第四章 漢語系形容動詞の習得1:習得順序の解明
4.2 形容動詞の習得順序に関する調査
4.2.2 調査の手順と方法
4.2.2.2 調査対象となる形容動詞
調査対象となる形容動詞は表 3.8 から抽出したものであり、その難易度の内訳は旧日本 語能力試験(1~4 級)を基準とした。これを表 4.4 に示す。
[表 4.4:調査対象となる語彙難易度の内訳
レベル 1 級 2 級 3 級 4 級
語彙数 12 23 3 2
(注:1~4 級は旧日本語能力試験の出題基準による難易度である。)
また、表 4.5 に示すように、40 個の形容動詞を、それらの典型性によって、第三章にお ける表 3.8 の分類方法をもとに 4 つの段階に 10 個ずつに分けた上で、格助詞「を」との共 起判別テスト、連体形「な」及び「の」の文法性判断テストをそれぞれ 40 問作成した(付 録八、九参照)。テストに関わる具体的な例は表 4.6 を参照されたい。
[表 4.5:調査対象となる形容動詞]
典型性の段階分け 語 彙 (40 語)
一段階 1. 立派 2.大切 3.柔軟 4.急激 5.顕著 6.深刻 7.単純 8.厳重 9.強引 10.呑気 二段階 11.曖昧 12.広大 13.巨大 14.容易 15.微妙 16.粗末 17.巧妙 18.重大 19.対等 20.重要 三段階 21.安泰 22.清潔 23.健康 24.危険 25.単調 26.幸福 27.幸運 28.安全 29.好調 30.公平 四段階 31.不利 32.不幸 33.不便 34.孤独 35. 無礼 36.本気 37.無事 38.無知 39.平凡 40.詳細
[表 4.6:テストの種類とその内容]
因みに、「十分」・「当然」・「僅か」など形容動詞以外に副詞としても使える語、「贅沢」・
「勤勉」・「反対」など「スル」の後接によって動詞になれる語、「種々」、「ばらばら」、「散々」
などの畳語は今回の調査から除外された。
4.2.2.3 調査票
今回の調査では被験者に、調査対象となる形容動詞における、格助詞及び連体形「な」、
「の」との共起の文法性の正否を質問した。回答方法は被験者にとって正しい表現を「○」、
間違った表現を「×」で判断してもらうことにした。なお、調査票表紙には被験者の情報、
国籍、年齢、性別、日本語能力レベル、民族、日本での滞在暦などを記入する欄を設けた(付 録五参照)。
テスト 典型性
格助詞「を」との 共起判別
連体形「な」の 適性判断
連体形「の」の 適性判断
一段階
立派をする 大切を扱う など(10 問)
立派な業績 大切な書類 など(10 問)
立派の業績 大切の書類 など(10 問)
二段階
粗末を扱う 重要を感じる
など(10 問)
粗末な食事 重要な地域 など(10 問)
粗末の食事 重要の地域 など(10 問)
三段階
公平を期する 健康を維持する
など(10 問)
公平な裁判 健康な体 など(10 問)
公平の裁判 健康の体 など(10 問)
四段階
詳細を見る 本気を出す など(10 問)
詳細な内容 本気な人 など(10 問)
詳細の内容 本気の人 など(10 問)
4.2.2.4 手続き
調査結果の客観性を求め、被験者に一旦書いた答えの正誤を改めてチェックさせないよ うに、今回の調査問題はパワーポイント(PPT)形式で出題した。問題ごとに 7 秒間提示し、
その後スライドが自動的に転換し、次の問題に進むように設定した。テスト 1 は調査対象 となる形容動詞と格助詞「を」の共起の文法性を判断する問題(40 問)である。例えば、「大 切をする」(×)、「幸福を祈る」(○)などの問題である。そして、テスト 2 は調査対象とな る形容動詞の連体修飾句の文法性判断問題であり、連体形「な」と「の」による表現をそ れぞれ 40 問、出題順序をランダムにした上で作成した。例えば、「立派な業績」(○)、「立 派の業績」(×)などの問題である。
調査①では、被験者をマルチメディア教室に集め、授業中に行った。調査の流れは図 4.1 のように、まず、筆者が自己紹介、調査の目的を述べた後、授業担当の教師が調査の流れ を説明した。また、被験者に心理上の負担をかけないように、今回の調査は成績と関係が ないと伝えた。さらに、調査票を配布し、被験者は挙げられた例を理解した上で、文法性 判断テストを始めた。約 25 分後、すべてのテストが終了した後、解答用紙を回収した。
[図 4.1:調査の流れ]
調査に関する説明は事前に全部中国語に訳したプリントを作成した。プリントに記載さ れていない補足説明及び被験者からの質問などはそのたびに答えた。
一方、調査②は日本の九州で行った。調査対象者の留学生たちを全員同日に集めること は難しく、それぞれの都合に合わせて、毎回少人数(1~3 人)で調査した。調査方法と手順 は1回目の調査と同じく、パワーポイント形式で、問題ごとに 7 秒間の提示があった。自 己紹介の後、アンケート調査について説明した。そして、例文で練習した上で、スライド に提示している表現の適切性を尋ねた。
筆者 の 自 己 紹 介 調査 目 的 の 説 明
調査 の 流 れ 説 明
調査 用 紙 の 配 布
二十 五 分 の 回 答
調 査 票 の 回 収
4.2.2.5 分析方法
以上の方法で実施した調査の結果は一元配置分散分析により統計処理をした。格助詞と の共起、連体形「な」と「の」の文法性判断テストにおいて、形容動詞の典型性を基準に、
一段階から四段階まで学習者の正答数の平均値から、形容動詞の習得順序を分析する。