1.2 日本のインターネットビジネスを取り巻く環境動向
1.2.2 技術動向
インターネットビジネスの進展に影響を与える技術の動向として、まず通信回線 の高速化に関する状況をみる。
我が国のブロードバンド契約回線は、DSLが減尐傾向にあるのに対して、FTTH が増加傾向にあり、2009年9月末時点で、1,652万契約に達している(図表 1.2-5)。
また、携帯電話、PHS の加入契約者数の推移をみると、携帯電話の加入契約者 数は項調に増加し、2008年時点で1億749万件に達している。中でも第3世代携 帯電話の加入契約者数は大きく増加しており、2008年時点9,963 万契約となって いる。(図表 1.2-6)。
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図表 1.2-5 ブロードバンド契約回線の推移15
195 248 287 324 357 383 408 426
565
1,027
1,333 1,448 1,424 1,313 1,159 1,051 21
89
243
464
794 1,133 1,442 1,652
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009※
ブロードバンド契約数
FTTH DSL CATV
(万契約)
※2009年は9月末時点の契約数
出所:総務省発表「ブロードバンドサービスの契約数等」より作成
図表 1.2-6 携帯電話、PHS加入契約者数の推移
7,566
8,152
8,700 9,179 9,672
10,272 10,749
6,991
8,810
9,963
4,833 3,035
1,669 716
546 514 448 469 498 461 456
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
加入契約者数
携帯電話 第3世代携帯電話 PHS
(万加入)
出所:平成21年版 情報通信白書(総務省)
続いて、インターネットビジネスに関連する技術で、近年浸透しつつあるものと
15 2002年-2008年は、総務省「ブロードバンドサービスの契約数等(平成20年12月末)」に
より作成。2009年は、総務省「ブロードバンドサービス等の契約数(平成21年9月末)に より作成」。
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してOpenIDの動向をみてゆく。
OpenIDは、複数のサイトへのシングルサインオンを実現する仕組みであり、ブ
ログエンジン開発などを行う米シックス・アパート社のエンジニアにより、2005 年に開発され、オープンソースコミュニティで公開された。
エンドユーザーは、一度、OpenIDを供給するサイト(OpenID Provider、以下
OP)から自分のOpenIDを取得すると、以後OpenIDを認証に利用しているサイ
ト(Relying Party、以下RP)であればどこでも、既に取得済みのOpenIDを利用 してログインすることができる。
ユーザーは、多数のログイン ID の管理に悩む必要がなくなる上、RP のサイト にはユーザーのパスワード、メールアドレスなどの情報が伝わらないため、従来の ように個々のサイトで個別に ID、パスワードを管理する方式より、情報漏えいの 危険性は低くなるというメリットがある。
OpenIDは公開規格であり、誰でも無償で利用可能である。また、OpenID は分
散方式をとっており、OP や、RP を承認・登録する中央集権的な機関は存在しな い点が特徴的である。2008年1月、OpenIDの規格を制定する米OpenIDファウ ンデーション(米OIDF)が、URLをIDとして利用するOpenID2.0を公表し、
米大手企業が次々利用を表明したため、OpenIDの認知度、存在感が世界中に広ま った。現在、全世界でOpenID対応サイトは5万超、OpenID発行数は14億を超 えている。
OpenIDファウンデーション・ジャパン(OIDF-J)は、日本国内におけるOpenID
の普及、促進を目的とする、米OIDFの公認団体で、2008年10月、シックス・ア パート、日本ベリサイン、野村総合研究所を発起人として設立された。
日本においてOpenIDの利用を推進するためには、例えば、登録属性情報の中に、
ひらがな、カタカナが利用されるといった点や、携帯電話でインターネットに接続 する(米国のモバイルインターネットアクセスはスマートフォンが主流である)な どといった、日本特有の事情も考慮し、OpenIDの仕様を制定する必要がある。米
OIDFは米国のインターネット事情のみを考慮してOpenIDの仕様を決定している
ため、OpenID の国際化に向けて、OIDF-J は、欧州 23 カ国が参加する OpenID
EUROPE(OIDE)とともに、各国の事情に即した要望を米 OIDF に積極的に発
信して取り込みを働きかけている。
OIDF-J発足時、参加企業は32社であったが、以後着実に増加し、2010年4月
時点では、55社が参加している。
他の注目すべき技術的な動向として、日本発の新たな独自技術を持って、市場に 新たな付加価値を提供する事業者が次第に増加している点があげられる。これらの 事業者が提供する製品、サービスは次第に市場に浸透しつつあり、今後の展開が注
72 目されるところである。
サイジニアは、2007年4 月に設立された、レコメンデーション・エンジンを開 発、販売するベンチャー企業である。同社は、2010年1月、ハイテク産業に関す る米国の大手メディアであるRed Herring が全世界の未上場企業の中で特に優れ た新しい技術を持つ100 社を選出する「Red Herring Global 100」を受賞してい る。
同社のレコメンデーション・エンジンの特徴は、独自の解析アルゴリズムである。
現在、アマゾンなど、多くのECサイトで利用されているレコメンデーション・エ ンジンの解析アルゴリズムには協調フィルタリングが用いられているが、同社が開 発したレコメンデーション・エンジン「デクワス」には、複雑系工学の成果を応用 して同社が独自に開発した解析アルゴリズムが使用されている。嗜好を同じくする 利用者を束ねる「コミュニティ」分割という概念が導入されており、極めて高い精 度でのレコメンデーションが可能となる。また、利用者の行動データの蓄積量が増 加しても、計算コストを抑える拡張が容易な点も、協調フィルタリングと大きく異 なる点である。
「デクワス」は、ニフティ、ニッセン、ワールドダイレクトスタイル、ドクター シーラボ、レンタルDVDサイトの「ぽすれん」などのECサイトや、サンケイビ ジネス、オールアバウト、日経BPなどのメディアサイトを中心に導入実績を伸ば している。導入企業の事例によると、PV の増大、購買単価の向上、ユーザー満足 度の向上などの効果が現れているという。
同社は、今後、導入企業、利用エンドユーザー数を増やし、行動履歴データを蓄 積することで、更に精緻なレコメンデーションサービスを実現することを目指して いる。そのため、「デテクル」と呼ばれる、無料のレコメンデーション・エンジン
(機能と利用回数が有料版であるデクワスに比べて制限されている)を、中小企業 にオープンソースとして配布し、エンドユーザーの裾野の拡大を急いでいる。また、
個別サイトだけでなく、サイト間でレコメンデーション可能な「クロスレコメンデ ーション」の実現も視野に入れているという。
フリービットは、インターネット接続事業者へのインフラなどの提供、ユビキタ スネットワークの提供、インターネットビジネスに関するコンサルティングサービ スの提供などを行う事業者である。
同社の提供するソリューション「Emotion Link」は、インターネット上に仮想 的なインターネットを架設するOverlay Internet技術に、VPN技術を組み合わせ、
端末同士のセキュアな双方向通信を実現するサービスである。
この技術を活用したアプリケーションとして、様々なデバイスをサーバー化し、
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ノード間のあらゆるデータファイルのやりとりや閲覧を可能にする「Servers Man」を同社は市場に提供している。「ServersMan」を端末にインストールする と、各端末に保存されたデータにブラウザーを介してどこからでもアクセス可能と なる。通信は同社が提供しているVPN網を利用するため、非常にセキュアな環境 でアクセス可能となる点も特徴である。
「ServersMan」は、現在無償で提供されており、iPhone、iPod touch、Android、
Windows mobileで利用可能である。2009年2月のリリースから、10日間で1万
アカウントを発行、最終的には100万アカウント程度を目指すという。