2. 水力発電所における重大トラブルの概要
2.3. 重大トラブル事例の収集
2.3.3. 重大トラブルの一般的な傾向
(1) 被害レベルの傾向
今回収集した表2.10から表2.16に示した重大トラブル事例の内,比較的に被害レベル(停止 期間や復旧費用)が判明している事例について図2.8にレベル別分布を示す。やはり,レベルが 大きくなるに従って事例の数は減少するが,レベル1程度のトラブルは表面化しないこともあっ て,収集できた事例数は少ない。
重大トラブルの傾向として,レベル 5としたものはダム事故,水路事故,機器損傷がそれぞ れ1件ずつであった。ダム事故はレベル3以上だけで,やはり,その被害が大きいことがわかる。
機器損傷はほとんどがレベル2ないし3である。水路事故,水害事故,火災事故などはレベル2 クラスが多い。
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図2. 8 重大トラブルのレベル別分布
(2) 停止期間の傾向
トラブルの様相と停止期間の関係を図 2.9 に示す。この図から明らかな通り,ダムや水路な どの土木設備事故では非常に長い停止期間を必要とする事例があり,場合によっては復旧を断念 した事例もある。一方で,機器故障や水害,火災は概ね1~3年で復旧可能なケースが大半であ る。水路事故は,短期間で復旧できる事例と長期化する事例の両方がある。
図2. 9 重大トラブルの停止期間
(3) トラブルの発生時期
図 2.10 は運転開始から何年くらい経ってからトラブルが発生したかをまとめたものである。
但し,原則として損傷した部位は,その履歴が不明なものについては営業運転の開始からそのま ま使い続けられたものと仮定した。この図から,多くの重大トラブルは運転開始から5年間以内 に発生する初期故障と30年以上経ってから起きる経年劣化に二分される。特に火災事故は経年 の進展とともに増加の傾向が見られる。
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図2. 10 損傷部位の経年
(4) 原因について
図2.11にトラブルの様相から推定される原因別に,重大トラブルの分布を示す。人為・設計 ミスとしたものには,設計・施工ミスやヒューマンエラーによるものを入れた。経年劣化とした ものは,機器や設備の劣化に起因するものを入れたが,結果的に保守が適切に行われていなかっ たものも含まれる。自然災害としたものは,大雨,洪水,土砂崩れ,地震,雷等が原因となった ものである。全般的に設計ミスやヒューマンエラーに起因する事故が多い。また機器の損傷と火 災は人為・設計ミスと経年劣化で占められる一方,水害事故は自然災害が大半である。水路事故 やダム事故はばらついているが,設計ミスに起因する事例が多い。
図2. 11 トラブルの原因について
(5) 復旧費用の傾向
営業損失については2.2.2項に試算したが,復旧費用については損傷部位や損傷の程度で千差 万別であることは言うまでもない。ただ,概念的に大きな設備が損傷を受ければ,被害の程度が 同じでもより高い復旧費用を要すると考え,復旧費用が判る事例について,被災設備の出力を横
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軸に図2.12に整理した。出力とは正の相関があるものの,ばらつきは大きい結果となった。
図2. 12 復旧費用と被災設備の出力規模
さらに,復旧に要した期間すなわち設備の停止期間が長いような事例では,その復旧費用も 大きくなると考え,横軸を被災設備出力[MW]x停止期間[年]として,図2.13を得た。この結果 は,図2.12に比べはるかに高い相関を示すことが判明した。
図2. 13 復旧費用と(損傷出力x停止年数)の関係
この図から,(被災設備出力x停止年数)のパラメータは営業損失ばかりでなく,復旧費用(物 損)の傾向を評価するのに有効と考える。同じ程度の被害規模でも,ダムや水路の復旧費用はそ の他の損傷に比べて高額化しやすい傾向が明らかである。
また1000MW・年で復旧費用は100M$となるが,1$=100円とすると,1MW・年の規模で1000
万円となる。これは営業損失の4000~6000万円に比べると数分の一であり,重大トラブルの損 失は営業費用のほうが一般的に大きくなることを示唆している。但し,図 2.13 のデータの大半 は海外の事例であるため安価な傾向があること,事故の様相によっては同じ 1000MW・年の被 災規模でも数百億円の事例もあることなどから,営業損失とあまり変わらないとの見方も可能で ある。特にダムや水路の重大トラブルはその傾向にあると考える。
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