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値引きの配分 新基準の規定

概要

IAS 18.IE11, IFRIC 13.AG3

3.4.2 取引価格の配分

3.4.2.1 値引きの配分 新基準の規定

IFRS 15.81

独立販売価格の合計額が契約で約束した対価を超える場合には、一般的に、契約に含まれるすべて

の履行義務に値引きを比例的に配分する。ただし、値引きのすべてが履行義務のうちの1つまたは 複数のみに関するものであるという観察可能な証拠を有する場合はこれに該当しない。

IFRS 15.82

以下の要件をすべて満たす場合は、そのような証拠が存在し、値引きのすべてを、履行義務のうち

1つまたは複数(ただし全部ではない)に配分することになる。

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企業は通常、契約に含まれる個々の区別できる財またはサービス(または区別できる財または サービスの束)を単独で販売している。

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© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

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企業は通常、それらの区別できる財またはサービスのうちのいくつかを束(または複数の束)

にしたものを、それぞれの束の中の財またはサービスの独立販売価格に値引きをした金額で販 売している。

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財またはサービスの個々の束に帰属する値引きが、当該契約における値引きとほぼ同じであり、

個々の束の中の財またはサービスの分析により、当該契約における値引き全体がどの履行義務 に属するかの観察可能な証拠が提供されている。

IFRS 15.83

企業は残余アプローチを用いる前に、値引きの配分のガイダンスを適用する。

設例25 値引きの配分-カスタマー・ロイヤルティ・プログラムを含む取引

IFRS 15.82-85

小売業者Rは10千円の購入について1ポイントを顧客に付与するカスタマー・ロイヤルティ・プ

ログラムを有している。ポイントは、顧客が将来R社の製品を購入した時に1ポイント当たり1千 円値引きすることで償還される。報告期間において、顧客Cは製品とギフトカードを1,200千円で 購入し、将来の購入に充当可能なポイントを100ポイント獲得した。対価は固定であり、購入物 の独立販売価格は1,200千円(製品及びギフトカードについてそれぞれ1,000千円、200千円)で ある。R社は95%のポイントが償還されると見込んでいる。R社はこの償還の可能性に基づき、1 ポイント当たり950円の独立販売価格を見積る。

このロイヤルティ・ポイントはCに、契約を締結しなければ受け取ることができない重要な権利 を提供している。したがって、R社はロイヤルティ・ポイントを提供する約束が履行義務である と結論付ける。

独立販売価格の合計1,295千円(製品、ギフトカード、ロイヤルティ・ポイントについて、それ ぞれ1,000千円、200千円、95千円)は約束した対価1,200千円を超過している。R社はこの値引 きを、履行義務のすべてに配分するか、一部に配分するかを決定することが必要となる。

R社は、ギフトカードとロイヤルティ・ポイント付きの製品のいずれも、日常的に単独で販売し ている。ギフトカードに支払われる金額は、その独立販売価格に等しい。R社はまた、製品とロ イヤルティ・ポイントのセットを、日常的に単独で、Cとの契約のもとでとほぼ同じ値引きを付 して販売している。したがって、R社は値引きのすべてを、ギフトカードではなく、製品とロイ ヤルティ・ポイントを移転する約束に配分するべきである根拠を有する。

その結果、R社は、当該値引きは製品とロイヤルティ・ポイントに関連すると判断する。R社は取 引価格を、製品、ギフトカード、ロイヤルティ・ポイントに以下のように配分する。

(単位:千円)

履行義務 独立販売価格 配分価格 計算

ギフトカード 200 200

製品 1,000 913 1,000×(1,000÷1,095)

ロイヤルティ・ポイント 95 87 1,000×(95÷1,095)

合計 1,295 1,200

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KPMGの見解

多数の財またはサービスが様々な組合せで束ねられる場合、分析が要求される

一部の契約では、様々な組合せで束ねられる複数の異なる財またはサービスが含まれる場合があ る。このような場合、契約に含まれる値引きのすべてを特定の束に配分できるかを判定するため に、企業は製品の考え得る組合せを多数検討することが必要となり得る。そのため、様々な組合 せで束ねられ、値引額がそれらの組合せにより相違する、多数の財またはサービスを販売する企 業について、どの程度の分析が要求されるのかが論点となる。

ただし、この分析は、企業が通常、それぞれの財またはサービス(または財またはサービスの束)

を単独で販売する場合にのみ要求される。したがって、企業が通常、契約に含まれる財または サービスのうち一部のみを単独で販売している場合、値引きのすべてを履行義務のうち1つまた は複数(ただし全部ではない)に配分するための要件は満たされず、より詳細な分析を行う必要 はない。

IFRS 15.BC283

「通常、販売している」か否かの判定が重要となる

値引きのすべてを1つまたは複数の履行義務に配分することに関するガイダンスのもとでは、財 またはサービスの束が通常、単独で販売されていなければならない。企業は「通常、販売してい る」という文言の意義に関する方針を定めることが必要となる場合がある。

販売取引のモニタリング、及びどのような束が「通常、販売されている」のかを判定するための プロセスと関連する内部統制が必要となると考えられる。

値引きの配分に関するガイダンスは通常、少なくとも3つの履行義務が含まれる契約に適用される 値引きのすべてを1つまたは複数の履行義務に配分することに関するガイダンスのもとでは、契 約に含まれる値引きが、財またはサービスの束に帰属する値引きとほぼ同じである必要がある。

企業は通常、値引きが複数の履行義務に関連することを示すことはできるが、値引きのすべてを 単一の履行義務に配分するための十分な証拠を得ることは容易ではない。したがって、履行義務 が3つよりも少ない取決めにこの規定が適用される可能性は低い。

現行のIFRSとの比較

値引きの配分に関する新たなガイダンスが加わった

現行のIFRSには、値引きの配分に関する具体的なガイダンスは含まれていなかった。現行実務に おいては、対価を構成要素の公正価値の比率に基づき配分する場合には、実質的に、契約に含ま れるすべての構成要素に値引きが配分され、対価を残余法を用いて配分する場合には、値引きは 実質的に、すでに引き渡された構成要素に配分されている。IFRS第15号は、値引きの配分に関す る新たなガイダンスを導入している。

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3.4.2.2 変動対価の配分