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第 9 章 主要投資インセンティブ

2. 輸送機器産業

②二輪車産業の市場シェア

2011 年の二輪車販売台数は801万台。インドネシアの販売台数は、中国、インドに次い で多い。市場シェアでは日系4社が上位を独占し、全体の99%以上を占めている。中でも、

ホンダ(53.3%)とヤマハ(39.1%)の 2 社が、スズキ(6.2%)やカワサキ(1.2%)を大 きく引き離している。

図表 21-6 二輪車販売のシェア(2011 年)

ホンダ53.3%

ヤマハ39.1%

スズキ6.2%

カワサキ1.2% その他 0.2%

二輪販売台数 801万台

(2011年)

(出所)PT Astra資料より作成

(2) 自動車産業

①自動車産業の歴史

インドネシアの自動車産業では、二輪車産業と同様に、かつては国産化政策が採られて いた。1993年以前は、「ローカルコンポーネントとペナルティによる規制」があり、インド ネシア製でなければならないと指定された部品を輸入した場合には、50%のペナルティが 課されていた。また、1994 年に「ローカルコンテントとインセンティブによる規制」が発 令され、国産化率が高いほど輸入関税が下がるという方式が採られるようになった。しか し、これらはいずれも国内産業を保護する内容であり、自動車産業の自由化は、二輪車産 業に比べれば遅れをとっていた。

1998 年のアジア通貨危機の影響を受け、インドネシア政府は自動車産業もそれまでの国 内産業保護政策から自由化に方向を転換し、国内の産業保護は完成車輸入関税、CKD 輸入 関税、部品輸入関税によってのみ残されることとなった。1999年7月、インドネシア政府 は長期的に効率的、かつ国際競争力のある自動車産業を育成することを目標に、新自動車 政策を導入した。インセンティブ制度を廃止し、国産化率を問わず、カテゴリー・排気量・

部品供給形態別に部品(HSコード)毎に輸入税率を設定する制度に移行した。

アジア通貨危機に見舞われた1998年の自動車販売台数は5.8万台だったが、2004年には 48.3万台とそれまでの過去最高だった1997年(38.7万台)を上回り、2011年には89.4万台 にまで増加している。

図表 21-7 自動車販売台数の推移

26.1

17.0 21.1 32.2

37.9 32.6 38.7

9.4

29.8 30.0 31.8 35.4

48.3 53.4

31.9 43.4

60.8

76.5 89.4

48.6

5.8 0

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

(暦年)

(万台)

アジア通貨危機の影響

燃料費高騰の影響 2008年秋のリーマンショックの影響

(出所)PT. Astra International資料より作成

②自動車産業の市場シェア

2011年の自動車販売台数は89.4万台。同年にはタイが洪水に見舞われたこともあり、イ ンドネシアがタイを抜いてASEAN諸国で最大の自動車販売国となった。

市場シェアでは日系6社が上位を占め、全体の85%近くを占めている。最もシェアが高 いのがトヨタ(34.8%)。次いでダイハツ(15.6%)、三菱自動車(15.0%)、スズキ(10.6%)、

ホンダ(5.1%)、いすゞ(3.2%)の順となっている。

図表 21-8 自動車販売台数のシェア(2011 年)

トヨタ34.8%

ダイハツ15.6%

15.0%三菱 その他15.7%

いすゞ3.2%

ホンダ5.1%

スズキ10.6%

自動車販売台数 89.4万台

(2011年)

(出所)PT. Astra International資料より作成

③インドネシアの自動車ラインナップの特徴

インドネシアの自動車販売の内、乗用車(セダン、多目的[MPV:Multi Purpose Vehicle]、 スポーツ用[SUV:Sport Utility Vehicle])の占める比率は約7割。乗用車比率はマレーシアや フィリピン(ともに約 9 割)に比べて低いが、インドネシアの特徴は、多目的(MPV)の 構成比が高いことにある。参考までに、マレーシアの場合はセダンやハッチバックが、フ ィリピンの場合はこれに加えてSUVが多い。タイは、乗用車比率が3割程度と低い。

2004年と 2011年とを比較すると、構成比はセダン(▲5.5%)やトラック(▲3.9%)が 低下する一方で、MPV(+7.6%)が上昇している。特に、排気量が1,500cc未満のクラスが 販売台数の半分を占めるに至っている(30.5%→50.6%)。

小型MPVの販売が多いのは、当該車種に係る奢侈税(Sales Tax on Luxury Goods)が低い

ことの影響が大きい。2011年の1,500ccのMPVに対する奢侈税が10%であるのに対し、同 クラスのセダンでは30%。また、同じMPVでも、1,500cc超2,500cc以下では20%、3,000cc 以下では40%、3,000cc超では75%と、排気量が大きいほど税率も高くなっている。

また、都市部を除けば道路の舗装状況が芳しくないことや、週末の買い物にお手伝いさ んも含めて出かけることのあるインドネシア人のライフスタイルに、7~8人乗りのMPVが 合致していることも、小型MPVの好調な売れ行きを支えている。

図表 21-9 車種別販売台数と構成比の変化

2004 2011 2004 2011

全体 483.1 894.2 9.2% (100.0%) (100.0%) (+0.0%)

乗用車 312.9 600.7 9.8% (64.8%) (67.2%) (+2.4%)

セダン 40.5 25.7 -6.3% (8.4%) (2.9%) (-5.5%)

- 1,500 cc 27.3 14.2 -8.9% (5.7%) (1.6%) (-4.1%)

1,500 - 3,000 cc 12.9 11.0 -2.2% (2.7%) (1.2%) (-1.4%)

3,000 cc - 0.3 0.5 7.8% (0.1%) (0.1%) (-0.0%)

多目的(MPV) 271.1 569.4 11.2% (56.1%) (63.7%) (+7.6%) - 1,500 cc 147.5 452.7 17.4% (30.5%) (50.6%) (+20.1%) 1,500 - 2,500 cc 122.3 113.3 -1.1% (25.3%) (12.7%) (-12.6%) 2,500 - 3,000 cc 1.3 3.5 14.8% (0.3%) (0.4%) (+0.1%) スポーツ用(SUV) 1.2 5.5 23.8% (0.3%) (0.6%) (+0.4%)

1,500 - 3,000 cc 1.1 3.8 19.2% (0.2%) (0.4%) (+0.2%)

3,000 cc - 0.1 1.7 46.6% (0.0%) (0.2%) (+0.2%)

商用車 170.3 293.1 8.1% (35.2%) (32.8%) (-2.5%)

バス 1.4 3.9 15.2% (0.3%) (0.4%) (+0.1%)

トラック 164.7 270.2 7.3% (34.1%) (30.2%) (-3.9%)

ダブル・キャビン 4.1 19.1 24.4% (0.9%) (2.1%) (+1.3%) 増加率年率

販売台数(1,000台)

(変化幅) (構成比)

(出所)Association of Indonesian Automotive Industriesより作成

(3) 今後の展望

2010 年時点、インドネシアでの二輪車の普及率(登録台数÷人口)は 25.7%、乗用車の 普及率(同)は3.7%である。過去の経験則でみると、二輪車では、1人あたりGDPが1,500 ドルを超えるあたり、乗用車では同3,000ドルから5,000ドルの範囲に達した頃に、普及が 加速する傾向にある。実際、インドネシアでは1人あたりGDPが1,000ドルを超えた頃か ら二輪車の普及が加速している。

一方、二輪車から乗用車への普及のシフトについては、傾向が分かれる。例えば、タイ のように、二輪車の普及率は25%に達した2002~2003年をピークに一巡し、以降は乗用車 へのシフトが進んでいる国もあれば、マレーシアのように二輪車と乗用車との両方で、同 時に普及が加速している国もある。

図表 21-10 所得水準と二輪車普及率

0%

4%

8%

12%

16%

20%

24%

28%

32%

100 1,000 10,000

1人あたりGDP(ドル)

(二輪車普及率)

中国

インドネシア フィリピン マレーシア タイ ベトナム

1人あたり所得:

1,500ドルライン

(出所)IMF、各種資料より作成

インドネシアの1人あたりGDPは、ほぼ3,000ドルの水準にある(2,974ドル)。所得水 準では、同国は二輪車の普及加速期にあり、今後は乗用車の普及が進む局面にある。同国 の場合、タイのように二輪車から乗用車へのシフトが進むか、マレーシアのように双方同 時での普及進展になるかを予想することは難しいが、①バイクローン等の金融商品が普及 して、個人にとって二輪車がより買いやすい環境になっていること、②小型MPVの売れ筋 の価格帯が 120~150 万円と、まだ同国の平均的な所得水準からみて高額であることから、

ここ2~3年は乗用車の普及スピード以上に、二輪車の普及が一層進むものと予想される。

図表 21-11 所得水準と乗用車普及率

0%

5%

10%

15%

20%

25%

100 1,000 10,000 100,000

1人あたりGDP(ドル)

(乗用車普及率)

日本 タイ 韓国 マレーシア フィリピン インドネシア 中国

3,000 5,000 72

77

89 92

05

10

1010 67

02

(出所)IMF、各種資料より作成

(4) 日系企業の動き

2004年から2011年にかけて、自動車販売台数は年率 9.2%のペースで伸びており、また 小型MPVのクラスに限れば同17.4%と市場が急速に拡大している。このようなインドネシ ア市場の成長を受けて、日系企業の完成車メーカーの多くは、設備投資による生産能力の 拡張を発表している。

図表 21-12では、2011年以降にインドネシア市場への新規進出や生産能力拡張を発表し た日系自動車および部品メーカーを表している。これによると、完成車メーカーでは、シ ェア1位のトヨタ自動車、2位のダイハツ工業に加え、同4位のスズキ、同6位のいすゞ自 動車が新工場建設を発表している。また、ヨロズ、タチエス、玉野化成といった自動車部 品メーカーも完成車メーカーの能力引き上げに伴い、インドネシアでの新工場の建設を決 めた企業も少なくない。

インドネシア進出に際して、足下の課題となっているのが工業用地の確保である。日系 の完成車メーカーは、首都ジャカルタから東部の高速道路沿いの工業団地に入居している が、近隣の工業団地は不足している。

図表 21-12 2011 年以降の主な日系自動車・自動車部品メーカーの動き

発表日 会社名 内容

2011年2月 ダイハツ工業 約200億円を投じ、西ジャワ州カラワンに新工場を建設する。生産能力は年間10万台。稼動時期は2012年末 の予定

2011年7月 日産自動車 250億円を投資し、2013年までに車両工場の生産能力を18万台に増強するとともに、エンジン組立工場を新 設すると発表

2011年9月 トヨタ自動車 263億円を投じ、既存のカラワン工場の隣に第2工場を建設する。2013年に年間生産能力を現在の約6割増に あたる18万台に高める計画

三菱自動車 東南アジア5ヵ国の販売台数を2015年度に10年度比2.4倍の36万台に増やす目標を発表。インドネシアでは 小型多目的スポーツ車(SUV)「RVR」の現地生産を検討

2011年11月 ヨロズ サスペンション部品大手の同社は、約60億円を投じ、新工場を建設する。2013年の稼動を予定 いすゞ自動車 約300億円を投資して新工場を建設し、生産を倍増(3万台以上)する。2014年を目処にエンジンなど中核

部品を含めた一貫生産工場を稼動する

日野自動車 既存工場の生産能力を5割高める。2012年半ばをめどに、生産能力を現在の3.4万台から約5割増の5万台ま で高める。増産は小型トラック中心

ダイハツ工業 主力の小型乗用車「セニア」を全面改良し、販売を始めた。全面改良は2004年1月の発売以来、約8年ぶり タチエス 自動車用シート大手の同社は、20億円程度を投資し、新工場を建設。2013年の稼動開始を目指す。フル操

業は15年度を予定し、年間15万台分のシートを製造する予定

ホンダ インドネシアで2013年に導入予定の新排出ガス規制を先取りし、2013年末までに環境性能に優れた電子制 御燃料噴射装置を同国生産の全二輪車に搭載する計画を発表

2011年12月 玉野化成 自動車用ウォッシャーノズル大手の同社は、約7億円を投じて建設した新工場を2012年前半に稼動させる。

当面は月30万個のウォッシャーノズルを生産し、将来は生産量を3倍に引き上げる

ヤマハ発動機 2015年12月期をめどに、新興国での二輪車販売台数を1,000万台に増やす。インドネシアでは現在(313万 台)から100万台増やす計画。

2012年1月 スズキ 約300億円程度を投資し、エンジン新工場を建設する。これにより、生産能力を現在の3倍の年15万基に増 やす。

三菱自動車 小型SUV『アウトランダースポーツ』(日本名:RVR)の現地生産・販売を開始すると発表。

(注) シャドーは完成車メーカーによる新工場建設のニュース

(出所)会社ホームページ、各種資料より作成