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第 9 章 主要投資インセンティブ

8. 通信

②携帯電話

固定電話の契約数が伸び悩む一方、2010年時点の人口100人あたりの携帯電話契約数は 76件(日本は95件)と、固定電話での同指標を大きく上回っている。特にジャカルタ周辺 地域では1人あたりの携帯電話保有台数が1.7台に達し、1人が複数台の携帯電話を所有す ることも珍しくない。このほか、カリマンタン、スマトラでは1人あたりの保有台数は0.7

~0.8台、スラウェシやパプア等の地方部でも0.5台に達している。特に固定電話の普及率 が 1 割程度に止まるスラウェシやパプア等の地方部では、携帯電話は非常に有用な通信手 段となっている。

携帯電話会社としては 2012 年2月時点で7社がサービスを展開している。Telkom系の Telkomsel、Indosat、XL-Axiataの上位3社で契約件数の9割を占めている。通話料金の一例 を挙げると、Telkomsel同士の場合は域内通話が1分あたり約650ルピア、他社携帯向けは 同750ルピアで、携帯電話での長距離通話になるとさらにそれぞれ2~5割ほど高くなる。

図表 19-21 インドネシアの主要携帯電話会社とその顧客数(2010 年)

会社名 顧客数

(千人) 構成比

(%)

Telkomsel 88,950 49.9

Indosat 39,100 21.9

XL-Axiata 32,924 18.5

SmartFren 5,406 3.0

Ceria 637 0.4

Axis 4,105 2.3

3 7,311 4.1

総計 178,433 100.0

(注) SmartFrenの顧客数は、合併前の各社の顧客数を合計したもの

(出所)情報通信省資料より作成

(2) 郵便・宅配

インドネシアの郵便事業者は、国営企業であるPT. Pos Indonesiaである。郵送対象は重量 上限が2kgの手紙(Surat)と、小包(Paket)の2種に分けられる。郵送サービスには普通

(Biasa)、速達(Kilat)、特別速達(Kilat Phusus)、書留速達(Kilat Tercatat)、エクスプレス

(Express)がある。このうち、普通郵便については配達の未着や遅延の問題が多い。

特別速達では地方の村まで配達できるが、書留速達は街の郵便局留めになる。エクスプ レスについては即日および翌日配達サービスがあり、配送状況の追跡も可能だが、配送対 象地域は国内主要都市に限られる。

日本向け等の国際郵送および配送サービスには、普通郵便のほかに速達郵便、国際エク スプレス・メール(EMS)、Fedex、DHL などが利用できる。到着までの日数に関しては、

日本への普通郵便物を送る場合、投函する郵便局によって5 日から 1 ヵ月まで大きく異な ることもあるようである。遅延や紛失を避けたい場合は、追跡可能で配達も速い EMS や

Fedex、DHLの利用が安全である。これらを利用する場合、ジャカルタやバタム等の主要都 市からであれば通常は2~4日ほどで日本に届く。

日本向けの文書郵送料金の概要は図表 19-22の通りである

図表 19-22 インドネシアから日本向けの文書の郵便料金 重量 普通郵便料金

(ルピア) EMS料金

(ドル)

~20g 7,000

~50g 12,500

~100g 20,500

~250g 42,500

~500g 67,500 14.2

~1,000g 122,500 19.6

~2,000g 182,500 35.8

11.3

(出所)Crown Media「ハローインドネシア」、PT. Pos Indonesia資料より作成

(3) インターネット

インドネシアのインターネット利用の特徴は、携帯電話からのインターネットへのアク セスの多さである。2009年時点でのインターネットプロバイダとの契約数が190万件程度 であったのに対し、同年のインターネットユーザー数が2,000万人に達していたことからも 窺える。このほか、Walnet と呼ばれるインターネットカフェが街中に点在し、インターネ ットの普及を後押ししている。

最近では、CATV、ADSL、光ファイバーなども広まり始めており、高速インターネット や無線LANが利用できるホテルやオフィス等も増加中である。しかし、マルクやパプアな どインドネシア東部ではダイヤルアップ接続がほとんどの地域もある。政府は2014年まで に全土を光ケーブルで接続する予定である。

主要な工業団地では既に光ケーブルが敷設されて高速インターネット環境が整っており、

複数のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を自由に選択できる。国内の主要 なISPとしては、Telkom、Indosat、BiZNET等があり、様々な回線速度およびそれに応じた 価格のプランが提供されている(図表 19-23)。

しかし、日系企業の場合のように国際通信、特に日本との通信が主となる場合、契約す るプロバイダが国際回線を独自に持っているかがデータ転送速度を決定的に左右する。こ れに関しては、既にNTTが日系のISPとしてインドネシアに進出済みであり、日本向けの 太い通信回線の保有を強みとしてサービスを展開中である。

図表 19-23 Telkomのインターネット・サービス料金 (2012 年 2 月時点)

プラン名 最大速度

(Mbps) 導入費用

(ルピア) 月額料金

(ルピア) 備考・制約

Paket Mail 1 75,000 1ヵ月15時間まで

Paket Chat 1 145,000 1ヵ月50時間まで

Paket Family 0.384 195,000

Paket Load 0.512 295,000

Paket Game 1 645,000

Paket Executive 2 995,000

Paket Biz 3 1,695,000

75,000

(出所)Telkom社ホームページより作成

9.「首都圏投資促進特別地域(MPA)」構想

(1) 概要

2010年10月に、東京で開催された日イ両国の閣僚級会議において、インドネシア国内の インフラおよび投資環境の整備のためのMetropolitan Priority Area(MPA)構想が打ち出され、

今後両国が共同で運営していくことが確認された。これは、インドネシア政府と日本の経 産省とが推進に合意した「インドネシア経済回廊(IEDC)構想」を含むインドネシア側の

「経済開発加速化・拡大マスタープラン(MP3EI)」を実現するための施策の一環である(章 末の解説を参照)。具体的には港湾、工業団地などのインフラ施設の整備のほか、投資関連 法やその運用の改善を目的としており、最初の対象地域としてはジャカルタ首都圏(ジャ ボデタベック地域)が選ばれた。このため、このMPA構想は「ジャボデタベックMPA」と も称される。

(2) 運営組織

MPA構想を進めるために、日本とインドネシア両国は頂点にMPA運営委員会を置き、両 国の閣僚級要人を議長に据えて、MPA 運営および進捗の管理や、必要となる各種調整等を 行うこととしている。その下にはインフラ関係実務者からなるMPA技術委員会と投資環境 関連実務者による投資促進ハイレベル協議が設置され、前者はハード面での整備計画の策 定や実施を、後者は投資関連規制や運用のありかたについて検討を行う。また、これらの 協議体では関連各省庁の出席者が一同に会するため、MPA 関連以外も含めた投資環境等の 問題を関係機関上層部に直接伝達する貴重な機会となっており、ここで提起された問題に 対してはインドネシア側の対応も早いとされる。

図表 19-24 MPA の運営組織構造の概略

構成員 両国の閣僚級要人を議長とした両国関係者

役割 MPAの構築及び運営管理の監 視、調整、及び促進

構成員 運営委員会を補佐するインフラ関係実務者 構成員 運営委員会を補佐する投資環境関係実務者

役割 ・MPAマスタープランの策定

・早期実施事業の実施 役割 投資関連の規制や運用のあり方を

議論する

MPA運営委員会

投資促進ハイレベル協議 MPA技術委員会

(出所)在インドネシア日本大使館資料等より作成

(3) MPA マスタープランの策定および早期実施案件の選定

MPA 構想で早期に実現されるべき案件(早期実施事業案件)の選定に加え、インフラ整 備の全体計画の策定、優先事業の決定、将来のジャカルタ首都圏の都市構想の策定などを 含めた MPAマスタープランの作成には、日本企業 11 社からなる調査団が携わっている。

マスタープランは2012年第2四半期までの完成を目指している。特に、早期実施案件の候 補はどれも現時点での容量の逼迫と将来への不安が指摘されているインフラを対象として おり、その整備がインドネシア政府にとって急務となっている。

図表 19-25 MPA の早期実施案件候補の一覧

案件種別 案件名

タンジュンプリオク港の改善・拡張 新国際港の整備

スマートグリッド事業を含むスマートコミュニティの構築 ジャカルタ東方地域の道路網の改善

ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)の南北、東西線の開発 首都圏通勤用鉄道の改善

道路網 首都圏の道路網改善

スカルノ・ハッタ国際空港へのアクセス鉄道の敷設 スカルノ・ハッタ国際空港の拡張

上下水道 首都圏への上水道供給事業

廃棄物処理システム 西ジャワ州廃棄物複合処理施設の建設 洪水管理システム 北ジャカルタのプルイット排水機場の改修

ジャワ・スマトラ連系送電線の敷設

西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電所の建設 バンテン石炭火力発電所の建設

ガス火力発電所及び浮動式貯蔵・積み出し設備の建設 西ジャワ州ラジャマンダラ水力発電所の建設 電力インフラ

国際港湾

ジャカルタ東方の工業団地群の 環境改善

大量輸送網

空港及び関連インフラ

(出所)在インドネシア日本大使館資料等より作成

(4) 今後の計画と見通し

各種資料によれば、MPA構想の今後の推進計画の大枠は図表 19-26の通りである。前出 の早期実施案件候補を含め、この計画に沿った各種の開発事業は、日本のインフラ関連企 業にとってのビジネスチャンスとして期待されている。

図表 19-26 MPA 構想の今後の推進計画概略

期限 予定

ジャボデタベックMPAのマスタープラン作成と関係者による承認の完了

ジャボデタベックMPAの早期実施事業の実現可能性調査と関係者による承認の完了 第3回MPA運営委員会の開催

2013年末 ジャボデタベックMPAの早期実施事業に着手 2020年末 ジャボデタベックMPAの各事業が運用開始

2012年 第2四半期

(出所)在インドネシア日本大使館資料より作成

(解説)インドネシア経済回廊(IEDC: Indonesia Economic Development Corridor)

インドネシア経済回廊とは、インドネシアの 6 つの主要な島・地域における経済回廊を 中心に産業の振興とインフラの整備を実施する構想である。2010 年に日本・インドネシア 両国政府がその推進に合意している。6つの回廊ごとに、地域に適した特定の重点産業の振 興を図り、官民一体となった PPP 方式での道路・港湾等のインフラ整備を進めるとされて いる。

図表 19-27 インドネシア経済回廊(IEDC)構想の各回廊とその重点産業の概要

①スマトラ

  パーム油、ゴム、石炭、鉄鋼、船舶等

②ジャワ

  通信、食品、繊維、運輸、船舶等 ③カリマンタン

  パーム油、石炭、石油・ガス、木材、鉄鋼等 ④スラウェシ

  農業、石油・ガス、水産業、鉱業等

⑤バリ-ヌサ・トゥンガラ   観光、食品等

⑥パプア-マルク諸島

  農業、石油・ガス、水産業、鉱業等

(出所)インドネシア運輸省資料、在インドネシア日本大使館資料より作成