第 9 章 主要投資インセンティブ
5. 外国為替管理と外貨交換制度
日本を含む特定62ヵ国との輸入取引では、一般的な取引決済であるL/C(ユーザンスを 含む)、D/P、D/A、前払金、委託販売方式などが可能である。62 ヵ国以外の国との取引に ついては、前払金またはL/C(ユーザンスを含む)による決済が原則とされる。期限付き払 いのL/Cの場合、支払い留保期間は関係者の合意に基づく。
資本取引においては、外貨の持ち込み、持ち出しは、通貨、金額にかかわらず自由であ るが、非居住者との受払いおよび国内での外貨の受払いのうち 1 万ドル以上の場合は、中 央銀行への報告が必要である。
ルピア現金の海外への持ち出しおよび海外からの持ち込みについても自由であるが、1億 ルピア以上の場合、それぞれ中央銀行の許可、税関での真偽検査が必要である。
第16章 金融制度
1.金融機関(銀行)
インドネシアの金融機関(銀行)は、商業銀行(国営銀行、民間商業銀行、地方開発銀 行、外国銀行、合弁銀行)と地方銀行に大別される。両者の違いとして、地方銀行は営業 地域が限られる他、銀行の決済システムに直接アクセスできないという点がある。2011 年 10月時点、商業銀行は120行、地方銀行は1,837行ある。2011年末の貸出残高では、商業 銀行が全体の97.8%を占めるなど、商業銀行は規模の点で地方銀行を圧倒している。
商業銀行120行の内訳は、国営銀行4行、民間商業銀行65行、地方開発銀行26行、外 国銀行10行および合弁銀行15行となっている。2011年11月時点、商業銀行は総資産3,402 兆ルピア、貸出残高2,070兆ルピア、預金残高2,545兆ルピアとなっている(いずれもデー タ入手可能な114行ベース)。
図表 16-1 貸出残高における業態別銀行シェア
地方銀行(1,837), 外国銀行(10)および 2.2%
合弁銀行(15), 5.4%
地方開発銀行 (26), 9.3%
国営銀行 (4), 36.4%
民間商業銀行 (65), 46.7%
(注) カッコ内の数値は銀行数
(出所)Bank Indonesia資料より作成
(1) 中央銀行
インドネシア中央銀行(Bank Indonesia:BI)は、1945 年のインドネシア憲法に基づき、
政府から独立した組織として設立された。当初は金融(貨幣供給)、銀行、決済システムが 主な担当分野であった。ところが、アジア通貨危機に見舞われたことで1999年に新中央銀 行法が施行され、中央銀行の役目は通貨ルピアの価値安定となった。インドネシア・ルピ アは1970年から78年までの固定相場制、78年から97年までは管理フロート制を経て、ア ジア通貨危機に見舞われた97年8月以降は変動相場制に移行している。
その後、2004 年の中央銀行法の改訂ではガバナンスの強化を、世界的な金融危機に直面 した2008年の改訂では、国内の銀行の回復力を強化するために、中央銀行による短期資金 の供給等が規定されている。
現在、インドネシア中央銀行は、通貨の発行、外国為替管理、金融機関の監督業務等を 行うと同時に、公開市場操作や金利操作(政策金利の変更)、預金準備率操作の金融政策を 実施し、経済の安定成長が維持できるよう努めている。中でも、2005 年には金融政策のタ ーゲットとして、それまでの貨幣供給量(ベースマネー)からインフレ・ターゲットに変 更している。2012年および2013年のターゲットは、中心値4.5%に対してプラスマイナス 1.0%(3.5%~5.5%)。中央銀行は政策金利であるBIレートの他、オーバーナイト資金吸収 オペ金利であるFASBIレートを金利操作の手段として用いている。
図表 16-2 政策金利と消費者物価上昇率、コアインフレ率の推移
0%
2%
4%
6%
8%
10%
12%
07 08 09 10 11 12
(暦年)
FASBI rate BI rate CPI CPI (Core)
(注) コアインフレ率は、基準年の変更のため2008年6月~12月の間は算出できない
(出所)Bloomberg、国家統計局資料より作成
(2) 商業銀行
①新規参入と淘汰の歴史
1988 年、インドネシア政府は、競争環境の整備による効率的な資金配分の実現を目指す 金融改革を実施した。この規制緩和により、1968 年以降厳しく規制されていた銀行の新設 が解禁され、1989年初めに 106行だった銀行数は、アジア通貨危機前の1997 年7月には 237行に大幅に増えた(銀行数が最大だったのは、1995年10月の241行)。
しかし、競争の激化による収益性の低下とアジア通貨危機により不良債権が急増。政府 はIMFの支援を受けて金融制度改革を進めた。1998年1月には「金融制度再建プログラム」
を発表し、金融機関の再編(経営不振銀行の監視と資産管理を担当)を推進するインドネ シア銀行再建庁(IBRA)を設立した。IBRAは監視下に置いた54行の営業停止・合併(1998 年8月)、民間銀行への公的資金の注入(1999年3月)などの措置を講じ、2000年10月に 資本注入を完了した。IBRAは2004年2月に解散し、接収資産の譲渡は新設される譲渡専 門機関に移管された。またIBRA解散時の銀行数は138行と、アジア通貨危機前に比べてほ ぼ100行減少した。
②国営銀行
かつては1968年特別法に基づき政策金融機関として特定産業向け金融を担っていた。し かし、その後、業務としての実態は通常の商業銀行と差がなくなり、1992 年の新銀行法に より各設置法が廃止され、現在は通常の銀行と同じ業務を行っている。
③民間商業銀行
1988年10月の金融規制緩和以降、銀行数は63行から166行へと大幅に増加したが、ア ジア通貨危機後のIBRA主導の再編・淘汰で2005年には70行へと減少。現在は65行と規 制緩和前とほぼ同じ数に戻っている。有力企業グループの経理機能から発展したものが多 く、一部を除けば小規模な銀行が多い。
④地方開発銀行
ほぼすべての州に 1 行が設置され、地域経済の振興のための中小企業向け融資を主業務 としている。かつては長期金融専門機関と位置づけられていたが、1992 年の新銀行法によ って商業銀行に変更された。一般顧客からの預金も受け入れている。
⑤外国銀行支店・合弁銀行
1988年の規制緩和によって地場銀行との合弁銀行設立などが認められて急増した。
⑥総資産ランキングと邦銀の位置付け
2011年11月時点で、商業銀行の総資産、貸出残高、預金残高を比較すると、国営銀行4 行(PT. Bank Mandiri Persero:総資産1位、PT. Bank Rakyat Indonesia Persero:同2位、PT. Bank Negara Indonesia Persero Tbk:同4位、PT. Bank Tabungan Negara Persero:同10位)がいずれ も上位10行に入るなど、国営銀行の規模の大きさが際立っている。国営企業4行で全体の 36~37%を占めている。
邦銀では、三菱東京UFJ銀行(外国銀行)の総資産が全体の18位、みずほコーポレート 銀行(合弁銀行)が同 27 位、三井住友銀行(合弁銀行)が同 31 位、りそな銀行(合弁銀 行)が同48位に位置している。中でも、三菱東京UFJ銀行は外国銀行10行の中でもCitibank やHSBCに次ぐ規模となっている。
図表 16-3 商業銀行の主要勘定残高(2011 年 11 月末)
金額 順位 金額 順位 金額 順位
PT. Bank Mandiri Persero 国営銀行 465 1 267 2 356 1
PT. Bank Rakyat Indonesia Persero 国営銀行 406 2 281 1 322 2
PT. Bank Central Asia Tbk 民間商業銀行 369 3 187 3 313 3
PT. Bank Negara Indonesia Persero Tbk 国営銀行 267 4 158 4 205 4
PT. Bank CIMB Niaga Tbk 民間商業銀行 160 5 119 5 124 5
PT. Bank Danamon Indonesia Tbk 民間商業銀行 127 6 87 6 84 6
PT. Pan Indonesia Bank Tbk 民間商業銀行 112 7 68 7 82 7
PT. Bank Permata Tbk 民間商業銀行 97 8 64 8 74 8
PT. Bank International Indonesia Tbk 民間商業銀行 86 9 60 9 68 9
PT. Bank Tabungan Negara Persero 国営銀行 79 10 57 10 52 10
Citibank N.A 外国銀行 65 11 26 19 41 14
PT. Bank OCBC NISP Tbk 民間商業銀行 57 12 39 11 45 12
The Hongkong & Shanghai Bank 外国銀行 56 13 31 16 40 15
PT. BPD Jawa Barat dan Banten 地方開発銀行 55 14 27 18 40 17
PT. Bank Mega, Tbk 民間商業銀行 54 15 31 15 45 11
PT. Bank UOB Buana Tbk (*) 民間商業銀行 51 16 37 13 40 16
PT. Bank Bukopin 民間商業銀行 50 17 35 14 43 13
The Bank of Tokyo Mitsubitshi UFJ Ltd 外国銀行 50 18 38 12 18 25
Standard Chartered Bank 外国銀行 46 19 26 20 25 19
PT. Bank Tabungan Pensiunan Nasional 民間商業銀行 45 20 30 17 34 18
PT. Bank Mizuho Indonesia 合弁銀行 23 27 16 25 9 43
PT. Bank Sumitomo Mitsui Indonesia 合弁銀行 21 31 16 24 8 44
PT. Bank Resona Perdania 合弁銀行 10 48 7 44 5 51
銀行名 銀行区分 総資産 貸出残高 預金残高
(注) PT. Bank UOB Buana Tbkは2011年9月末。金額はすべて兆ルピア
(出所)Bank Indonesiaホームページより作成