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第 9 章 主要投資インセンティブ

9. 地方税

地方税は州税と県・市税に分けられる。

州税としては自動車税、自動車名義変更税、自動車燃料税、表層水税、タバコ税の 5 つ があり、各州が独自にその税率を決定する。なお、タバコ税の規定は2014年から発効され るため、2013年末までは課税されない。

県・市税にはホテル税、レストラン税、広告税、駐車場税などのほか、国税から移管中 の地方および都市土地建物税と、国税から移管済の土地建物権利取得税の計11種がある。

うち、地方および都市土地建物税に関しては、先述のように地方政府が該当条例を制定し ない限りは旧法規定が2013年末まで有効である。土地建物権利取得税については、ジャカ ルタの例ではNJOPまたは土地取得額の高い方を課税基準として、非課税控除額を差し引い た後に5%の税が課される。なお、課税基準に対する控除額や税率については地方政府が独 自に決定するため、各地方政府に確認を要する。

10.日イ租税条約

インドネシアは、日本と二重課税の回避、脱税の防止のために、1982 年に日イ租税条約 を締結している。この条約の対象となっている租税は、日本側の課す所得税と法人税、イ ンドネシア側の課す法人所得税、個人所得税、および利子・配当・使用料に対する税であ る。条約ではこれらの税についてどのような場合にどちらの国が課税するかを定めている。

また、この条約では、①インドネシア側で課税された税額は日本で納付すべき法人税額か ら控除される、という二重課税排除規定のほかにも、②日本企業がインドネシア企業から 配当を得る場合や貸付や預金の利子を得る場合は軽減税率(各 10%。ただし、議決権比率 が25%未満の法人からの配当所得の場合は15%。本則はいずれも20%)が適用されること、

③インドネシアでの勤務に対する給与所得であっても一定の条件下では日本側に課税権が あること、などを規定している。

11.税務上の問題点と留意点

インドネシアへの投資に関して、インフラの問題と並んで常に主要な問題に挙げられる のが法運用の恣意性・不透明性である。中でも、税法の運用はその代表例である。インド ネシアでは各税目に関してはそれぞれに法律が存在し、その細則となる政令および関連大 臣令が発布されている。しかし、法律の記載が曖昧な部分も多く、現地進出企業の中には、

税務当局の裁量で運用されていると指摘する声もある。以下に、現地進出企業が直面する4 つの主要な税務問題の概要を紹介する。

(1) 移転価格税制

インドネシアでは、2009年から2010年にかけて、移転価格に係る税務調査により追徴課 税を受ける企業が続出した。原因は、移転価格ガイドラインが未整備のうちに税務調査が 行われたため、税務署側と企業側との間の見解の不一致が解消されていなかったことによ る。この結果、企業によっては数百億円規模の追徴課税を受けた例もある。

2010 年、国税局からガイドラインが公表され、移転価格算出のための手法や、移転価格 決定過程および根拠等の文書化の義務が明記された。このガイドラインに基づいて各社が 対応を進めた結果、問題発生は徐々に減少している模様である。

(2) 税務調査

インドネシアでは、税の還付請求が法律の記載に従ってあった場合、通常は必ず税務調 査が入る。インドネシアの税金納付は前年実績に基づく予納制度を採用しており、例えば 前年比で利益(課税所得)が減少すると年度末に還付請求することになり、それに伴って 税務調査を受けることになる。企業によっては何年も連続で税務調査を受けることがある。

近年は、かつてのような税務調査官による不透明なコストの要求は減少してきたとの声 があるものの、税務調査自体が長期化する例も多く、それに対する準備と対応は現地企業 側にとって大きな負担となっている。税務調査官によって事例の解釈が異なることもしば しばであり、前回まで問題なかった処理が新たに問題となることもある。

また、申告に対する税務署側の否認理由も不明確であることが少なくない。回答期限を

定めた膨大な質問状と確認要求を送りつけられ、結局時間切れとなって納税せざるを得な くなるケースも報告されている。税務調査に伴う資料の要求が税務署からあった場合は、

その要求から 1 ヵ月以内に当該資料を提出する必要があり、期限までに提出できなかった 書類は、以後の係争にあたって考慮されないことが法律で規定されている。

(3) 困難な税還付

会計年度末に法人税や付加価値税の過払いが判明して還付申請を行った場合、通常は必 ず税務調査が入る。そして、税務調査の長期化は勿論、結果として税務署から却って追徴 を受けることになる例も珍しくない。

インドネシア政府は近年になって、一定の条件を満たす「低リスク納税者」の資格を定 め、その資格保有法人に対しては付加価値税の暫定還付を認める制度を打ち出した。しか しこれも暫定還付に過ぎず、後日の調査で追徴となる可能性は消えないため、実際にこの 暫定還付制度の利用例は多くないとの声がある。

(4) 税務裁判

追徴課税等の措置に不服な場合は、国税当局に対して異議申し立てを行うことができる。

その異議申し立てに対する決定に不服な場合は、さらに租税裁判所に提訴が可能である。

現在では、移転価格問題での追徴額の大きさから税務裁判に訴える企業も増えつつある。

しかし、税務裁判の実態として、①勝訴実績のある論法で同様な裁判を起こしても、再度 勝訴できるとは限らない、②税務裁判には、裁判に至るまでの前段階にも年単位の時間が かかる、等の現実がある。

これらの税務問題に対する現地企業の対応例は、以下の通りである。

①税務についてはコンサルタント会社と協力して対応する

②税務および税務裁判での恣意的な法運用については、現地の日本人商工会(JJC:ジャ カルタ・ジャパン・クラブ)や大使館を通じてインドネシア側に改善を要望する

③還付申請すると税務調査が入るので、十分な説明資料の準備が必要である。

しかし、日本企業および日本側で可能な対応は限られている。インドネシア側による改善 努力も行われ、状況は徐々に改善されてはいるものの、企業側の要望に応じるには相応の 時間が必要となるだろう。

第13章 用地取得

1.土地利用の概要

インドネシアの土地法制は、土地の自由保有権という概念を認めていない。その代わり に、土地に関する多様な権利が様々な名称のもとに細かく定められている。土地に関する 権利には、所有権、事業者権、建設権、利用権、区分所有権、開発権などがある。農地基

本法(1960 年法律第 5 号)では国有森林地域以外でのさまざまな土地利用権を認めてい

る。一方、国有森林地域に対しては林業基本法(1967 年法律第 5 号)が適用される。イ ンドネシアにおける土地所有権は、インドネシア国民およびインドネシア政府により指定 された法人にのみ認められている。外国人投資家にとって重要な権利として、国内投資家 と同様に事業者権(HGU:Hak Guna Usaha)、建設権(HGB:Hak Guna Bangunan)、利用権

(HP:Hak Pakai)の3つがある。これら権利は特定の方法での土地の使用を認めるもので ある。その違いは、主に有効期間、利用の性格、抵当方法(資産または担保としての利用 に関する)、権利所有の証明方式の違いにある。インドネシアの土地法制は、慣習法(adat) と法令が交錯する複雑な分野であり、また土地の登記がなされておらず権利関係が不明確 な土地も多い。不動産に関する権利を取得する前には慎重な検討が必要である。