行動経済学1: なぜ肝炎と分かっても検査を受
「プロスペクト理論」とは、リスクへの態度に関する人々の意 思決定の特徴を示したもので、2つの特徴(確実性効果と損失回 避)から成り立っています。私たちは80%や90%等の比較的高 い確率のも の を主観的にはより低く感じやすい一方で10%や 20%という比較的低い確率をより高く感じやすいです。このよ うに確率を認識している状況で、私たちは意思決定を行ってい るのですが、その際に確実なものとわずかに不確実なものでは、
確実なものを好むという特徴があり、これを「確実性効果」と言 います。「損失回避」とは利得と損失が同じ程度でも利得よりも 損失の程度を大きく感じるという特徴です。この2つの特徴か ら、私たちは自分にとって利得がある状況では利得を確実に得 られる行動を取りますが、反対に自分にとって損失が出る状況 では損失を少しでも避ける行動を取ります。
下の図をご参照ください。
では、今回のやり取りでは一体何が起こっているのか確認しま しょう。
肝Co:肝炎ウイルスの感染を調べるために血液検査を受けてくだ さいね。
患者さん:大丈夫でしょ。今健康だし。万が一検査を受けて治療に なったら副作用も怖い…
肝Co:あなたのためを思って言っているのですが…何かあってから では遅いんですよ。
患者さん:うーん、まぁ心配してくれるのは分かるけど(笑)
患者さんは肝炎ウイルス検査を受けてその結果次第では、現 在の生活が失われるという損失が発生すると思い、受検しない ことを選択したと考えられます。
「プロスペクト理論 」の知識を用いて肝炎ウイルス検査を 受検してもらえるようになるか?
患者さんが「今健康だし。万が一検査を受けて治療になった ら副作用も怖い」と言っていることから、受検することで現在の 生活が失われる可能性への不安があることが理解できます。つ まり受検に利得が なく損失になっている状況です。このことか ら次の2点をやり取りに反映させます。
(1) 肝炎ウイルス検査の受検が損失に繋がらず利得があると いう情報。
(2) 肝炎ウイルス検査を受検しないことが損失に繋がるとい う情報。
この2点を意識して変えてみた事例のやり取りを紹介します ので参照ください。
肝Co:肝炎ウイルスの感染を調べるために血液検査を受けてくだ さいね。
患者さん:大丈夫でしょ。今健康だし。万が一検査を受けて治療に なったら副作用も怖い…
肝Co:確かに今は健康であるかもしれませんね。しかし、肝炎ウイ ルス検査を受けずにいてウイルスがいるか分からずにいると、
知らない間に肝炎が進行してご飯を食べられなくなったり、
死に至ることも少なくないんですよ。
患者さん:けど…中々検査や治療を受けるのにも時間がかかるし副 作用も怖いんだけど…お金もかかるだろうし。
肝Co:そちらに関しても説明しますね。肝炎ウイルス検査は普段の 健康診断でも受けられているような血液検査ですので実施 時間は5分かからないくらいですね。また普段の健康診断 の“ついで”に、そして無料で受けることができますよ。もし 治療を受けることになっても新しいお薬は副作用がほとん どないんです。気になる治療費に関しても医療費助成制度 を利用すれば、自己負担額は1万円または2万円で済みます。
また、C型肝炎では抗ウイルス治療を受けることで95%以 上の可能性でウイルスを排除することでき、肝炎の進行を防 ぐことができます!!
受検しないことによる損失の具体的説明
受検による損失の低さの提示
受検による利得の高さの提示