1.管轄官庁
インドネシアにおける外資誘致の担当機関は、インドネシア共和国投資調整庁(BKPM:
Badan Koordinasi Penanaman Modal、英語ではIndonesia Investment Coordinating Board)であ る。同庁は1973年に大統領直轄機関として設立され、石油、ガス、金融を除いた分野での 投資案件の許認可権限を持っている。また、外資の便宜を図るため、外資進出にかかわる 様々な手続きを担当する政府機関の職員をBKPM事務所内に駐在させ、外資系企業の設立 手続きの受付窓口となるワンルーフ・サービスを提供している。
BKPMは、国内全33州の各地方政府傘下に地方投資調整事務所を持つ。海外にも7ヵ所
(東京、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、台北、アブダビ、シドニー)の事務所 を置いており、インドネシアへの投資に興味を持つ外国企業に対して投資手続きに関する 助言や投資申請書式の提供などを行っている。
2.最近の動き
インドネシアの外資導入の端緒は1967年の外国投資法(1967年法律第1号)である。外 国投資法は、外国資本による経営を認めてその資本を保護すること、輸入関税免除等の優 遇措置を認めること、利潤の海外送金や外国人技術者の雇用等について規定していた。1994 年には政令によって外資に対する規制が緩和され、外国資本100%による法人設立が認めら れた。
2007年に入ると、それまでの外国投資法および内国投資法(1968年法律第6号)に代わ って内外からの投資全体を包含する新投資法(2007 年法律第 25 号)が制定された。2012 年まで、この新投資法が外資誘致に関する基本法となっている。
新投資法による主な改正は、それまで問題とされることが多かった手続き面、インフラ 面、労務面などが中心である。また、新たに盛り込まれた主な内容として、外資企業と国 内企業との待遇格差の廃止、中央政府と地方政府の投資承認権限の分担、ワンルーフ・サ ービスや経済特区の概念の導入等が挙げられる。
図表 6-1 新投資法の主な改正点
(1)投資インセンティブ
①大量の雇用創出
②優先産業分野
③インフラ開発
④技術移転
⑤先端分野
⑥遠隔・未開発地域
⑦自然保護
⑧研究開発
⑨中小企業
⑩国産資本などの使用 土地利用
原則として政府による国有化や所有権没収など強制措置は採らない
入国管理
条件に応じて、恒久居住許可及び数次再入国許可を発行 輸入許可
インドネシアに拠点を設立するための財の輸入に関税免除等の恩典を供与
(2)関連政府機関の明確化 投資調整庁(BKPM)
大統領直轄の政策機関であり、長官は大統領が直接任命及び解任 投資政策の検討やワンルーフ・サービス等を担当・管轄
中央政府
州をまたいでの投資、他国政府との契約に基づく投資等の管轄 地方政府
中央政府から委譲された投資業務、法的権限を与えられた投資業務を管轄 経済特区
特区における投資政策決定権限は政府が保持 特区関連法規は別途制定
紛争調停
解決手段は合議、調停、裁判の3 段階
外国投資家と政府の紛争は国際調停機関を通じて解決
(3)その他 投資家の義務
インドネシア人労働者への訓練と技術移転
BKPM への報告、良好な内部管理や社会的責任の遂行等 投資地域周辺の文化・伝統の尊重
関連法規の遵守
税制面 新規・拡張投資について、以下に該当する場合に優遇恩典を供与
(注意)第22条に記載の土地利用許可の延長分も含めての一括供与は2008 年に違憲とされ無効となった。この結果、1960年の農業基本法の内容が現在 も有効である。詳細は第13章「用地取得」を参照。
(資料)新投資法(2007年法律第25号)
3.近年の主要な投資促進・優遇策
前述のような投資誘致政策を背景として、近年では内資や外資の別を問わず、投資促進・
優遇策が導入されている。優遇内容の詳細は、後述の第 9 章「主要投資インセンティブ」
を参照のこと。
(1) ワンルーフ・サービスの導入
ワンルーフ・サービスとは、投資に関連する各省庁の権限をBKPMに委譲させ、投資家 は必要な手続きを全てBKPMで行えるようにするというサービスである。主な例としては、
外国人雇用計画の許可申請(本来は労働・移住省が管轄)、輸入業者登録申請(本来は商業 省の管轄)などで、これらはBKPMの窓口でも申請が可能である。
また、バタム島にはバタムフリーゾーン監督庁(BIFZA)がある。BKPM事務所の他、入 国管理局、税関、労働局などが1ヵ所に集まっており、利便性が高い。
(2) 保税地域(Bonded Zone)と自由貿易地域(FTZ: Free Trade Zone)
保税地域とは輸出加工区のことで、保税地域内の企業に対しては製造設備や原材料等の 輸入関税、付加価値税等の諸税が免除される。保税地域には、工業団地内に存在するもの のほかに、工業団地外において企業が単独で保税認定を受けたものも存在する。しかし、
2011年の財務大臣令では、全ての保税地域は2016年末までに工業団地内に移設することが 義務付けられている。
自由貿易地域とは国が自ら指定して開発した保税地域のことで、制度上の扱いは通常の 保税地域と変わらない。現在、シンガポール対岸にあるバタム島、ビンタン島、カリムン 島が自由貿易地域の指定を受けており、日系を含む輸出向け製造企業が多数進出している。
(3) 指定業種、および政府指定の各地域の特定業種に対する優遇
製紙業、繊維業、石油精製業等政府の指定する優遇業種、および政府指定の地域におけ る特定業種に対して、法人税の減免や輸入の際にかかる諸税の免除、減価償却期間の短縮 等の優遇措置が与えられる。
(4) 経済特区(SEZ)
2009 年、インドネシア政府は経済特区法(2009年法律第 39 号)を制定した。経済特区 では、所得税の減税のほか、輸入時の諸税の免除、地方税の減免、その他土地や各種許認 可などの便宜が供与される。SEZの制度設計については2010年にJICA がその研究を受託 し、2012年6月末までの完了を目処に現在詳細を検討中である。政府としては主要各島に 1ヵ所ずつ、その島の産業特性に合致した SEZを計 5 ヵ所以上設立する方針であると報道 されている。
(5) 一時免税優遇措置(Tax Holiday)
2011年、インドネシア政府は、特定の条件を満たす新規投資については、5~10年間の免 税期間を与えるとした法令を発令した。特定の条件としては、再生エネルギーや通信技術、
機械、石油関連等の先進的産業分野への投資であることのほか、投資額が 1 兆ルピア以上 に達すること、2010年8月以降にインドネシアに設立された企業であること等を規定して いる。この適用条件が厳しすぎるとする声もあるが、既にクウェート石油公社や韓国のポ スコ、米国のキャタピラーなどの新規大型投資案件が適用を認められている。
BKPM(ジャカルタ)のワンルーフ・サービス窓口
BKPM(ジャカルタ)の汚職撲滅宣言