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第五章 漢語系形容動詞の習得2:母語転移の可能性

5.7 結果と分析

5.6.4 手続き

調査は被験者をクラス別に集め、授業中に行った。所要時間は 15 分間であった。まず、

筆者が自己紹介、調査の目的を述べる一方、授業担当の教師は調査の流れを説明した。ま た、被験者に心理上の負担をかけないように、今回の調査は成績と関係がないことを伝え た。さらに、5 つのバージョンの調査票をランダムに配布した。被験者は挙げられた例を 理解した上で、連体修飾句の連体形選択テストを始めた。

約 15 分後、全員終了してから、調査票が回収された。調査に関する説明は事前にすべて 中国語に訳したプリントを作成した。プリントに記載されていない補足説明及び被験者か らの質問などはそのたびに答えた。

5.6.5 分析方法

以上の方法で実施した調査の結果は 2 要因分散分析の手法(中級・上級学習者×形容動 詞・名詞)で分析された。分析の観点は形容動詞と抽象名詞の連体修飾句とし、中・上級 の学習者の誤答数の平均値から、形容動詞及び抽象名詞の連体修飾句の習得を考察する。

そして、品詞別に誤用要因の可能性を分析する。

表 5.12 から、形容動詞の連体修飾語の習得に関しては、中・上級学習者の誤答数の平 均値に有意差は見られなかった。一方、名詞の連体修飾語の習得に関しては、中級学習者 の誤答数の平均値が上級学習者の誤答数の平均より有意に高かった(F (1,100)=8.16, p< .01)。つまり、学習者の日本語能力の向上に従い、名詞の連体修飾語の習得が進んで いるように見えるが、その変化は形容動詞の連体修飾語の習得には見られなかった。その ため、形容動詞の連体修飾語の習得の場合、学習者は上級になっても誤用が依然として多 く残る可能性が高いと考えられる。

5.7.2 品詞別の誤答数の平均値

本節では、中・上級学習者を対象にした形容動詞と名詞の連体修飾語における各選択肢 の誤答数の平均値の有意差を測定する。

5.7.2.1 形容動詞の連体修飾句における誤用

まず、形容動詞の連体修飾句に対する誤答数を被験者の日本語能力レベル別人数で割り、

平均点を算出した。形容動詞の連体修飾句については、連体形「な」を選択すべきところ に、「の」や「な・の」を選択した場合を誤答とした。中・上級学習者の形容動詞の連体修 飾句における連体形「の」、「な・の」の誤答数の平均値を示すと表 5.13 になる。

[表 5.12:形容動詞と抽象名詞の連体修飾句における誤答数の平均値及び標準偏差]

中級学習者(n:49) 上級学習者 (n:53)

条件 誤用例 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 形容動詞 簡単の方法/柔軟な・の態度 5.45 3.03 5.51 3.08 名詞 永遠な愛/唯一な・の要求 8.04 4.97 3.45 1.57 (注:誤答数の総和は 20 点であり、下線の部分は誤用である。)

前節では、形容動詞の連体修飾句における連体形の選択について、学習者の日本語能力 のレベルの相違では、誤答数の平均値に有意差が見られないことを見た。しかし、表 5.13 によれば、選択肢の種類による誤答数の平均値については、「の」の誤用が「な・の」の混 用より有意に高く見られた(p < .001)。

つまり、「~な」形容動詞の連体修飾句における連体形の選択に、中級学習者と上級学 習者に誤答平均点の有意差は見られなかったが、一方で、選択肢の種類(「の」、「な・の」) による誤答平均点の有意差は明らかに高かったということである。

5.7.2.2 抽象名詞の連体修飾句における誤用

本節では、中・上級学習者を対象にした抽象名詞の連体修飾句における各選択肢(「な」、

「な・の」)の誤答数の平均値の有意差を考察する。

まず、抽象名詞の連体修飾句に対する誤答数を被験者の日本語能力レベル別人数で割り、

平均点を算出した。抽象名詞の連体修飾句に、「の」を選択すべきところに、「の」や「な・

の」を選択した場合を誤答とした。中・上級学習者の抽象名詞の連体修飾句における連体 形「な」、「な・の」の誤答数の平均値を示すと表 5.14 になる。

[表 5.13:形容動詞の連体修飾句における誤答数の平均値]

中級学習者(n:49) 上級学習者 (n:53) 条件 誤用例 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差

「の」 豪華のホテル 4.61 2.99 4.28 2.73

「な・の」旺盛な・の好奇心 1.57 0.84 1.86 1.23 (注:誤答数の総和は 20 点である)

その結果、抽象名詞の連体修飾句における連体形「な」の選択による誤用においては、

中級学習者の誤答数の平均値は上級学習者のそれよりも有意に高いことが明らかとなった (F (1,100)=10.172, p < .005)。また、「な」の誤用は、「な・の」の混用よりも有意に 高いことも分かる(F (1,100)=110.63, p < .001)。さらに、2 要因(被験者の日本語能 力レベルと選択肢の種類)による交互作用に有意差を検出した (F (1,100)=15.7, p

< .001)。つまり、学習者の日本語能力レベルが上がるにつれ、抽象名詞の連体修飾句に おける連体形「な」の選択による誤答数が有意に少なくなる傾向が見られた。