第 4 章 課題解決のプロセスの詳細 9
4.3 担当課題解決過程の詳細
4.3.6 秋本森太郎
5月 課題発見のためのフィールドワーク、バスの提案 バス・市電の1日乗車券を利用し、函館 市内の従来の公共交通に乗車し、そこで発見した疑問点・問題点をまとめ、報告した。バス の経由地がわかり辛いこと、市電よりバスのほうが速度が速いこと、にもかかわらず市電の ほうが利用客が多いこと、バス・市電の時刻案内が五稜郭タワーなど、主要な施設の目立つ 場所になかったことなどが挙げられた。
また、バスについての新たな提案を考えていった。結果、五稜郭付近にバスターミナルを設 置し、五稜郭バスターミナルを中心とした路線系統設定を行う、という提案を行った。具体 的には、函館の住宅地である地域、具体的には美原や昭和、花園と行った地区から五稜郭バ スターミナルへ、そこからさらに再び前述の地域へと直通する便を運行する。これによっ て、現在活気が落ち始めていると思われる五稜郭付近への人の往来を増加させることを期待 した。さらに、同バスターミナルにスーパーマーケットのような日常品中心とした商業施設 を設ける。また、五稜郭バスターミナルから美原などへ戻る際には、五稜郭バスターミナル に予約端末を用意し、デマンドバスの形式で運行することとした。帰り便のみデマンドとす る理由は、買い物を行った後では当然荷物が増え、それを持ち運びするのは困難ではない か、という点、また、デマンドバスにおいて問題となる定時性の確保については、帰宅時に 定時性は重要とされないのではないか、ということを踏まえて提案した。これらは、函館市 役所および函館国際水産・海洋都市推進機構の方々への発表を行った。しかし、調査不足で あり、函館市側でも五稜郭周辺にバスターミナルを設ける計画は結果としてあったものの、
それに関する資料を調べきることが出来ず、連携することが出来なかった。
6月 新たな公共交通の提案、名刺制作 グループ編成を変更し、新たな公共交通の提案班へと移 動した。新たな公共交通班としてHORS∠OPEの提案を行った。まず、5月時点での新た な公共交通提案班の提案であった函館山の裏側へモノレールを通し、それと同時に函館山の 裏側を開発し、新たな観光地化する、という案の実証のための函館山の裏側の調査、フィー ルドワークを行った。その結果、昔、函館山の裏側には2つの集落があり、それら2つとも が過去に廃集落と化しているということ、またフィールドワークにより、観光地化するほど の平地が確保しづらいこと、それらの少ない平地においても函館山の岩盤が高さ推定50m
によって立ち入り禁止となっており、よってその平地内での安全を確保することが出来ない ということ、また、それを押し切って開業するとしても、函館山の上まで行かないのであれ ば前記の岩盤へトンネルを建設しなければならない、もしくは海上を通すことになり、工事 費と採算がかみ合わないことなどからこの提案を廃するに至った。その後、私が主導となっ て函館駅前にて荷物の多い観光客向けの少人数超短距離輸送を考案した。具体的には函館駅 前、函館バス待合所、函館市電函館駅前駅、函館駅周辺のホテルといった函館駅周辺に絞っ た地域にそれぞれ誘導帯を用意し、その上を専用車が低速で移動する輸送機関である。人数 は少なく、また、荷物の多い観光客に配慮し、荷物を置けるスペースを確保した。しかし、
この提案に対して、この程度の距離であれば利用せず荷物を持って歩くとの意見が多く、そ れによってこの案も廃案となったが、このときに車両の移動システムは継続し、導入する地 域、場所を再検討することになった。少人数かつ低速という利点を活かせる場所を考えて いった結果、勾配がきつく、特に冬季には転倒などの危険が伴う西部地区が浮上した。よっ て、観光客が西部地区を観光するという設定において、少人数が坂を移動する際の負担をな くすべく、どのような乗り物にすれば利用してもらえるかを考えていった。結果、個人で呼 ぶことができ、地域内を走行する形で提案した。その後、車体デザインや盛り込むべき機 能、操作方法など、本体イメージの作成を行った。
個人では外部向けの名札、名刺制作も同時進行で行った。作成してもらったロゴとイメージ カラーを用い、下図の形になった。下図は名札用であり、名刺用は名前の右下に所属、連絡 先が付属する。
図4.33 名刺
7月 提案の詳細決定、スライド制作6月に引き続き、HORS∠OPEの詳細を決定していった。
範囲や運行システム、インタフェースなどを調査を交えつつ行った。私は主に運行パター ン、配車アルゴリズムについて考えていった。結果、西部地区十字街周辺に中心となるター ミナルを一箇所用意し、HORS∠OPEの車両を配置、その他西部地区内に車両数台の待 機場所を用意し、利用者からの呼び出しを受けた際には最寄のターミナルもしくは待機場所 から車両を配車、その際に待機場所に空きが出来た場合はターミナルからその待機場所へと 回送する形とし、また、利用終了後に車両は、ターミナルないしは待機場所へと回送する。
また、回送中に利用者が居た場合には、そちらに向かい、再び営業運転に入る、という形を とった。他に、HORS∠OPEの導入イメージイラストの製作も行った。
また、中間発表に向けたスライドの制作も行った。その際、主に言い回しや項目などを中心 に考えていった。
8月・9月 個人によるプロトタイプ考案中間発表での意見を受け、方針を切り替え、先にHORS
∠OPE本体をそのため、HORS∠OPEの細部をプロトタイピングによって作り上げ、出 来上がったものをどこにおけばよいかを考える形をとった。このとき私は、HORS∠OPE インタフェースの画面インタフェース、画面遷移図を制作した。プログラムによる実装は出 来なかったものの、実際に盛り込むべき要素、例として地図による選択、目的地名での検索、
入力による検索などをリストアップしていき、それを元にIllustratorを用いて操作画面の 遷移図を作成していった。同時に、車両移動時の目的地と自車の現在位置のアイコンの作成 なども行っている。
図4.34 画面遷移図
10月 グループでのプロトタイプ考案、制作1、2 10月にはグループを再編した上でプロトタイ プの考案、制作を行った。ここでは、HORS∠OPEの予約、接近告知システムの一部とし てウェブ上でのデザインを行った。私は、主に使用するボタン類の画像デザイン、及び一部 のhtml入力を行った。
図4.35 作成物
続いて、HORS∠OPEに搭載するカメラの操作イメージを制作した。javaを用い、キー ボード操作によってカメラ映像の一部を上下左右、もしくは拡大縮小をキーボード操作によ
HORS OPE
るという案があり、その操作を乗客が行うことが出来れば楽しいのではないか、という発想 をもとに行われた。また、この案において、表示された画面を保存する機能があるが、これ らは別の班が制作したものが既にあり、今回は割愛した。
11月 発表用モックアップ制作8月から10月のプロトタイピングによる結果を受け、近距離移 動用の乗り物から中遠距離での移動へと変更、また導入する地域を函館西部地域から函館郊 外地域へと変更した。これに伴い、用途が異なるため発表物の名称をLinksに変更した。そ の後、再びグループ再編を行い、最終発表に向けたモックアップ製作を開始した。まず私た
ちは、Linksの配車アルゴリズムの作成を行った。経路探索アルゴリズムを基盤にし、運行
する経路にかかるポイントを算出する。ここで言うポイントは、運行する経路の総距離に加 え、路面状況を含めた天候面全般、渋滞状況、道幅や車線数など、運行する際に障害となり うる要素にそれぞれ、車線幅3mならば100mにつき7点、積雪10cmなら100mにつき20 点といった具合に点数を割り振っておき、それらを足し合わせてポイントを算出する。上記 の例の区間が1km続く場合は、(20+7)*10=270である。なお、このときのポイントは、
より障害となりうる要素に高いポイントが割り振られるようにする。このようにしてルート ごとに算出された中で、最も値の小さな区間をLinksが選択して走行する。また、これに加
え、Linksの特徴である相乗りを実現するため、走行中に呼び出しを受けた場合の対応も考
えていった。例として、Aの呼び出しを受けた際にLinksの現在地からの距離がAよりも 近い場所に居るBに呼び出された場合に、Aまでの所要時間が予約から20分を超えない範 囲であればBを先に迎えに行き、その後Aへ向かい、2人を乗せて目的地へ向かうという 形をとる。これら2項目を基本にした詳細パターンを構築していった。その後、USBケー ブルを用いてコンピュータ上から操作できる車両ロボットを用意し、それを使用し配車アル ゴリズムの実演を行うため、Arduinoを用いてプログラミングを行った。具体的には、基本 となる前方への移動、左右旋回の動作を用意し、ユーザの指示後に経過時間による基本動作 の変更によって想定したルートを走らせられるようにした。これらの元となるプログラムの 作成は、ほぼ私個人で行った。元々の予定では携帯やスマートフォンのような端末からの操 作に連動して走行させることを考えていたが、端末側の進行具合との兼ね合いもあり、実際 に連動させて運行させるまでに至ることは出来なかった。また同じく、利用者の呼び出しを 示すようなランプの点灯、滅灯を行うことも考えていたが、それらの操作端末から乗車位置 までの配線が、車両ロボットに支障するなどの不具合もあり、最終的に断念した。11月末に は函館市役所への外部発表を行った。
12月 最終発表準備最終発表に向けた準備を行った。モックアップの走行を安定させたほか、経 由地それぞれに該当するマーカーを用意した。また、最終発表で使用するスライドの文面修 正や、掲載する図の作成なども行った。
(※文責:秋本森太郎)