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EC(デジタルコンテンツ)

1.4 事業者動向

1.4.2 EC(デジタルコンテンツ)

以降では、デジタルコンテンツを中心としたBtoC-ECを展開している事業者に ついて、2009年の取り組みを紹介する。

デジタルコンテンツは、従来モバイル端末の中心であった携帯電話以外に、スマ ートフォン、ネットブックなど、様々な端末が市場に普及するとともに、「持ち歩 ける高品質」コンテンツの販売が拡大する傾向にある。

この動きに対して、高品質な動画などを低コストで配信する技術を開発する事業 者も現れつつあり、今後のインターネット上におけるデジタルコンテンツの流通は

101 ますます活性化するものと考えられる。

また、デジタルコンテンツは嗜好性が強い商品であるため、販売サイトと併せて SNS 的なサイトを開設し、ここで得られた情報を利用して更なる販売拡大につな げる動きが注目される。

また、AppleのiPhoneでは、魅力的なアプリケーションが次々開発・登録され

るApp Storeの存在が、iPhoneという端末自体の魅力をますます向上させ、更な

る端末販売向上につながるというサイクルが確立されている。このような、デジタ ルコンテンツと端末の双方が車の両輪となって、市場を活性化するという動きも今 後、拡大するものと考えられる。

レーベルゲートは、PC上の音楽配信サイト「mora」(ATRAC形式)、「mora win」

(Windows Media 形式)、モバイル端末(携帯電話)上の音楽・動画配信サイト

「moraケータイフル」、「moraケータイビデオ」、音楽ユーザー向けの SNS であ る「PLAYLOG」、「うたとも」(au 機種のみでのサービス)、更に 2010 年 4 月 1 日より開始したAndroid携帯向け音楽配信サービス「mora touch」など、音楽や 映像に関する様々なサイトを運営する事業者である。

同社の音楽配信サイトには、国内の大手レコード会社が多数参加しているため、

J-POPの品揃えは国内随一を誇る規模である。

近年の傾向として、PC向けサイト「mora」、「mora win」双方からのダウンロ ード件数は、年率 20%以上で伸張しているが、モバイル端末(携帯電話)からの ダウンロード件数は伸びが鈍化傾向にある。これは業界全体をみても同様の傾向と なっている。

PC へのダウンロードが増加傾向にある理由として、ネットブックなどの安価な PCの出現があげられる。近年高額化の著しい携帯端末より、安価になったPCが、

1人1台のモバイル端末に近い位置付けを獲得し、操作性で勝ることもあり、以前 より音楽ダウンロードに活用されるようになったと考えられる。

同社の展開するSNSサイト「PLAYLOG」は、オープン型SNSであり、PCや、

携帯用音楽再生機で聴いた音楽の履歴がブログに自動表示されるなど、音楽を楽し むための機能が充実したSNSである。アーティストの公式ブログが存在し、ログ 友(PLAYLOGにおいてSNS内の友人をさす呼称)になることも可能である。

また、「うたとも®」は、au携帯電話の通信機能を利用して自分と同じような曲 を聴いている人を探したり、コミュニティで音楽の趣味が近い人と情報交換したり することが可能な、au LISMO公式の音楽コミュニケーションサービスである。現 在、会員数は 150 万人に達している。「うたとも®」では月間 1 億回を超える EZ

「着うたフル®」再生履歴を活用した「楽曲再生ランキング」を「うたともAward®」

として月1回公表している。

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同社は今後のサービス拡大の方向性として、音楽関連の各サイトとアライアンス を組み、利用者に対してより包括的なサービスを提供することを考えている。

ビデックスは、2004 年に創業した、PC 向け動画配信サービス「VIDEX」を運 営する事業者である。

「粗悪な映像があふれるネット上で、良質な映像が流通できるインフラを作る」

という理念の下、あくまでも、ペイ・パー・ビュー方式により良質な映像を低価格 でダウンロード提供する形態にこだわり、消費者から大きな支持を得ている。

現状の会員数は35万人となっており、多くの有料動画配信サービスの大半が赤 字である中、同社は現時点で利益を計上している。2010年12月期には、目標売上 高10億円、会員数は2011年度、100万人を目標としている。

同社の配信サービスでは、NHKドキュメンタリーや、BBCやナショナルジオグ ラフィックチャネルといった海外番組など、質の高いコンテンツが提供されている。

その他、アニメ、ドラマ、映画、バラエティも含まれるが、他のストリーミングサ イトでは配信されていない高画質・高品質な番組を中心にラインナップしてダウン ロードのメリットを生かしているという。現在の有料配信コンテンツ数は6万作品 に上り、PC向け有料動画配信サービスとしては国内で最大級の規模を誇っている。

また、同社の配信コンテンツは動画品質も極めて高く、ハイビジョン放送同等レ ベルの高画質である。コンテンツプロバイダーから、必ず最も解像度の高いオリジ ナルのマスタデータ提供を受け、この品質を維持している。

これらの高画質動画配信を支える技術的基盤が、同社が開発している配信基盤で ある。通信回線を効率的に利用する分散配信の技術を利用し、3GBを超える動画 データをスムーズに配信可能な基盤を構築している。また、独自に開発した動画再 生ソフト「Videx Station」は、同社の配信基盤と組み合わせて活用すると、通常 の3倍以上の速度で動画データをPCに取り込める。同社の配信はダウンロード形 式であるが、ダウンロード中に再生が可能であり、速度が速いため、利用者はスト リーミングビデオと同様に、ストレスなく画像を楽しむことが可能である。

これら独自技術に基づく配信基盤により、同社はサービスに必要なコストを大幅 に低減することに成功している。独自の配信技術が、他社より低価格なサービス提 供を可能にしているといえる。

今後同社はPCだけではなく、スマートフォンやタブレット等の他デバイスへの 展開も検討しており、現在準備中である。

Appleのグローバル売上高は、2009年度、365億3,700万ドル(前年度比12%

増加)、日本の売上高は、2009年度、18億3,100万ドル(前年度比21%増加)と 項調に増加している。

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売上高増加の主たる要因は、iPhoneの販売額増加、及びiPod/iPod touchの販売 額の増加である。特に、iPod/iPod touchは、「ゲーム機」としても売れており、任 天堂DSの販売不振の要因となっているといわれている。

iPhone のヒットには様々な要因があるが、アプリケーションをダウンロードし

て、自分仕様にiPhoneをカスタマイズ可能なApp Storeの活況が大きな要因とな っている。

App Store上で、グローバルで購入可能なアプリケーションの種類は、2009年

12月時点で10万種類以上。既に20億ダウンロード以上が記録されている23。 アプリケーションは開発者が、無料でダウンロード可能な SDK(Software

Development Kit)を利用して、開発し、登録する。SDKは、既に100万本以上

ダウンロードされており、アプリケーション開発者数の規模が伺われる。

App Storeへのアプリケーション登録の際には、年会費(99$、1万800円)が

発生する。また、アプリケーションが1回ダウンロードされる度に、アプリケーシ ョン価格の7割が開発者、3割がApple社に分配される仕組みとなっている。

App Storeで販売するアプリケーションの開発は、米国では、「21世紀のゴール

ドラッシュ」といわれており、多くの開発者が、知恵を絞って、売れるアプリケー ションの開発に注力しているという。

同社の消費者保護の方針は、原則「ユーザーを犯罪者扱いせず、信頼して使って 頂く」というものであるが、公序良俗を害するアプリケーションが登録される可能 性のある、App Storeなどでは、登録時にアプリケーションの品質や、公序良俗性 などを同社が審査している。