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シャント抜去の可能性

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 79-84)

シャント手術の実際

L- P胸部前後 P胸部側面 (バルブなし)

5.  シャント抜去の可能性

  尿崩症   SIADH

・細菌感染症   髄膜炎

  MRSA VRE 抗生剤に抵抗性の細菌(多剤耐性菌)

・出血   術中出血

   大量出血 DIC 凝固障害 術中死   術後出血

   再手術

・創部離開 創部感染

・輸血による合併症

  致死的な合併症として AIDS(エイズ)や GVHD(移植片対宿 主病)がありますが、そもそもシャント手術において、輸血が行わ れることは稀です。

──この患者にはシャントが必要なくなった、と判断する機会が訪 れるのはどんな時でしょう?

「患者の成長に伴って、シャントのカテーテルが短くなる時に発見 することがあります。小さなお子さんの場合、最初、お腹側のカ テーテルは30〜40cm余分に入れておくんですが、身長が伸びると これが足りなくなってきますね。

 カテーテルが正しく入っている時は髄液は腹腔で吸収されます が、短くなって皮下組織に抜けてしまうと、吸収が十分でなくなる ので、髄液の流れが悪くなります。しかし、カテーテルが皮下組織 に抜けているのに、患者の脳室が拡大せず、何の症状も出ずに元気 でいれば、もうシャントは必要ないと判断するのです。

 一方、脳室のカテーテルが抜けてしまっていることもあるんで す。CTなどの検査で、カテーテルの先端が脳室の外に出ているの が見えるのに、患者に何の症状もない場合は、シャントを必要とし ないと判断します」

──そのほかの場合にも、すでにシャントが機能してないと発見す ることがありますか?

「シャントのどこかに閉塞がある場合ですね。カテーテルが屈曲し ていたり、離断しているのがレントゲンで見つかることがありま す。

 また、くも膜下出血、脳室内出血で水頭症になられた患者さんの 中に、時どき、髄液の吸収、通過が正常に戻っているのが見つかる ことがありますね」

──シャントが機能してないと分かったら、すぐに抜去してしまう のですか?

「〈シャント造影〉といって、バルブから造影剤を入れ、一定時間を

おいて撮影した写真を見て、造影剤が本当に流れていないか、つま りシャントの中を髄液が流れていないかどうかを確認します。流れ がなければ詰まっていると判断し、抜去手術をします。

 しかし、それでも予断を許しません。抜去してから1週間ぐらい は、意識の異常がないか、嘔吐はしないか、頭痛はないかなど、見 守る必要があります。当院でも、シャント抜去後3日後ぐらいに急 に意識が無くなり、急いでシャントをやり直したことがあります。

また、他院ではシャント抜去後に亡くなられた人もいると聞いてま す。これは推測ですが、髄液がカテーテルの内側ではなく周囲を流 れている場合があるんですね。ですから、シャントの中に髄液が流 れていないからといって、それが機能していないと早合点するのは 危険なのです」

──第三脳室底開窓術に変更するために、シャントを抜くこともあ りますか?

「中脳水道狭窄や脳室内膜形成等で水頭症になっていた患者さんの シャントが詰まった場合、髄液の吸収が正常であれば、シャントの 再建をせずに、第三脳室底開窓術に切り替えることがあります。た だし、あくまでも髄液の吸収が正常でなければ成功しません。先天 性水頭症の場合は適応になる人はきわめて稀です」

──シャントを抜く際の問題点は?

「腹部のほうですと、古くなればなるほどシャント・カテーテルは 石灰化し、皮下組織に癒着して抜去しにくくなります。時には何ヵ 所も皮膚切開が必要になることがありますし、カテーテルが一部、

身体に残ってしまうこともあります。

 脳室カテーテルの場合は、脳組織や、髄液を産生する脈絡叢組織 がカテーテル内に入り込んで抜けにくくなっていることがありま

す。無理をして引き抜けば脳室内出血、脳内出血を起こして、死亡 に至ることさえあります。

 最近は神経内視鏡を使用して、カテーテルと脳組織をテレビカメ ラを見ながら切断できるようになりましたので、以前よりは比較的 安全に抜去できるようになりました。

 もっとも、神経内視鏡は脳室が拡大している患者さんにしか使用 できません。脳室の正常化した患者さんには使えないんです。

 カテーテルが抜けない場合は、そのままにしておきます」

──抜去が成功した場合、その後はどんなケアが必要でしょうか?

「定期的にCTやMRIで検査して、脳室の変化の具合を観察して いきます。何カ月おきに検査するかは、病状によりますね。

 症状は出ないのに、知らないうちに脳室が大きくなっていて、再 びシャントを入れた例もあります。医師によっては、患者の脳室拡 大が非常に大きくなければ、様子をみる人もいます。当院では、

脳室カテーテル閉塞

白 黒 な の で 見 え に く い が 、 カ テーテルの先端に脈絡叢あるい は脳室壁の一部が絡みついてい る。

腹腔カテーテル長期体内留置 長期の留置のためカテーテルの周 囲に反応性に組織が沈着し、石灰 化が起こったもの(中に見えるのが カテーテル本体)。こうした場合、

カテーテルの抜去は困難となり、

数カ所を皮膚切開しないと抜けな いことがある。カテーテルがよく 動く頸部などで、組織が沈着する ことが多い。

シャントを抜去した後に、大脳における脳室の比率が全体の 50%

以上に大きくなれば、症状が無くても再びシャントをする必要があ ると考えています」

──積極的なシャント抜去へのトライについてはいかがでしょう か?

「最近よく『調子がよいのでシャントを抜去したい』という患児の ご両親がいらっしゃいます。しかし、シャントを入れて1年ぐらい で、しかもまだ年齢も1歳という、脳が非常に発達する時に抜去を することは、あまりお勧めできません。

 まず、シャントが不要かどうか検査をしなければなりません。仮 に可変式バルブが入っていたとしても、それが抜去を前提とした 60cmH2O という高圧の設定ができるバルブでなければ、検査のた めには、どうしても腹腔側のカテーテルを結紮しなければなりませ ん。しかし、実際にこの検査をしたために、腹腔カテーテルが細菌 感染し、その対処のためにドレナージを繰り返し、最後はバンコマ イシンですら効果のない細菌が繁殖して、当院に転院してきた患者 さんがいます。バンコマイシンは MRSA という菌に対する、最後 のとっておきの抗生物質で、これが効かない場合は死に至ることも あるのです。

 現実にシャント抜去のできる患児はそう多くはありません。した がって、トライするなら、まず十分に脳が発達してからのほうがよ いと考えますし、また、その際にはシャント感染の可能性があるこ と、最悪の場合は命の危険も招き得るということを、十分に考慮し て、選択するべきだと思います」

1. はじめに

 医療において体内の病変を調べる場合、さまざまな方法がありま すが、血液検査、レントゲン検査、また種々の造影検査などは、す べて病変部を直接見ているものではありません。

 CTやMRIでさえ、レントゲンの体の中を透過する割合の違いや、

体に磁気をかけた時の影響からの回復が組織によって違うことを利 用し、その相対的な値の数字を色の濃淡に置き換え、画像にしたも のですので、やはりこれも直接的な画像ではありません。それらは 手術や解剖で病変部を開いて直接見るものには到底かないません。

 内視鏡はありのままの病変部を、体を大きく開くことなく、直接 見ることができる唯一の方法で、これを利用した「内視鏡手術」は 内科、外科、整形外科、耳鼻咽喉科などの領域ではすでに一般化し ており、広く行われています。

 脳神経外科領域においても、非侵襲性 ・低侵襲性の要求から、内 視鏡手術(神経内視鏡手術)が普及しはじめてきました。特に、脳 室という脳脊髄液で満たされたスペースを観察するには、水を抜い て行う通常の開頭手術に比べ、むしろ水を流しながら、水がある状 態で水中を観察する内視鏡の方が、病変部をより、ありのままの姿 で見ることができるわけです。海底の風景を観察するにしても、海 水を干上がらせて海底であった部分を見るより、グラスボートやス キューバダイビングなどで水中を直接観察する方が、より自然な姿

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