2.2 米国のインターネットビジネスを取り巻く環境動向
2.2.2 技術動向
米国におけるインターネット通信インフラとしては、主に、ケーブルテレビ、
DSL、光ファイバー、衛星・ワイヤレスの4種の通信方法がある。
そのうち、最も広く提供されているのが、ケーブルテレビ回線によるインターネ ットである。国土が広く居住地が分散するため、地上波だとテレビ受信のしにくい 米国では、テレビ視聴のためのケーブルの敶設が広く進んでいた。この放送インフ ラをそのまま利用することにより、多くのケーブルテレビ事業者が、インターネッ ト通信サービスを提供している。その多くが「DSL よりも速い」ことを売りとし ており、10Mbps〜20Mbps の速さの回線を提供している。これは、ビデオなどの 動画を最低限ストレスなく視聴ができる、といったレベルである。多くの場合、こ
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うしたケーブル回線によるインターネット接続サービスは、月々20 ドル前後で安 価に提供されている。加えて、従来のケーブルテレビ利用の延長で利用開始しやす いため、米国の消費者から広く支持されている。光ファイバーが広く浸透する日本 では現在、100Mbps の速さのインターネット回線が提供されていることが多い。
そうした日本の通信環境と比較すると、米国の通信環境は、複数のPCからのアク セスや、動画や音楽のダウンロードやストリーミングなどの利用において、不便と 感じる場面も一定の割合で出てくると推察される。
このように米国のインターネットは、ケーブルテレビによるものが大部分を占め ていたが、ここ数年で、衛星・ワイヤレスによるインターネット接続ができる環境 が整ってきている。情報通信データブックによると、衛星・ワイヤレスの中で、最 近特に利用環境が整備されてきているのが無線LANであるという。米国では、無 線LAN のスポット数が 67,658 となっており、世界で最もスポット数が多い(図 表 2.2-2)。無線LANは、ニューヨーク市やサンフランシスコ市、シカゴ市などの 大都市で主に利用がしやすい環境となっている。
図表 2.2-2 世界の無線LANのスポット数
国名 スポット数
米国 67,658
中国 34,746
英国 27,469
フランス 25,621
ロシア 14,619
ドイツ 14,512
韓国 12,814
日本 11,612
スウェーデン 6,759
台湾 5,465
出所:情報通信データブック2010(情報通信総合研究所)
これは、2004年頃から、米国の大都市が、デジタルデバイドの解消を目的とし、
自治体の取り組みとして、無線LAN提供の拡大に注力したことが、大きな要因の ひとつとなっている。また、図書館やマクドナルドなどの公共スペースで、これま では有料だった無線サービスが、無料化される動きも出てきていることも、無線 LAN利用を後押ししている。米国における無線LANサービスプロバイダーの数は
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非常に多い。FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)に よると、最も多いADSLプロバイダーの879社に続き、無線LANサービスプロバ イダーは617社も存在する。
米国では、無線 LAN は、PC でインターネットを使うためだけではなく、携帯 電話でインターネットを使う手段としても位置づけられている。米国ではモバイル のネットワークが2Gや2.5Gであるため、データ転送速度の速い無線LANが使わ れることが多いからであるという。
米国のモバイル通信インフラについては、日本を始め、世界的に3Gの普及が広 がる中、米国ではまだ、GSM方式などの2Gや2.5Gが圧倒的に多い。
唯一、米国で最も広いカバレッジの3Gサービスを提供するベライゾンでは、か なりの広範囲で3G サービスを提供している。ところが、米国で最も営業収益の大
きいAT&Tモビリティをはじめ、ほとんどの携帯電話キャリアでは、2Gを中心と
したサービス提供に留まっている。
2008年以降のiPhoneの人気上昇を機に、スマートフォンの普及が大きく広がっ
たことを受け、米国大手の携帯電話キャリアは、高速データ通信ができるモバイル インターネット環境を整える必要に迫られている。そこで、多くの携帯電話キャリ
アは、WCDMAをさらに高速化したもので、4Gに位置づけられる規格LTE(Long
Term Revolution)の導入を表明している。
ICT World Reviewによると、米国では、今後「3G飛ばし」と呼ばれる現象が
起こる可能性が示唆されている。
一方で、ハードウェア技術動向をみると、持ち運べることができ、かつ、画面が 大きい、インターネットサービス利用を主目的としたモバイル端末を各社がリリー スした。
2009年、米国で特に目立ったのが、AppleのiPhoneの世界的なヒットを受け、
類似のタッチパネル機能、大画面のタイプのスマートフォンが、携帯電話機器各社 からの発売が相次いだことである。
モトローラからは、グーグルが開発したオープンソースOS を搭載した、Droid と呼ばれる、タッチパネル機能付きスマートフォンが販売されている。また、かつ てPDA(Personal Digital Assistant)で一世を風靡したPalmも、伸びるスマー トフォンへの取り組みを進めており、Preと呼ばれる同様のタッチパネル機能付き スマートフォンが発売されている。そして、米国のスマートフォン市場で最もシェ
アの高いRIM(Research In Motion)も、自社のスマートフォンにタッチパネル
機能を加えている。
今やタッチパネル機能は、米国のスマートフォン市場において、不可欠となりつ
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つある様子が伺える。これらのスマートフォンはすべて、3G 対応になっているこ とから、米国における今後のモバイルインターネットサービス利用のあり方に、大 きな影響を与えるものと考えられる。
また、米国のハードウェア技術動向として、電子書籍を閲覧・購読する専用機器 である電子書籍リーダーが相次いで発売されたこともあげられる。2009 年では、
特に、AmazonやBarns&Nobleなどの書籍を販売する企業から新しい機器が発売
されたことが注目を集めている。
Amazonからは、米国の電子書籍ブームを引き起こすきっかけとなった、Kindle
と呼ばれる電子書籍リーダーが販売されている。薄く、軽量で、持ち運びできる形 態だが、筺体、画面ともに、サイズも大きくなっている(図表 2.2-3)。無線LAN を通じて、「Kindle Store」と呼ばれるサイトから、直接書籍コンテンツをダウン ロードし、閲覧できる仕組みになっている。画面がモノクロであり、消費電力を極 限まで抑えるようになっているため、駆動時間が最大2週間と長くなっており、い くつかの新聞や雑誌、ブログについてもブラウジングができるようになっている。
Barns&Nobleからも、Nookと呼ばれる、同様の電子書籍リーダーが発売された。
いずれをとってみても、画面サイズが大きく、紙の書籍を読む感覚で利用ができ るだけではなく、インターネット上の専門の書籍販売サイトとセットになっている ことが特徴であると言える。書籍購読をはじめとした今後のデジタルコンテンツの 利用への影響は大きいものと考えられる。
図表 2.2-3 AmazonのKindle
出所:flickr
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また、スマートフォンや電子書籍リーダーと同様に、注目されている通信機器と
して、Appleから発表された、iPadと呼ばれるタブレットPCがあげられる(図表
2.2-4)。iPhone と同様、タッチパネル式となっており、App ストアにてアプリを
購入し、ゲームや道案内、グルメ検索などの様々なインターネットサービス利用が できる他、インターネットブラウジングも可能である。注目される最も大きな理由 は、Kindle などの電子書籍リーダーのように画面が大きく、電子書籍の利用やイ ンターネットブラウジングがしやすいつくりになっていることである。この他、モ ノクロ画面の電子書籍と異なりカラー表示される点もあげられる。今後のモバイル インターネットサービス提供に、大きな影響を与えると言われている。
図表 2.2-4 AppleのiPad
出所: flickr