の中止のタイミングを判定す るのに主に支配の概念を用いる現行のIFRS及びU.S. GAAPにおける資産の定義と整合する。

収益認識に新たな概念的な基礎が導入された

新基準は収益認識に、現行のIFRS及びU.S. GAAPとは概念的に異なるアプローチを採用してい る。基本的な会計結果(収益を一時点または一定の期間にわたって認識すること)は類似するが、

多くの企業で、それらを適用する状況が相違する可能性がある。

左記を通じて直接または間接 に潜在的なキャッシュフロー を獲得できる

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現行のIFRSとの比較

IAS 11.23, IAS 18.14, 20, IFRS 15.BC118, IFRIC 15

リスクと経済価値に基づくアプローチからの移行

これまで、IAS第18号の適用範囲に含まれる財の販売から生じる収益は、他の条件も満たす必要 があるものの、特に企業が所有に伴う重要なリスクと経済価値を買手に移転したかに基づいて認 識されていた。このアプローチにおいては、新基準と異なり、収益は通常、支配が移転する時点 ではなく、リスクと経済価値が移転する一時点で認識する。

IFRIC解釈指針第15号では、財の販売を認識するための要件は一定の期間にわたって継続的に満 たされ得るものであり、その場合は収益を一定の期間にわたって認識する結果となるという概念 が導入された。ただし、IFRIC解釈指針第15号で想定されている特定の状況を除き、このアプロー チは通常は適用されていない。

IAS第11号の適用範囲に含まれる工事契約、及び新基準の一定の期間にわたって収益を認識する 要件を満たすサービスを提供する契約については、収益は報告日時点における取引の進捗度を参 照して収益を認識する(すなわち、企業が履行義務を充足していく中で履行状況を測定する)。

IFRS第15号は、支配に基づくアプローチを取引の種類または業種に関係なくすべての契約に適 用しており、このアプローチにおいては、支配は一定の期間にわたって移転することも、一時点 で移転することもあり得る。

3.5.2 一定の期間にわたり充足される履行義務

新基準の規定

IFRS 15.32, 35

履行義務に係る収益をどのように認識すべきかを決定するために、財またはサービスの支配が一定

の期間にわたり顧客に移転されるか否か(すなわち、財またはサービスの支配が一定の期間にわた り顧客に移転されるか否か)を以下の要件に基づき判定する(履行義務が知的財産のライセンスで ある場合は別のアプローチを適用する(セクション6を参照))。

要件 想定される取引の例

1 企業の履行につれて、履行による便益を顧客が受け 取ると同時に消費する。

経常的に、または反復して実施され るサービス(例:清掃サービス)

2 企業の履行により、資産が創出または増価し、かつ、

資産の創出または増価につれて顧客がその資産を支 配する。

顧客の敷地内における資産の建設

3 企業の履行により企業にとって他に転用できる資 産が創出されず(3.5.2.1を参照)、かつ、現在まで に完了した履行に対する支払いを受ける強制可能 な権利を有する(3.5.2.2を参照)。

その顧客のみが使用できる特殊仕様 の資産の建設、または顧客の注文に基 づく資産の建設

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IFRS 15.35, 38-39

これらの要件のうち1つまたは複数が満たされる場合、企業は履行の程度(すなわち、財またはサー

ビスの支配が顧客に移転するパターン)を最も良く描写する方法を用いて、一定の期間にわたり収 益を認識する。いずれの要件も満たさない場合、支配は一時点で顧客に移転し、企業は一時点で収 益を認識する(3.5.4を参照)。

要件1

IFRS 15.B3-B4, BC125-BC128

企業が現在までに完了した作業について他の企業が大幅なやり直しをする必要がない場合、顧客は

企業が履行するにつれてその履行による便益を受け取ると同時に消費する。

他の企業が大幅なやり直しをする必要がないか否かを判定する際に、他の企業は、企業が現在支配 している資産の便益を享受せず、また他の当事者が履行義務を引き継いだとしても、企業が依然と して支配するものと仮定する。

要件2

IFRS 15.B5

資産が創出または増価されるにつれて顧客が資産を支配するか否かを判定する際に、企業は新基準

の支配に関するガイダンス(支配の移転の指標を含む)を考慮する(3.5.4を参照、B5項)。

要件3

IFRS 15.36

資産を他に転用できるか否かを評価する際に、企業は契約開始時に、完成した資産を別の用途(別

の顧客への売却等)に容易にふり向けることができるかに関する企業の能力を考慮する。

要件 1 及び要件 3 の適用

IFRS 15.B4, B6-B8, BC127

契約上の制限や実務上の制約により、残りの履行義務を他の企業に移転すること(要件1)または

転用すること(要件3)が妨げられる可能性がある。新基準では、これらの事実や潜在的な解約が これらの要件に影響を及ぼすか否かに関するガイダンスを提供している。要件1及び要件3を適用す る際の仮定について、新基準は以下のガイダンスを示している。

契約上の制限を 考慮するか

実務上の制約を 考慮するか

潜在的な解約に ついて考慮するか 他の企業が大幅なやり直し

をする必要がないかの判定

(要件1)

No No Yes

企業の履行により、転用で きる資産が創出されないか の判定(要件3)

Yes Yes No