IAS 2, IAS 36
6.2 ライセンスが区別できるか否かの判定
新基準の規定
IFRS 15.B53
ライセンスを顧客に移転する契約には、約束したライセンスに加え、他の財またはサービスを引き渡す約束が含まれる場合がある。これらの約束は、契約に明記されている場合もあれば、企業の事 業慣行により含意されている場合もある。
他の種類の契約と同様に、契約に、他の約束した財またはサービスに加えてライセンスを供与する 約束が含まれている場合、企業は契約に含まれる個々の履行義務を識別するために、収益認識モデ ルのステップ2(3.2を参照)を適用する。これには、以下の判定が含まれる。
-
顧客がライセンスからの便益を、それ単独で、または容易に利用可能な他の資源と組み合わせ て享受することができる。-
ライセンスが、契約に含まれる他の財またはサービスとは別個に識別できる。IFRS 15.BC414X
IFRS第15号の結論の根拠には、以下のように記載されている。-
区別できないライセンスを供与する際に企業の約束の性質を検討することが必要な場合がある。-
企業は結合された履行義務の主要なまたは支配的な構成要素であるライセンスを供与する際 に、約束の性質を検討する。IFRS 15.B54-B55
ライセンスが区別できない場合、企業は単一の履行義務について、結合された財またはサービスが顧客に移転した時点で、または移転するにしたがって、収益を認識する。ライセンスを含む履行義 務が一定の期間にわたり充足されるか、一時点で充足されるかを判定する際に、企業は収益認識モ デルのステップ5を適用する(3.5を参照)。
IFRS 15.BC406
区別できないライセンスの例として、以下が挙げられる。ライセンスの種類 例
有形資産の一部を構成し、その有形資産の機能 にとって不可欠であるライセンス
-
車両の運転システムに組み込まれたソフ トウェア関連するサービスと組み合わせた場合にのみ、
顧客が便益を享受できるライセンス
-
顧客がオンライン・サービスを通じての みアクセスできるメディア・コンテンツ-
企業が所有権を有する研究開発サービスが必要な薬剤化合物
123
© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.
設例41 結合された履行義務に含まれる知的財産のライセンス
企業Xは特許権のライセンスを固定価格で5年間提供する契約を顧客Zと締結する。X社はこのラ イセンスに不可欠な2年間のコンサルティング・サービスも提供する。
X社はこの契約に、特許権のライセンスとコンサルティング・サービスの2つの約束があると判定 した。しかし、コンサルティング・サービスは不可欠であり、特許権のライセンスとの相互関連 性も高いため、特許権のライセンスはコンサルティング・サービスと区別できない。
結合した履行義務が一定の期間にわたって充足されると仮定する(例:特許権が顧客のために創 出され、X社はこれを他に転用できなく、またX社は現在までに完了した履行に対する支払いを受 ける強制可能な権利を有するため)。X社は、結合された履行義務が充足される期間と、進捗度の 適切な測定方法を決定するために、ライセンスの性質を検討する。
ライセンスが、知的財産を「使用する権利」を提供するものであれば、結合された履行義務は2 年間のコンサルティング・サービス期間にわたり充足される。対照的に、ライセンスがX社の知 的財産に「アクセスする権利」を提供するものであれば、履行義務はライセンス期間の末日まで 完全に充足されない(そして、収益は5年間のライセンス期間にわたり認識する)。いずれのケー スでも、X社は2年または5年の履行期間にわたって適用すべき適切な進捗度の測定基準(例:時 間の経過、発生したコスト)を決定しなければならない。進捗度の測定に関する説明は3.5.3を参照。
設例42 ライセンスを追加的に購入する顧客のオプション
ソフトウェア販売会社Sはソフトウェアを5年間供与する取決めを顧客Cと締結した。その取決め の一環としてS社はウェブサイトから当該ソフトウェアをダウンロードするアクセス権を提供 する。Cは200回のダウンロードまでは固定価格の300,000円を支払う。1回のダウンロードにつ き1人のユーザーしかソフトウェアを使用することができない。Cは200回を超えるダウンロード については、1年目は1回当たり1,000円を支払い、その後1回当たりの金額はダウンロード時の残 存期間に基づき2年目は800円と逓減する。Cは200回のダウンロードについてアクセスコードを 付与される。追加のダウンロードのアクセスコードについては、Cはダウンロードの都度要求し S社が提供する。ダウンロードの回数はS社が数えており、追加のダウンロードの対価は四半期 ごとに支払われる。
当初の取決めは一般的に、複数のライセンスのシナリオに該当し(すなわち、Cはソフトウェア のライセンスを200単位供与される)、それらのライセンスは一時点でCに移転されるため、単一 の履行義務として会計処理することができる。したがって、追加のダウンロードに関するオプ ションは、ソフトウェアのユーザーのライセンスを1ライセンス当たり1,000円で追加的に獲得 するオプションを表象する。
1ダウンロード当たり1,000円というオプションの価格は、当初のユーザー1人当たりの単価 1,500円(300,000円÷200人)よりも安いため、S社はこのオプションがCに重要な権利を提供し ているか否かを評価することが必要となる(8.4を参照)。
124
© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.
KPMGの見解
IFRS 15.IE49-58
ライセンスが区別できるか否かを判定する際に、重要な判断が要求される
知的財産のライセンスでは、取決めに他の財またはサービスに関する約束が含まれていることが 多い。ライセンスが区別できるか否かの評価は、複雑となることが多く、契約に関連する特定の 事実及び状況を考慮することが要求される。新基準には、特定の事例を評価する際に役立つ設例 が含まれている。
設例及び業種 契約の種類 説明 見解
設例11A及び 設例11B テクノロジー
ソフトウェアの ライセンス、導 入サービス、及 びまだ特定され ていないソフト ウェアのアップ デート及び技術 サポートを移転 する契約
ソフトウェアを大幅にカ スタマイズするか、契約に おいて顧客に約束した専 門的なサービスの一部と して修正するかにより、履 行義務の識別が相違する2 つのケースが挙げられて いる。
ソフトウェア・ライセンス のカスタマイズまたは修 正を伴う導入サービスに より、ライセンスが当該 サービスと区別できない と結論付けられる場合が ある。
導 入 サ ー ビ ス が ソ フ ト ウェアの大幅なカスタマ イズと修正のいずれであ るかを判定する際には、重 要な判断が要求される。
一部の企業は、サービス が、ソフトウェアの機能に とって不可欠であるとい う現行基準で要求されて いるレベルを満たさない 場合であっても、新基準の もとではソフトウェアと サービスが結合されると 結論付ける可能性がある。
125
© 2016 KPMG AZSA LLC, a limited liability audit corporation incorporated under the Japanese Certified Public Accountants Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative (“KPMG International”), a Swiss entity. All rights reserved.
IFRS 15.IE278-280
IFRS 15.IE281-288
設例及び業種 契約の種類 説明 見解
設例55 テクノロジー
財の設計及び製 造プロセスに関 連する知的財産 のライセンス契 約(知的財産の アップデートを 含む)
顧客は、新たな設計または 製造プロセスについてす べてのアップデートを受 ける権利を有する。
このアップデートは、ライ センスから便益を享受す る顧客の能力に不可欠で ある。
この設例では、ライセンス とアップデートが、顧客が 契約した結合された項目 へのインプットであり、ラ イセンスとアップデート を付与する約束は区別で きないと結論付ける。企業 の顧客に対する約束は全 体として、企業の知的財産 へのアクセスを継続的に 提供することである。
この事例、分析及び結果 を、実務においてどのよう なテクノロジーに適用で きるのかについては、見解 が相違し得る。
企業はこのような約束の 性質を検討する。例えば、
この約束は、アップデート 付きの知的財産のライセ ンスではなく、サービスで ある。
設例56A及び 設例56B 製薬
成熟製品である 承認された医薬 品の特許権につ いてのライセン スを供与し、顧 客のためにその 医薬品を製造す る契約
製造プロセスが独自の特 殊なものであるか否か、ラ イセンスを別個に購入で きるか否か、及び他の企業 もその医薬品を製造でき るか否かにより、履行義務 の 識 別 が相 違 する2つ の ケースが挙げられている。
他の企業も製造サービス を提供できることにより、
顧客がライセンス単独で 便益を享受できることが 示唆される。
これらの設例により、サービスと知的財産が高度に相互依存しているか、または相互関連性が高 いか否かの判定が困難であることが強調されている。例えば、企業はテレビゲームのライセンス を供与し、単独では販売されない追加的なオンライン・サービスを提供する場合がある。この場 合には、企業はそのサービスとテレビゲームとが相互にどの程度関連しているかを判定すること が必要となる。契約が全体として単一の履行義務となる場合もあるが、追加のオンライン・サー ビスがなくてもテレビゲームを使用することによる実質的な機能を引き出せる場合には、それら は別個の履行義務となる場合がある。
ライセンスを追加的に購入する顧客のオプション
一部の契約では、企業が追加のコピーやソフトウェアの使用について料金を課す場合がある。企 業は、その契約が単一のライセンスのためのものであるか、複数のライセンスのためのものであ