4. 重大トラブル回避策の検証
4.4. 火災事故
4.4.1. 制御棟ケーブル通廊の火災
(1) 火災の発生状況
2006年7月2日15:00頃に,カラヤン発電所制御棟の地下ケーブル通廊で火災が発生した
(図 4.73参照)。幸い,日中で多数の所員が勤務していたことから,直ちに消火作業を行った。
制御棟には煙がかなり侵入したが,比較的容易に火元が特定でき,燃えているケーブルをケーブ ルカッターで切断して電気を遮断するとともに消火器で消し止めた。
図4. 73 焼損したケーブル
調査した結果,火元は図4.74に示すように垂直方向に多段に設置されたケーブルトレイのう ち,一番下のトレイ A に布設されていた 220V 交流動力ケーブルで,サーバールームのエアコ ン電源であった。このケーブルは,過負荷になって過熱して出火したと考えられた。さらに,使 用していない通信線の束がこのケーブルの上に載っており,それが火勢を強め,その上のトレイ Bのケーブルにも延焼していた。
Trey A
Tray B
Cables in trey A
Cables in trey B Identified fire source,
but this picture was taken after the temporary repair.
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図4. 74 ケーブルの配置
(赤が火元,薄赤のケーブルは使用中,薄青のケーブルは不使用)
(2) 回避策の検証
本事例を通じて以下の回避策の検証ができた。
(a) ケーブルトレイが多段に配置されている部位でケーブル火災が起きると,容易に延焼す る。このため,垂直方向に多段にケーブルトレイを配置するのはできるだけ避けたい(図3.13
①[Avoidance of multi-stacked cable trays]の検証)。また,動力ケーブルと制御・通信ケーブルが 混在していると,後者に延焼しやすい。このため,両者を離して布設することが望ましい(図 3.13 ①[Separation of control cables from power cables]の検証)。さらには,この事例では使ってい ないケーブルやコードが大量にトレイ内に布設されていたり,放置されていたりした。これら は,延焼を助長するので,撤去する必要がある(図3.13 ①[Removal of unused cables]の検証)。 (b) 逆にこの事例では,火災の発生をいち早く検知し,初期消火が適切に行われたことによ り,最小限の被害に止まったことが指摘できる。初期対応の重要性が指摘される(図 3.13 ② [Earlier detection of fire],②[Initial fire fighting]の検証)。
(c) こうしたケーブルの過熱に伴う火災は,保護が効かない事例も多い。この事例でも,発 火した部位にはスパークが発生していたとの証言があるが,電流がそれほど大きくなかったの か,配線用遮断器などは動作していない。また,当然,制御・通信ケーブルにはこうした保護 はないので,一度火がつくと消火活動をしない限り鎮火しない。本事例では,乱暴ではあるが,
スパーク発生個所をケーブルカッターで切断して,消火している。
(d) この火災の二週間後に,取水口ゲート室で火災が発生した。この時は,取水口ゲートの 非常用電源であるディーゼル発電装置,燃料タンク,電源制御盤が完全に焼損した。油火災に なったことから,火元の特定も困難なほどに損傷が酷く(多分,電源盤と考えたが)原因の特 定には至らなかった。また,この時は深夜だった上に,警備員しかいない場所だったので消火 活動は全くできなかった。仮に消防士が駆けつけても,火勢の強さと半地下構造から非常に消 火活動は危険と思われた。この事例は非常用電源設備の損傷だけだったので,ゲート操作は手
Unused cable bundle 220Vac power cable that goes to the server room
Not used / Ends found at relay room cable tray Wires for CT that goes to RBS–4 panel for Bay A breaker failure protection.
Control for MCB3B, MCB4B and MCB6B
Tray F
Tray D Not used / Ends found at relay room cable tray
Tray C Goes to control desk
Not used / Ends found at relay room cable tray
19 conductor control cable that goes to ABV panel for controlling breakers of AT14 and AT15 19 conductor control cable that goes to APS
Tray B
Terminated in a box in the relay room
Not Used / 220Vac power cable that goes to the server room
Tray A Tray E
1 cable with 2 conductors with 125Vac power supply from Inverter to RBS-2 panel of U2 4 cables with 3 conductors each with 24Vdc power supply from 24Vdc panel at relay room to IB panels of Units 1 & 2
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動として復旧工事の完了まで乗り切った。しかし,無人で遠隔にある発電所でも同様なことが 起きる可能性はあるので,消火設備のあり方を考えさせられた。やはり,重要な設備の場合は 少なくとも変圧器と発電機に自動消火装置の設置が望まれる(図3.13 ⑨[Provision of automatic fire extinguishers],図3.23 ⑰および図3.24 ⑪[Provision of generator fire extinguisher]の検証)。
(3) 回避策の具体化
本事例から,上記の回避策を具体化するには以下のようなことが求められる。
(a) 本事例では,動力ケーブルと制御・通信ケーブルが隔離されていなかった。また垂直方 向に多段に配置されたケーブルトレイ内に雑然と布設されていた。このように施工段階の低い 品質管理が問題となる。
(b) 劣化した動力ケーブルは長年,ほとんど保守管理されていなかった。また,配線用遮断 器などによる保護も機能していない。多分,過熱から絶縁体が燃えだしたようであるが,その 過熱の原因までは十分解明できなかった。このため,ケーブルの引き直しだけで対処した。
(c) この火災の後に,不要なケーブル(どこにも接続されておらず放置されたもの)は全て 撤去した。また,延焼防止として,全ての壁のケーブル貫通口を延焼防止材で塞いだ。
(d) 取水口ゲート室の火災については,原因や火元が特定できなかった。非常用電源は全て 新しくした。また,出入り口に鍵を掛けるように改めた。
(e) 水没事故を受けて,発電所内や取水口ゲートなどの要所要所に監視カメラを設置して,
異常を早期に発見できるようした。
4.4.2. 屋外開閉機器の火災
(1) 油入計器用変流器の火災
カラヤン揚水発電所の屋外開閉所は,発電機につながる機器は CBK が運転・保守するが,
230kV 送電線7 回線につながっている設備は送電会社(Transco)が運転・保守している。2006
年12月以降に,この開閉所に設置してある油入計器用変流器(CT)の爆発炎上トラブルが5件,
連続して発生した。これらの変流器は全部で12台あり全てが同一メーカ製である。いずれも油 入タイプなので爆発すると絶縁油が松明のように燃え,また変流器を保持する碍管が四散して周 囲の他の開閉所設備を傷つけた。当初は送電会社の CT だけが爆発炎上したため,CBK として もその原因究明には参加できなかったが,2008年12月,CBKが運転・保守するCT(所内変圧 器ST3用)も爆発事故を起こした(図4.75参照)。内部回路は全て焼損し,碍管も粉々に破損し たため,結局原因を特定することはできなかった。一応,碍管本体あるいは碍管と導体間に隙間
(クラック)が発生し,ここから雨水が浸入して碍管内部で水と油が置き換わり(油は漏れ出し たと推定),碍管内面で沿面放電をおこして内圧が上昇した結果,爆発したと推定した。この事 故を受けて,CBK所有のCTは全て更新した。