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概要

他の当事者が顧客への財またはサービスの提供に関与している場合、企業は顧客への約束の性 質を評価する。企業が、他の当事者の財またはサービスの支配を、顧客に移転する前に獲得する 場合、企業の約束は、財またはサービス自体を提供することとなる。したがって、企業は本人と して活動している。

ただし、企業が財またはサービスを顧客に移転する前に支配しない場合、企業は代理人として活 動しており、他の当事者がそれらの財またはサービスを提供するように手配している。

企業は、顧客に移転する特定の財またはサービスを個々に識別し、それぞれについて、企業が本 人であるか代理人であるか判定する。企業は複数の財またはサービスを移転する単一の契約に おいて、一部の財及びサービスについて本人となり、別の財及びサービスについて代理人となる 可能性もある。

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© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.

新基準の規定

IFRS 15.B34-34A

他の当事者が企業の顧客への財またはサービスの提供に関与している場合、企業はその約束の性質

が、特定の財またはサービス自体を提供する独立の履行義務であるか、または他の当事者がそれら を提供するための手配をすることであるか(すなわち、本人か代理人か)を判定する。この判定は、

契約で顧客に約束した個々の特定の財またはサービスごとに識別し、特定の財またはサービスが顧 客に移転する前に、その支配を企業が獲得するかを評価することにより行う。

企業は、顧客に移転する個々の財またはサービスごとに自身が本人か代理人かを評価するため、同 一契約内の1つまたは複数の財またはサービスについて本人であり、他の財またはサービスについ て代理人となる可能性がある。

IFRS 15.B35-36

企業は、顧客に約束した特定の財またはサービスを、顧客に移転する前に支配する場合、本人となる。

他の当事者が関与する場合、本人である企業は以下のいずれかの支配を獲得する。

-

その後に顧客に移転する、他の当事者から受け取った財

-

企業のためにサービスを提供するよう他の当事者を指図する能力を企業に与える、他の当事者 が実施するサービスに対する権利

-

顧客に約束した特定の財またはサービスを創出するために他の財またはサービスと組み合わせ る、他の当事者から受け取った財またはサービス

企業が本人である場合、収益を総額ベースで(企業が権利を得ると見込んでいる対価の金額で)認 識する。企業が代理人である場合、収益を純額ベースで(企業が権利を得ると見込んでいる報酬ま たは手数料の金額で)認識する。企業の報酬または手数料は、他の当事者に支払った後に手元に残 る対価の純額となる場合がある。

IFRS 15.32

「支配」とは、財またはサービスの使用を指図し、それらからの残りの便益のほとんどすべてを獲

得する(または他者が獲得することを妨げる)能力である。

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IFRS 15.B37

企業が特定の財またはサービスを顧客に移転する前に支配するか否かを判定する際に役立つ指標

として、新基準に以下の項目が挙げられている。

これらの指標は、特定の財またはサービスの性質や契約条項により、支配の評価との関連性の高さ が強まったり弱まったりする。さらに、強力な証拠が得られる指標は、契約ごとに相違し得る。

企業が財の支配またはサービスに対する権利を、顧客に移転する前に獲得しない場合、企業は当該 財またはサービスについて代理人である。

IFRS 15.B35, B38

契約において本人である企業は、履行義務を自ら充足する場合もあれば、自らに代わって別の当事

者(例:外注先)に履行義務の一部または全部を充足させる場合もある。ただし、別の当事者が企 業の履行義務を引き受けたことにより、企業が履行義務を充足する義務を負わなくなる場合、企業 は本人として行動しておらず、その履行義務について収益を認識しない。そのかわりに、その別の 当事者のために契約を獲得するという履行義務の充足について収益を認識すべきか否か(すなわ ち、企業が代理人として行動しているか否か)を評価する。

特定の財またはサービスを 顧客に移転する前に、

それらを支配する

その取引において

企業は本人である 企業がその取引において本人であるという指標 在庫リスク

特定の財または サービスの価格を 設定する裁量権

特定の財または サービスを提供 する主たる責任

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設例56 財またはサービスの提供を手配するケース

IFRS 15.IE231-233

インターネット販売サイト運営者Bは、多数の供給業者からの財を顧客が購入でき、財が顧客に

直接発送されるウェブサイトを運営している。このウェブサイトは、供給業者が設定した価格に より供給業者と顧客との間で行われる決済の仕組みを提供しており、B社は販売価格の10%で算 定される手数料を受け取る権利を有する。顧客の支払いは先払いで、すべての注文は返金不能で ある。

財は、個々の供給業者が直接顧客に発送する。また、B社は財を自ら支配しないことを認識して いる。財を顧客に移転する前に当該財を支配しないと結論付ける際に、B社は以下の事項を考慮 する。

-

供給業者は、財を顧客に引き渡す約束の履行(すなわち、財を顧客に発送することにより)

について主要な責任を負う。供給業者が引き渡さなかった場合、B社は顧客に財を引き渡す 義務を負わず、供給業者が引き渡す財の受取りについても責任を負わない。

-

(供給業者が財を直接顧客に発送するため)B社は財が顧客に移転される前も後も在庫リス クを負わず、B社は顧客が購入する前に供給業者から財を受け取ることを約束せず、またB社 は財の毀損や返品について責任を負わない。

-

供給業者が販売価格を設定するため、B社は財について価格設定の裁量権を有していない。

したがって、Bは自社が代理人であり、その履行義務は供給業者が財を提供できるよう手配する ことであると結論付ける。B社が、供給業者が財を顧客に提供できるように手配する約束を充足 した時点(この設例では、顧客が財を購入する時点)で、B社は受け取る権利を有する手数料の 金額で収益を認識する。

設例57 バーチャルな財または無形の財の販売において企業が代理人かつ本人であるケース

IFRS 15.IE248A-248F

企業Hは求人サービスを提供する契約を締結する。契約の一環として、顧客Jは、潜在的な求職者

に関する情報が集められた第三者のデータベースにアクセスするライセンスを得ることに合意 した。H社は、第三者であるデータベースのプロバイダーのために、当該ライセンスを手配し、

支払いを回収する。ただし、このデータベースのプロバイダーが、このライセンスについてJに 請求する価格を設定しており、技術的なサポートを提供する責任を負う。

H社は、この求人サービスとデータベースへのアクセスが区別できると結論付ける。H社は、そ れらの特定の財及びサービスをJに移転する前に支配するか否かを判定する際に、支配の原則及 び指標を考慮する。

H社は、自身が求人サービスを履行するため、求人サービスに関しては本人であると結論付ける。

対照的に、H社は以下の理由から、Jに移転する前にデータベースへのアクセスを支配しないた め、第三者のデータベースへのアクセスを提供する約束に関しては代理人であると結論付ける。

-

H社はデータベースへのアクセスを提供する約束を履行する責任を負わない。

-

H社はデータベースのプロバイダーからデータベースのアクセスを購入せず、また購入する ことを約束しないため、在庫リスクを負わない。

-

H社はデータベースへのアクセスについて価格設定の裁量権を有していない。

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KPMGの見解

IFRS 15.B34, BC385Q

IFRS 15.IE239-248F

IFRS 15.B37

IFRS 15.B35A(c), BC385R

会計単位は特定された財またはサービスである

本人か代理人かの判定は、顧客に対する約束の評価に焦点を当て、当該判定の会計単位は、特定 された個々の財またはサービスとなる。「特定された財またはサービス」とは、顧客に提供され る区別できる財またはサービス(または財またはサービスの区別できる束)である。個々の財及 びサービスが互いに区別できない場合、それらは、企業が評価する特定の財またはサービスであ る結合された約束へのインプットである。

特定された財またはサービスが権利である可能性がある

顧客に移転される特定された財またはサービスが、一部のケースでは、第三者が提供する財また はサービスに対する権利である場合がある。例えば、旅行サイトが、特定の航空会社でのフライ トの権利を顧客に与える航空券を販売したり、特定のレストランで食事する権利を保有者に与え るバウチャーを提供したりする場合がある。

これらのケースで、本人か代理人かの判定は、もととなる財またはサービスに対する権利を誰が 支配するのかに基づき分析する。他の当事者がもととなる財またはサービス(例:フライトや食 事)を支配し最終顧客に移転する場合であっても、権利に関連する取引(例:食事に対する権利 を顧客に与えるバウチャーの販売)において企業が本人となる可能性がある。

企業は、もととなるサービスに対する権利の使用を指図する能力を有する場合、自身でその権利 を購入することを約束し、在庫リスクを負うため、権利に関連する取引において本人となる可能 性がある。顧客がその権利について支払う価格を設定する能力を企業が有するか否かも、検討す べき指標の1つとなり得る。

指標間に特定のヒエラルキーはない

指標間に特定のヒエラルキーはなく、判定の際にはすべての指標を考慮する。ただし、事実及び 状況に応じて、特定の契約について1つまたは複数の指標が他の指標よりも重要度が高い場合が ある。企業または他の当事者が責任を負うか否かが不明確なケースや、企業と第三者の間で責任 を共有するケースでは、指標の重要度を評価することが困難な場合がある。

例えば、企業が特定された財またはサービスを提供する主たる責任や在庫リスクを負わない企業 が、価格を設定する裁量権を有することがある。そのような場合、企業はすべての事実及び状況 を包括的に評価する。それには、価格設定の裁量権が(他の企業が財またはサービスを提供する ことにより)企業が追加的な収益を創出するための単なる手段の1つにすぎないのか、企業が本 人として活動していた証拠であるのかの判定が含まれる可能性がある。

財またはサービスを統合する重要なサービスの提供

顧客が著しく統合された財またはサービスの結合されたアウトプットについて契約を締結し、企 業が重要な統合サービスを提供する当事者である場合、結合されたアウトプットについて企業が 本人となる。このようなケースでは、企業は重要な統合サービスを実施するのに必要なインプッ トを支配するため、企業は顧客に支配が移転する前に特定された財またはサービス(結合された アウトプット)を支配する。