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第五章 漢語系形容動詞の習得2:母語転移の可能性

5.6 調査の手順と方法

5.6.1 調査対象者

調査対象者は中国の西安外国語大学に在籍する学部生 102 名(漢民族)である。なお、国 籍は全員中国で、学年別内訳は 4 年生 53 名、3 年生 49 名、年齢層は 20~23 歳である。1 年生と 2 年生については、調査を行った時点で習得している漢語系形容動詞の数が非常に 限られていたため、調査の対象にはしなかった。

事前に語学力レベルの判定は行わなかったが、使用教材(『新編日本語』中級、上級)か ら学習者の言語習熟度を推測すると、3 年生は難易度が旧日本語能力試験 2 級と同じレベ ルと思われる。一方、4 年生は難易度が旧日本語能力試験 1 級と同じレベルと推測される 教材を使用していた。実際、49 名の 3 年生全員が旧日本語能力試験 2 級を、また、53 名の 4 年生のうち 44 名が旧日本語能力試験 1 級に合格し、残りの 9 名は全員 2 級に合格してい る。以上のことから、本研究は 3 年生を中級、4 年生を上級と見なした。被験者のレベル 分けの具体的内訳は表 5.9 のようになる。

[表 5.9:被験者の語学力レベル分けの内訳]

被験者 教科書 日本語能力レベル 本研究 3 年生 『新編日本語』中級 2 級合格:49 名 中級 4 年生 『新編日本語』上級 1 級合格:44 名

2 級合格:9 名

上級

5.6.2 調査対象となる修飾語

形容動詞の習得に関わる調査にあたっては、旧日本語能力試験(1~4 級)の語彙表で扱 われている形容動詞と抽象名詞の修飾語を用いた。また、正答と誤答を明確に判別するた め、本研究では、正答が連体修飾の際は必ず形容動詞に対応する「な」となるように、修 飾語と被修飾語を連体形として「な」をとるもののみを採用した。一方、正答が連体修飾 の際は必ず抽象名詞に対応する「の」となるように、修飾語と被修飾語を連体形として「の」

をとるもののみを採用した。この条件をもとに、旧日本語能力試験(1~4 級)の語彙表か ら漢語系形容動詞と抽象名詞それぞれ 20 個が選ばれた。表 5.10 は調査対象となる連体修 飾語のリストであり、形容動詞(連体形「な」のみ適用可能)と抽象名詞(連体形「の」のみ 適用可能)を挙げている。また、これらの語彙に対応する中国語での品詞性は『現代中国語

辞典』(1982)による分類を基準にして示している。表 5.11 は調査対象となる修飾語の難易 度語数を示したものである。

[表 5.11:調査対象となる語彙難易度の内訳

レベル 1 級 2 級 3 級 4 級

語彙数 11 24 2 3

(注:1~4 級は旧日本語能力試験の出題基準による難易度である。)

5.6.3 調査票

調査票は全 2 ページで、内容は同じであるが、出題の順番の違いによって、5 つのバー ジョンがある。構成は以下の通りである。(付録十、十一参照)

p.1 学習背景に関する質問 p.2 連体形の選択テスト

学習背景に関する質問では、被験者の年齢、民族、旧日本語能力試験の合否及び合格級 を聞いた。今回の調査では被験者に対して、連体修飾句に修飾語と被修飾語の間にどの連 体形を入れるかを質問した。回答方法は被験者にとって、最も適切である連体形を○で囲 む方法をとった。

なお、今回の調査では、連体形「な」か「の」一つしか正答になれないが、学習者によ る連体形「な」と「の」の混用の有無を考察するため、「な・の」両方の適用という選択肢 も設定している。

[表 5.10:調査対象となる修飾語]

日本語:形容動詞 中国語:形容詞(20 個) 日本語:抽象名詞 中国語:形容詞(20 個)

豪華、 大胆、純粋、巧妙、 旺盛、 濃厚、

奇妙、 豊富、円滑、猛烈、 有名、 強烈、

有効、 貧弱、貴重、率直、 柔軟、 簡潔、

勤勉、 親切

永遠、初級、 唯一、 基本、 個別、 無色、

原始、万能、 匿名、 絶好、 合理、 未婚、

慢性、最新、 一流、 公共、 未知、 無名、

無償、 一般

5.6.4 手続き

調査は被験者をクラス別に集め、授業中に行った。所要時間は 15 分間であった。まず、

筆者が自己紹介、調査の目的を述べる一方、授業担当の教師は調査の流れを説明した。ま た、被験者に心理上の負担をかけないように、今回の調査は成績と関係がないことを伝え た。さらに、5 つのバージョンの調査票をランダムに配布した。被験者は挙げられた例を 理解した上で、連体修飾句の連体形選択テストを始めた。

約 15 分後、全員終了してから、調査票が回収された。調査に関する説明は事前にすべて 中国語に訳したプリントを作成した。プリントに記載されていない補足説明及び被験者か らの質問などはそのたびに答えた。

5.6.5 分析方法

以上の方法で実施した調査の結果は 2 要因分散分析の手法(中級・上級学習者×形容動 詞・名詞)で分析された。分析の観点は形容動詞と抽象名詞の連体修飾句とし、中・上級 の学習者の誤答数の平均値から、形容動詞及び抽象名詞の連体修飾句の習得を考察する。

そして、品詞別に誤用要因の可能性を分析する。