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4. 重大トラブル回避策の検証

4.1. 検証すべき事項

既に第3章において,水害,火災および水車・発電機の重大トラブルのシナリオとその回避策 を示した。本章では,カラヤン揚水発電所で経験した各種の重大トラブルを通じて,第 3章に明 示した対応の有効性を検証する。

(1) 水車・発電機の重大トラブル回避策の検証

カラヤン揚水のポンプ水車や発電電動機は,最大出力 185MWに対してその最低出力は1号

機16MW,2号機20MW,3,4号機は8MWと非常に低く設定されていた。このため,低負荷運

転時には大きな振動が発生していた。そして,こうした振動に起因した疲労き裂やボルトの緩 み・破断が原因となって重大トラブルが続発した。

振動そのものに対しては,その原因究明と低減対策の検討が求められる。具体的には,振動 測定の実施とその結果の解釈,可能な改善策の検討(例えば基礎ボルトの点検,ドラフト給気,

バランス調整,軸受ギャップ調整など)が回避策として不可欠である。

また,振動に付随する疲労き裂問題は,大きな振動に加え共振や応力集中そして部材の欠陥 に大きく左右される。このため,発生原因の究明,特に実際の変動応力レベルを測定することが 非常に重要となる。変動応力が実測できれば,進展性のき裂であるか否か,き裂が構造物の安定 性を脅かすようなものか否かなどの判断を正確に行える。また,その測定結果を用いて補修方法 や再発防止策が有効か否かを検討することもできる。さらには,補修後の点検をより実効的なも のとできる。

ボルトの緩みや破断,そしてそれに付随するトラブルも深刻である。やはり,その原因究明 や対応策の検討,そして点検の有効化が求められる。しかし,ボルトの問題は疲労き裂以上に原 因の究明が難しい。これは主にボルトの緩みや破断の発生メカニズムを再現することが非常に困 難であること,また実際にボルトに作用する各種の力の測定が実機では困難であることに負う。

こうした点も含め,実際の事例とその対応を示す。

振動,疲労き裂そしてボルトの緩みや破断を主なテーマにして,第 4.2 節にカラヤン揚水発 電所で発生した機械系の重大トラブル事例から回避策の検証を行うこととする。

また,第 5章に記述する回避策の具体的な展開に関する事項,すなわち機器の設計や施工お よび保守の中で留意すべき事項を合わせて検討する。

(2) 水害の回避策の検証

自然災害に伴う水没事故については,既に第 3章に示したように発電所に流れ込む浸水量に 対して,発電所内の排水装置が対応できるか否かでほぼ決まる。このため,浸水量を如何に減ら すか,すなわち発電所全体の防水対策を徹底させることと,排水設備を如何に100%機能させる,

あるいは将来のより大規模な洪水に対処できるように排水能力を向上させる必要があることを 指摘した。

一方,揚水発電所では自然災害が原因となって水没することはほとんどないが,機械系のト ラブルから水没事故を起こすことを指摘した。カラヤン揚水発電所では,2008年11月に停電と

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電動バルブおよび排水ポンプの故障から,1,2号機が完全に水没するという大事故に見舞われ,

その意味では典型的な機械系トラブルによる水没事故を経験した。このため,水没事故にあたっ て実施した原因分析,復旧工事の概要,再発防止対策などは,その回避策の検証に有益と考える。

一般に大きな事故はチーズの穴が比喩として用いられることがある。それぞれの発生確率を 考えれば通常はあり得ない不具合の連鎖と思われることが,事故となると不思議に一気通貫する。

まさにマーフィーの法則であるが,一番起きてほしくない時に別のトラブルが発生すると言うも のである。ただ,そうしたトラブルは元々内包されていたものかもしれず,その辺りをリスクと して認識して適正な対応をしたか否かが,結果となって現れる。カラヤンの水没事故はそうした 点で,不備や錯誤が多々あり反省も多いが,重大トラブルの回避を考える上で,単に水没に限ら ず示唆に富む事例と考え,第4.3節に記述する。

また,水没事故を回避する上で設計,施工,保守の段階で留意すべき事項も併せて検討する。

(3) 火災の回避策の検証

カラヤン揚水発電所では,2006年7月に2件の火災を経験した。また,屋外開閉所の油入機 器の火災も複数回経験した。こうした事例を参考に,火災の回避策について検証する。

火災は,一般的にその原因を追究することが非常に難しい。発電機や変圧器の電気事故が火 災に発展した事例では,保護継電器の動作記録や火災現場の状況からある程度原因が究明できる が,ケーブルが過熱して発火したような場合はなかなか火元を特定できないし,さらには何が原 因だったのか判断に苦しむことが多い。また,火災の件数は非常に少ないので,どうしても素人 判断になりやすい。第4.4節にカラヤンで経験したいくつかの火災事例を示すが,回避策の検証 に加えてそうした困難な要素も示したい。

火災事故についても,設備の設計,施工,保守の段階で考慮すべき事項を検討する。

(4) カラヤン揚水発電所の概要

本論に入る前に,簡単に著者が勤務したカラヤン(Kalayaan)揚水発電所とそれを運転・保 守しているCBK Power Company Limited(以下CBKと略す)について概要を示す。カラヤン揚 水発電所はフィリピン国マニラ首都圏から南東100kmに位置し,同国最大のバイ湖を下池とし,

カリラヤ湖とルモット湖の二つを上池とする同国唯一の揚水発電所で,首都マニラのピーク需要 と周波数調整を担っている。図4.1に発電所の概観,表4.1に発電所と主要機器の概要を示す。

発電所は1982年に1,2号機が運転を開始し,2003, 2004年に3,4号機が増設された。また,

1,2号機もこの時に増出力されている。

CBKは,カラヤン揚水発電所に加えて近くのカリラヤ(Caliraya)発電所と30kmほど離れた ボトカン(Botocan)発電所の二つを合わせて,これらの設備の保有者であるフィリピン電力公 社とBROT(Built Rehabilitation Operation Transfer)契約を結んで運転・保守を行っている。CBK がこれらの3発電所のリハビリテーションとカラヤン揚水発電所3,4号機の増設を請け負う替 りに,2001 年から 25年間,その運転・保守事業を行うものである。CBK の元々の設立者がそ の売却を決めたことから,電源開発㈱は2005年にその50%の権利の譲渡を受け,CBKの経営に 参加した。

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図4. 1 カラヤン揚水発電所の外観

表4. 1 カラヤン揚水発電所の基本諸元 Total Output 720MW: 4 x 180 MW Pump-turbine

Reversible Francis type Maximum output:185MW Maximum net head:286.5m Rated rotational speed:300min-1 Generator-motor Three-phase synchronous type

Maximum capacity:206 MVA Commissioning

year

No.1 unit: 1982(uprated in 2002) No.2 unit: 1982(uprated in 2001)

No.3 unit: 2003 No.4 unit: 2004

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