第 9 章 主要投資インセンティブ
3. 日・インドネシア経済連携協定
第15章 貿易管理・為替管理
1.貿易管理の概要
インドネシアの貿易管理は、①工業省、②商業省、③財務省(関税総局)、④農業検疫庁 が管轄している。それぞれの役割は、①工業省では産業全般にかかわる大臣令の発令など を、②商業省では通商・貿易を含む大臣令の発令などを、③関税総局では関税業務一般や 物品税の免除・還付などを、④農業検疫庁では動植物・水産物の輸入に際しての検疫制度 を担当している。
輸出入の規制内容は国内および世界経済や産業の状況に応じてしばしば変更されるため、
常に最新法令を注視しておくことが肝心である。
(1) 輸入規制
①輸入地域規制
現状、輸入元として禁じられている地域・国は存在しない(国連によって貿易取引禁止 の制裁を受けている国からの輸入は、禁止されている)。
②輸入品目規制
輸入規制対象品目は、輸入禁止品目と輸入制限品目に分けられている。輸入禁止品目に は、危険・有毒原料廃棄物や中古車、古着などがある(詳細は図表 15-1 参照)。また制限 品目には小麦や米、カラーコピー機、自動車関連品など多品目があり、品目によって要求 内容は異なる。例えば、小麦であれば一般輸入業者免許の取得が必要であり、米やカラー コピー機であれば当局の輸入承認が必要である(図表 15-1)。なお、工業・商業大臣布告の 添付書類によると197品目が挙げられ、随時改正や改定が行われている。
図表 15-1 輸入禁止品目と輸入制限品目のリスト
輸入禁止品目 主な対象例
危険・有毒廃棄物 爆発性、可燃性、高反応性、毒性、伝染性、腐食性の うちいずれかの性質を有する廃棄物
布くず、繊維関連廃棄物 ひも、綱、ケーブル、紡織用繊維等のくず オゾン層破壊物質 ハロン、四塩化炭素など
バナメイエビ 生、冷凍とも輸入禁止
危険な魚類 フグ、ナマズ、ピラニア、デンキウナギなど30種
中古車 全面禁止
制限・要求内容の例 主な対象例
一般輸入業者免許の取得 小麦、小麦粉、大豆、粉乳、乳脂肪、チーズ、米粉、自動車等
当局の輸入承認の取得 米、水産物、家畜・家畜製品、アルコール飲料、食品 包装原料、生薬原料、化粧品、カラーコピー機、石 油・天然ガス等
輸入港の限定 エビ、アルコール飲料、オゾン層破壊物質、危険物質等 製造輸入業者または
登録輸入業者認定の取得
砂糖、家畜・家畜製品、アルコール飲料、繊維製品、
化粧品、カラーコピー機、鉄鋼、オゾン層破壊物質、
廃棄等
荷物検査の義務付け 米、危険物質等
(出所)JETRO資料より作成
③輸入業者登録
輸入業務を行う者は原則、輸入内容に応じて商業省など対応する政府関係機関に申請し て認可を受け、登録番号を取得する必要がある。以下、登録番号ごとに対象となる企業と 申請先機関について説明する。
(A)輸入業者認定番号(API)
一般の輸入業務を行う場合は一般輸入業者用登録番号(API-U)を、製造業者が原料を輸 入する場合は製造業者用の登録番号(API-P)を取得しなければならない。前者は商業省か ら、後者は投資手続き時に投資調整庁(BKPM)から取得できる。
(B)特別輸入業者登録番号(NPIK)
一部の繊維製品、電気製品、履物類、玩具等の輸入を行う場合には、APIのほかに特別輸 入業者登録番号(NPIK)も取得しなければならない。NPIKは、APIを保有する業者からの 申請により商業省が発行する。上記以外の政府が指定する特定品目の輸入に関しては、(a). 自己使用のための輸入の場合、製造輸入業者資格(IP)、または(b).他社への転売・譲渡 を目的として輸入を行う場合、登録輸入業者資格(IT)の認定を、商業省から受ける必要が ある。
(C)通関基本番号(NIK)
輸入業者は財務省関税総局に登録し、通関基本番号(NIK)を取得しなければならない。
輸入業者認定番号(API)と通関基本番号(NIK)の両方を取得した業者のみ、輸入を行う ことができる。
④インドネシア国家規格の遵守義務
インドネシア国家規格(SNI: Standar Nasional Indonesia)の遵守が義務付けられた製品に ついては、輸入業者が SNI 証明(SPPT-SNI)を取得することが義務付けられる。この証明 は、国家認証委員会の認めた製品認証機関による試験・検査のうえ発行される。SNI取得義 務の対象となる主な品目は図表 15-2の通り。
図表 15-2 インドネシア国家規格(SNI)遵守の対象となる品目 SNI基準遵守の対象品目
・タイヤ (輸入車に取り付けたものは例外)
・自動車用ガラス
・セメント
・鉄鋼製品
・二輪車用ヘルメット
・食用小麦粉
・一次電池
・ガラスシート
・ライター
・水ポンプ
・電気アイロン
・オーディオビデオ
・冷延鋼板
・鋼材
・建設用鉄線
・ワイヤーロープ
・ケーブル
(出所)関税総局ホームページ等より作成
(2) 輸出規制
①輸出地域規制
輸入の場合と同様に、国連から貿易禁止の制裁を受けている国への輸出は禁止されてい る。しかし現状、輸出先として禁じられている地域・国は存在しない。
②輸出品目規制
基本的には自由に輸出を行えるものの、一部に輸出規制対象品目があり輸出禁止品目と 輸出制限品目に分けられている。輸出禁止品目には、SIR(インドネシア標準ゴム)規格外 の天然ゴムや文化財など 7 品目がある(詳細は図表 15-3 参照)。また制限品目には、コー ヒーや石油・ガス、採掘品など多品目があり、品目によって要求内容は異なる。例えば、
コーヒーであれば登録輸出業者認定の取得が必要であり、石油・ガスであれば商業省の輸 出承認が必要である。
③輸出許可
輸出業務に際しては、これまでは事業活動許可(SIUP)を保有していれば行うことがで きたが、2011年3月より、輸入の場合と同様に通関基本番号(NIK)の取得が義務付けられ た。
図表 15-3 輸出禁止品目と輸出制限品目の例
輸出禁止品目 主な対象例
水産物の一部 アロワナ、8cm以下のザリガニ等
林産物 ラタン(原木及び半製品)、丸太材、枕木等 鉱物資源 海砂、表土、錫鉱石、宝石類、
ゴム インドネシア規格(SIR)外の天然ゴム 動物製品 爬虫類皮の製品
工業製品 鉄屑等 文化財類
制限・要求内容の例 主な対象例
登録輸出業者としての 認定の取得
コーヒー、一部の木材・木材製品(ベニヤ板、合板、木製家具 等)、薬品原料となる一部の化学物質(塩酸、アセトン、ジエチ ルエーテル等)、錫塊、ダイヤモンド原石等
当局の輸出承認の取得 一部の魚類、一部の家畜・家畜加工品、米、パーム核、石油・ガ ス、貴金属鉱石、銀、金粉、尿素肥料、鉄鋼屑、アルミ屑等
船積み前検査の義務付け 米、採掘品類(岩塩、大理石、石灰、石綿、各種金属鉱石等)、
錫塊、一部の木材・木材製品(合板、ドアや窓枠等)
(出所)商業大臣令より作成
④インドネシア国家規格(SNI)遵守義務
輸出されるインドネシア技術明細付き天然ゴム(SIR)には、該当するインドネシア国家 規格(SNI)に従うことが義務付けられている。加えて、そのSIRは商業省発行の製造者認 証(TPP)を有する天然ゴム製造業者が供給したものでなくてはならない。
⑤輸出のための原産地証明の発行
国際協定や貿易協定等に基づいた、特定の国への輸出にあたっての関税減免措置を利用 するために、原産地証明の発行が必要となる場合がある。原産地証明は、州・県・市等の 地方政府が発行する。申請には、証明書発行申請書に加えて、関税局査閲済の物品輸出通 知書、輸出許可証、船荷証券(B/L)、航空貨物運送状(AWB)、輸出荷物の明細等を添付す る。紙媒体での提出のほか、電子メールやCD等の電子媒体での提出、WEB上の記入によ る提出も可能である。申請が受理されれば、審査の上、翌日には原産地証明書が発行され るか、もしくは申請拒否の通知が届く。
⑥輸出標準価格
輸出価格安定のため、パーム油ほかパーム関連品目、木材類、カカオ豆等の輸出には輸 出標準価格が設定されており、輸出にあたって売値の事前審査を受ける必要がある。輸出 標準価格は定期的に商業省令により発表される。