第七章 結 論
7.3 日本語教育への示唆
最後に、本研究で明らかにした結果から、日本語教育の現場にどのように貢献できるか について述べる。
まず、本研究の結果は、これまであまり注目されなかった形容動詞の導入の仕方に、次 のような指針を提供することができる。日本語学習者に形容動詞の習得を指導する際には、
形容動詞カテゴリーに備わる典型性と習得順序の関連性、すなわち、学習者はその母語の 如何を問わず、典型的な形容動詞から非典型的な形容動詞という順序で習得するというこ とを認識した上で、学習者には、まず、典型的な形容動詞を十分にインプットし、その後、
名詞と共有する統語的特徴を加えた上で、学習者自らが非典型的な形容動詞を自然に導き 出せるような効果的な指導法を確立すべきである。
また、学習者には、形容動詞カテゴリーに属する語彙メンバーの典型性の変化による統 語的特徴の区別を段階的に強調する必要もあろう。具体的には、本研究の「一、二」段階
に属する語彙メンバーは形容動詞性が強いため、形容動詞としての用法を中心に教えると よいだろう。それに対して、「三、四」段階に属する語彙メンバーは形容動詞性よりも名詞 性が強いことを強調した上で、名詞としての用法を中心に教えるべきである。また、「二、
三」段階の語彙メンバーは形容動詞から名詞への中間的な存在であるため、形容動詞の用 法以外に名詞としての用法も例示する必要があるであろう。
次に、本研究の結果は、特に、中国語を母語とする日本語学習者に対する形容動詞の教 授方法に一定の指針を与えることができる。上でも見たように、中国語を母語とする日本 語学習者は漢語系形容動詞を習得する際に、特に、日中同形語からの影響を強く受ける。
とりわけ、当該形容動詞が中国語と同形であり、かつ、その品詞性にズレがある場合、学 習者は当該形容動詞をそれと正しく判断することができない。日本語教師はそのような語 彙に対しては、日本語での品詞性、すなわち、それが形容動詞であることを強調する必要 があるだろう。また、当該形容動詞と対応する中国語の間に品詞性のズレがなくても、日 中同形語である形容動詞を扱う際には、連体形「の」の誤用、連体形「な・の」の混用及 び連体形の脱落といった母語の干渉による誤用の可能性を常に意識しながら、指導を行う べきである。
最後に、すでに繰り返し述べたように、中国語を母語とする日本語学習者、また、日本 語教師は、連体形「な」の使用が形容動詞の最も顕著な特徴であることに注目しているが、
品詞上の形容動詞と名詞との関連性はそれほど意識していない。しかし、これまで見てき たように、日本語の形容動詞カテゴリーは抽象名詞カテゴリーと深い繋がりを持っている ことから、形容動詞の指導では、形容動詞カテゴリーと抽象名詞カテゴリーとの関連性、
また、そこから生じがちな誤用についての説明と用例の提示が不可欠である。
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