3.4 ドイツ
3.4.2 事業者動向
3.4.2.1 EC(物販)
ドイツでは、ECが拡大した結果として、各々のECサイト間での競争も激化し ている。大規模な EC サイトでは、さまざまなセールを提供している一方、
guenstiger.deやPreisverglech.deといった価格比較サイトも人気を集めており、
消費者はこれらのサイトを利用して簡単により安く、より良い商品を探すことが可 能となっている。一方、事業者側も様々なプロモーションを展開し、顧客を獲得し ようとしている。SEO(Search Engine Optimisation)対策やダイレクトマーケ ティングなどの施策は積極的に展開されている。例えば、米国の Amazon がドイ ツで展開しているAmazon.deでは、利用者が過去に購買、検索した結果などを基 にしたEメールによるプロモーションを展開している。また、ドイツのOttoグル ープでは、ECサイト内のナビゲーション機能を強化し、決済のプロセスを簡素化 することで、消費者の利便性を高めている。
Ottoグループはドイツの主要なEC事業者の一つである。1995年のEC事業へ の参入から急速に事業を拡大しており、グループ全体では100以上のECサイトを 展開している。グループの売上は2008年度で対前年比12%増の55 億ユーロに拡 大している。本来、Otto グループはカタログ通販事業者であったが、当該シーズ ンでは、EC事業が対前年比24%の伸びとなり、売上の60%以上がEC事業よるも のだという。
Ottoグループでは、一般的なECプラットフォームの他、EC事業での新たな試 みとして新しいコンセプトのECサイトも展開している。例えば、ランジェリーシ
ョップのLascanaや装飾・家具用品のYourHome、寝具のSchlafweltなど、いく
つかの専門サイトの展開がある。Otto グループでは、これらの新しいコンセプト のECサイトを展開することで、特定のニーズを持った消費者に積極的なアプロー チをしているという。また、ECサイトの機能性も重要視しており、特に商品の掲 載にはマルチメディア技術やコメント機能、Web2.0技術などを活用して利用者が 特別な購入体験ができるように趣向を凝らしているという。
例えば、Schlafwelt(www.schlafwelt.de)では、利用者はインターネット上で デザイナーにベッドのデザインを依頼したり、マットレスアドバイザーからのアド バイスを受けたりすることができるようになっている。さらに、利用者のニーズに 応じた商品提示機能を持っており、個別に設定されたフィルターによって利用者が すばやく簡単に目的の商品にたどり着けるようになっているという。 また、
YourHome(www.yourhome.de)では、様々な商品の写真の他、ブログを活用し た利用方法の提示、スタイルエディターという他商品とのコーディネート例の提示 などの機能も提供し、利用者が購入するために必要な情報をできるだけ多く提示す
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ると共に、操作性も考慮したサイトデザインとなっている。
決済手段についても利用者の利便性に応えるため、様々なオプションが提供され ている。クレジットカードの他、請求書や代引きにも対応している。また、割賦払 いや猶予期間を持った支払いなどへも対応している。ただし、Paypal のようなオ ンライン決済については利用者の多くが従来からの支払方法を選択することや、オ ンライン決済自体のセキュリティへの不安などの理由から、現在のところ対応予定 はないとのことである。
セキュリティや消費者保護についても積極的に取り組んでおり、3D セキュア認 証システムやPINコードを用いた個人認証を採用している。また、Ottoグループ のECサイトはBVH(Bundesverband des Deutschen Versandhandels:全国通 信販売連合)からセキュリティ認定も受けている。さらに TÜV (Technischer
Überwachungs Verein:技術検査協会)からインターネットショッピングのセキュ
リティ保証マークの認定も受けている。利用者からの質問やリクエストには従来か らの電話対応に加え、チャット機能によるリアルタイムの回答も行っている。
Otto グループは今後も商品を幅広く提供するプラットフォーム型のビジネスを 展開していくとしている。そのため、前述の特定の分野に特化したECサイトを複 数展開する方針であるという。ただし、これらの市場の競争は激しく、Amazonの ような強力な競合企業の存在や、専門店として勢力を伸ばしつつあるH&M、IKEA などとの競争は激しい状況である。Otto は機能強化や新しい技術の採用に積極的 であり、利便性の向上により競争に勝ち残っていこうとしている様子である。また、
地域展開については、世界26カ国で展開しており、米国、フランスの他、日本で もサービスを提供している。特に、近年の著しく成長が高い注目国としてロシアを 挙げている。
商品別の動向をみると、欧州でも電化製品のインターネット販売は拡大傾向にあ るという。ドイツにおいて、電化製品の EC サイトを展開している事業者として
Redcoonがある。2003年の開設以来成長を続け、現在ではドイツの他、オースト
リア、スペイン、ポルトガル、イタリア、ベルギー、オランダ、デンマーク、ポー ランドの欧州9カ国で展開している。商品は多岐に渡り、液晶テレビやデジカメか ら白物家電まで数多くの商品を取り揃えている。2009年12月時点の月間訪問者数 は 480万人であり、欧州全体で 459 万ページビューのあるドイツでも大手の EC 事業者である。
様々な商品を展開しているが、特徴的なものとしてはノートPCやネットブック の販売が挙げられる。ドイツでは、携帯電話事業者が小型のノートPCやネットブ ックとモバイルインターネットアクセスをバンドルして販売していることが多い が、選択できる PC の幅が尐ないことが欠点とされている。これに対し Redcoon
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では、自社の商品にモバイルインターネットアクセスのサービスを付加するサービ スで差別化を図っている。ノートPCの購入者はインターネット上でモバイルイン ターネットアクセスサービスがバンドルされた PC を購入することができる上、
Redcoonの幅広い商品群の中からPCを選択することが可能となっている。
支払方法も様々なオプションが提供されており、口座振替やクレジットカード、
デビットカードの他、代引きも選択可能である。さらに、Citibank との提携によ り、150ユーロを上限とした借り入れも可能となっている。また、商品の予約を行 っておき、支払いが完了次第発送するというユニークなサービスも行っている。
Redcoonでもセキュリティを重要視しており、ドイツのTrusted Shops、および
EHI(ドイツの流通調査機関)からの認定を受けている。これらの認定は毎年監査 が行われ、100頄目以上の観点で個人情報保護や情報漏洩などに関するチェックが 行われている。
3.4.2.2 EC(デジタルコンテンツ)
ドイツでは、デジタルコンテンツとしてゲームが人気を集めている。また、メデ ィア企業もインターネットを用いたコンテンツの提供に力を入れ始めている。
Gameforgeは2003年にドイツのカールスルーエを拠点として開設されたウェブ
ブラウザー向けゲームの開発・配信事業者である。設立以来、急速に拡大しており、
現在では 18 種類のゲームがアフリカを除く世界中で提供され、対応言語数は 55 ヶ国語となっている。利用者数は全体で約2億人に上り、総プレイ時間は月当たり 150億分に達している。どの時間にアクセスしても100万人のプレーヤーがログイ ンしているという。提供されているゲームは様々な賞を獲得しており、2009 年に はシミュレーションゲームの「Ikariam」がドイツのゲームアワードでベストウェ ブブラウザーゲームを受賞している。また、事業者自体の賞も受賞しており、ヨー ロッパで最も革新的な企業として表彰されている。
Gameforge は個々のドメイン名の下、様々な種類のゲームを配信している。提
供しているゲームの種別はMMO(Massively Multiplayer Online:多人数同時参 加型オンラインゲーム)であり、近年ヨーロッパを中心として非常に人気のあるタ イプのゲームである。Gameforge の特徴は利用者が無料で参加できる点にあり、
収益はゲーム内で使用する仮想通貨の販売によるものである。MMOゲームのプレ ーヤーの80%を15 歳から 35 歳の男性が占めており、Gamegforge では、この顧 客層を主要なターゲットとしている。Gameforge では、プレイは無料でできるタ イプのオンラインゲームが今後主流となるとみており、従来型のパッケージ販売に よるゲームは今後衰退していくと予想している。Gameforgeによると、MMOゲー ム市場は複数の要因によって拡大するという。第一に金融危機の影響により、気軽
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に楽しめる娯楽が注目を集めており、ゲームはその一つと考えられる点。次に、若 い男性は友達とプレイすることを好むという点。最後に、競合他社である EA
(Electronic Arts)などの事前に購入することが必要なゲームと比較して、無料で 遊び始めることができる点などが挙げられている。さらに、オンラインゲームは
CD/DVD などの媒体で提供されるゲームと違い著作権侵害の心配も尐ない利点も
あるという。
今後の展開として、現在の主にPCのブラウザーをベースとしたゲームから、他 の機器上のブラウザーでも利用可能となるようにすることが想定されるが、現状、
iPhoneや携帯電話を含めた他のデバイスでの提供は検討していないという。
利用者からの質問やトラブルについてはサポートチームを配置している。ただし、
多くはゲームのプレイ中でのトラブルであり、これらの解決にサポートチームがあ たっている。また、プレーヤーの中にサポートチームのプレーヤーも入っており、
悪質なプレーヤーを発見した場合は削除する場合もある。
メディア企業がコンテンツを提供している例としては、Axel Springerがある。
Axel Springerはヨーロッパの大手新聞社の一つで、ドイツでは最大の新聞社であ
り、雑誌出版に関してもドイツで第3位の大手出版事業者である。さらに出版事業 だけでなくマルチメディア事業も積極的に展開しており、ウェブサイト、テレビ局、
ラジオ局など多方面に事業を展開している。現在は35カ国に12,500人の従業員を 抱えている。
近年はコンテンツのデジタル化に重点を置いている。Springer は大衆紙である 同社のBild 紙をPC 向けのウェブサイトだけでなく、一部のコンテンツをモバイ ル向けに形式を変換して提供しており、その一つがiPhone対応である。Bildのス ポーツ記事は人気があり、その中でも特にヨーロッパにおいてはサッカーの人気が
高い。BildではiPhone上でサッカーの試合スケジュールの最新情報や試合結果速
報を提供するアプリケーションを提供している。
3.4.2.3 CGM・その他サービス
ドイツでは、CGMやその他サービスについても米国の大手事業者が参入し、シ ェアを拡大しているが、一方でドイツ国内の事業者も同様のサービスに独自の機能 を加えてサービス展開を行っている。
Wer-kennt-wen.de(WKW)はドイツのSNSであり、近年ドイツ国内で人気が
高まっている。2009年10月時点の登録者数はおよそ700万人とされている。WKW は音楽やモバイルサービスに重点を置いている。2009年6 月にはドイツ最大手の 通信事業者であるドイツテレコムと提携し、ドイツテレコムの提供するオンライン