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法制度動向(消費者保護など)

1.2 日本のインターネットビジネスを取り巻く環境動向

1.2.4 法制度動向(消費者保護など)

インターネットビジネスに影響を与える法制度の動向として、資金決済法の動向 があげられる。2009年6月に可決された同法により、2010年施行以降は、サーバ ー管理型の電子マネーが同法の規制下に置かれるとともに、国内、海外向けの尐額 送金業務が銀行以外に解放される。施行後は、海外の送金事業者の参入が予想され るとともに、国内のインターネットビジネス事業者が決済、送金の利便性を高める 新たなサービスを展開するものと考えられる。

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また、インターネットにおける安全・安心の確保という観点からも、様々な活動 がなされている。

主として従来からあるネット販売における各種トラブルに関して消費者保護の 観点から取り組みを推進する団体が、ECネットワークである。設立当初より、国 内取引のみならず、越境取引に関するトラブルに対しても、取り組みを実施してい る。

国内では、会員事業者向けのコンサルティングサービスや、一般消費者向けの無 料相談サービス、ADR サービス(あっせん)を行っているが、中核となるのは、

ウェブコンテンツやセミナー開催を通じた、会員向けの情報提供サービスである。

ECネットワークは、消費者センターなどと密に連携しており、日々、10件程度 は、消費者センター経由で相談が寄せられている。主として、消費者センターでは 対応が困難な、複雑なトラブルに関する問い合わせが寄せられてくる。

多くのトラブルは、ECネットワークが相談にのる程度で解決することが多く、

ADRサービス(あっせん)が必要になる案件は、現在、年間1桁件数程度であり、

ボリュームは非常に尐ない。

また、ECネットワークは、次第に増加する越境ECにおけるトラブルへの対応 を強化するため、「東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)」などの国際的議 論の場を活用し、国際消費者相談ネットワーク(ICA-Net)の設置を提案している。

2009年 1月より、ERIAのワーキンググループの研究活動として試験運用が開 始され、米国、アジア各国・地域(シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、

台湾)、国際消費者連盟が参加した。最近では、ECC-Netを構成するEUや加盟各 国との非公式な意見交換が進んでいる。同ネットワークは、トラブルが発生した国 のネットワーク加盟機関が相互に情報を連携し、トラブルの解決を支援するもので ある。

ICA-Netがトラブルの解決に、より実効力を持つためには、現状の情報共有から

一歩進めて、各国の法執行機関との連携を進める必要がある。以前、フランスの消 費者から、「YAHOO のオークションより代行業者経由で落札した商品が、代金を 支払ったにもかかわらず届かない」というクレームがあり、問い合わせを受けた日 本の担当者が、開示先住所に直接足を運んだところ、代行業者は夜逃げしていたこ とが判明した。現段階では、それをフランス側に伝える以上の対応は実施できてい ないが、ECネットワークとしては、国内機関間の連携により、更に効果的な紛争 解決の仕組みが可能となると考えているという。

更にネット販売の信頼性を向上させるため、ECサイトの信頼性を審査し認定マ ークを発行する事業が国際的に広がりつつある。

EC サイトの信頼性に関する第三者認証機関である株式会社 Trade Safe は

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「Trade Safe トラストマークサービス」を発行しており、トラストマーク発行機 関の国際連携組織であるATA(Asia-Pacific Trustmark Alliance) に日本から加入 している唯一の民間企業である。

TradeSafeは、事業者の実在、サイト表記の法令項守、トラブル時における消費

者への対応状況などを同社が審査した上でトラストマークを発行しており、同マー クの掲載されたECサイトが信頼できるものであることの認定している。

トラストマークの発行を受けることで、自社サイトの信頼性が向上し、取引数、

売上の向上や、コンプライアンスリスクの低下といった効果が期待できる。

サイトの審査にあたっては、業界毎の事情も考慮した、幅広い視点からチェック が行われ、審査にあたり提出された資料や、当該サイトのクチコミ情報なども勘案 されている。ECサイトに関して、改善すべき点があれば改善点を指摘し、合格す ると、トラストマークの発行を受けられる。

また、同社はインターネット広告事業者、オプトの子会社であるため、オプトの 持つブランディングや、効果的な「見せ方」に関するノウハウを利用して、トラス トマークを単に発行するだけではなく、トラストマークがビジネスに寄与するよう なアドバイスを提供できる点も強みである。

また、同社はトラブルの際のより実効的な支援として、消費者とショップが直接 解決できないトラブルの解決支援「TradeSafe ADRサービス(裁判外紛争解決)」

や、1案件10万円までを限度として補償する「TradeSafeあんしん補償サービス」

を提供している。本サービスを利用しているサイトで、消費者が商品、サービスを 購入すると、TradeSafeから「安心サポートメール」が送信される。このメールが、

万一トラブルが発生した場合に、サポートを受ける際の証明となる仕組みである。

補償サービスは、TradeSafeが自社の審査品質に自信があるからこそ、展開可能な サービスであり、消費者のEC利用における不安解消に確実に寄与するものと考え られる。

近年、問題としてクローズアップされているネット上における青尐年などの保護 に関しても、検討を推進する団体が組織され、対策が進んでいる。

安心ネットづくり協議会は、インターネットの利用環境を整備するため、利用者、

関連事業者、教育関係者などが集まり、2009年2月に設立された。

インターネット上での望ましい行動規範として「ネットでも思いやりをもっ て!」、「社会のルールとマナーを守って!」、「賢く使って、よりよいコミュニケー ションを!」という3つの目標から成る「もっとグッドネット宣言」を掲げており、

宣言への同意者をネット上で募集している。

また、安心ネットづくり促進協議会 コミュニティサイト検証作業部会は、コミ ュニティサイトの利用により発生している問題に関する課題の整理、及び対策方針

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また、SNS事業者が協力して活動する例も増加している。グリー、DeNA、ミク シィの3社は、各社が青尐年保護に必要な情報共有などで協力を推進すると公表し た。また、携帯電話事業者などと連携して、年齢認証制度の構築を目指すという20