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流量調節バルブの選択について

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 171-174)

治療法

3.  流量調節バルブの選択について

 近年、各種の流量調節バルブが使用される理由は、立位における オーバードレナージに対処するためです。従来は立位での静水圧差 がそのままサイフォン効果としてシャントを流す力となり、オー バードレナージをきたすと考えられていましたが、われわれの研究 から実際には図 2 に示すような関係で、シャント灌流圧、頭蓋内圧

(立位では陰圧になる)、腹腔内圧が静水圧と釣り合っていることが わかってきました。また静水圧差は身長に、腹腔内圧は肥満度に関 連しており、体格によってシャントの圧環境が変化することも明ら かになってきました。このような観点から、流量調節バルブの選択 の目安を述べてみます。

1) 小児:小児の脳は弾力性に富むため、生体側の適応範囲も広く、

オーバードレナージ(髄液の流れすぎ)による症状は発現しにくい ものです。しかし不適切なものを選択すると、中・長期的に脳室の

図2

狭小化(スリット脳室)や小頭症の原因ともなります。小児期は体 格が大きく変化する時期であり、それに応じて差圧を皮膚の上から 変更できる圧可変バルブが第一選択となるでしょう。また将来的に シャント抜去を考慮する際には、徐々に圧設定を上げていって身体 を慣らすという意味からも圧可変バルブが勧められます。

2) 成人:大きく体格が変化することはないので、基本的にはどの バルブを使用しても良いと思います。ただ、加齢とともに脳の弾力 性は失われていくため、生体側での適応範囲は狭まっていきます。

そのため、より厳密に患者個々に適切な設定のものを選択する必要 があります。

 以下、代表的な流量調節バルブについて特徴を述べてみます。

●オービス・シグマ・バルブ:

 患者の体位に応じて自動的に流量調節が行われるバルブですが、

基本的には、圧可変バルブの高圧設定よりも流れにくい設定となっ ています。

 設置部位による調節性の違いはありません。

●圧可変バルブ(コッドマン・ハキム圧可変バルブ、ソフィーバルブ) :

 手術後に無侵襲に設定圧を変更できるので使用しやすいという利 点があります。ただし、立位でのサイフォン効果を防止する働きは 備えていません。私たちは後述する設定方法で良好な結果を得てい ます。

 設置部位による調節性の違いはありません。

●デルタ・バルブ:

 膜型アンチサイフォン機構つきのバルブで、臥位(寝た状態)で はバルブにより流量が調節され、立位では膜型アンチ・サイフォン 機構が働いてオーバードレナージを予防します。差圧の異なる5種 類が用意されていますが、埋め込み後に圧設定の変更は行えませ ん。基本的に立位での流量が期待できない分を臥位で流す必要があ り、一般に低圧設定のものが選択されます。また膜型アンチ・サイ フォン機構は設置部位により調節性が大きく異なるため、患者個々 に設置部位を検討する必要があります。

●ストラータ・バルブ:

 デルタ・バルブのバルブ部分を 5 段階の可変にしたバルブです。

手術後に圧の変更ができるので、術前にバルブ選択で悩む必要があ りません。正常圧水頭症(特に特発性)に使用するためには、5段 階の設定圧をもう少し低圧サイドにずらすと、さらに良いものにな ると考えられます。

 デルタ・バルブ同様、患者個々に設置部位を検討する必要があり ます。

●デュアル・スイッチ・バルブ:

 臥位用・低圧と、立位用・高圧の2系統の圧設定機構を備えたユ ニークなバルブで、それぞれに低、中、高圧の3段階の設定が可能 ですので、合計9種類の組み合わせの圧設定が用意されています。

2系統とも差圧は高めの設定(立位:30, 40, 50cmH2O*、臥位:10,

* XXcmH2O という単位の「水柱圧」で表されるバルブの設定圧とは、バルブの抵抗 圧であり、それ以上の圧がかかると、髄液が流れる仕組みになっています。

13, 16cmH2O)であり、正常圧水頭症(特に特発性)に使用するた めには、もう少し低圧設定のものが必要と思われます。

 設置部位による調節性の違いはありません。

3) 高齢者:高齢者でも急性高圧性水頭症であれば、前述したどの バルブを使用しても良いと思われますが、問題になるのは特発性正 常圧水頭症の場合です。もともと髄液圧がさほど高くないため、

オービス・シグマ・バルブは流量不足が懸念されます。またデルタ・

バルブ、デュアル・スイッチ・バルブの中で最も低圧のバルブや、

ストラータ・バルブの最も低圧の設定であっても、症例によっては やや流量不足となる場合が考えられます。さらに高齢者の脳は弾力 性に乏しく適応範囲が狭いため、ごくわずかの設定の違いで合併症 が生じることがあります。

 このため 18 段階の細かな圧設定が可能なコッドマン・ハキム圧 可変バルブが最も使用しやすいと考えられます。ただし立位でのア ンチ・サイフォン効果はないため、後述するような設定の工夫が必 要と思われます。

  

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