神経内視鏡手術
4. 各種疾患に対する神経内視鏡手術 a 水頭症
水頭症の治療における神経内視鏡の役割としては、A. シャント 手術に代わるものと、B. シャント手術との併用、とがあります。
A. シャント手術に代わるもの
水頭症の原因、すなわち交通性か非交通性(閉塞性)かにより方 法が異なります。
まず、非交通性(閉塞性)水頭症の場合、脳脊髄液の流れがどこ で障害されているかによります。脳脊髄液の流れはほとんどは側 脳室→室間孔(モンロー孔)→第三脳室→中脳水道→第四脳室→正 中孔(マジャンディー孔)・外側孔(ルシュカ孔)→脳槽(大槽→
図6:日本の脳室ファイバースコープ
いずれも優れたファイバースコー プで、これを越えるファイバース コープは外国には存在しない。
脳底槽→くも膜下腔)→くも膜顆粒→静脈→心臓→大動脈→腎臓→
排出という経路を通っています。したがって、これらのうち、側脳 室から脳槽に至るうちのどこが詰まっているかによって、脳室開放 術は第三脳室底開窓術、中脳水道形成術、透明中隔開窓術、室間孔
(モンロー孔)形成術に分けられます。
交通性の場合は、脳脊髄液の産生の場である脈絡叢を内視鏡下に 処理(焼灼・切除)する「脈絡叢焼灼術」や「脈絡叢切除術」があ りますが、脈絡叢をすべて処理することはできず、効果も一時的で 不確実であることから実際に行われることは少ないようです。た だ、新生児期などでシャントを行う時期を遅らせることを目的とし て試みることはありますが、結局、手術を繰り返すことになります ので、その実施には議論の余地があります。
B. シャント手術との併用
シャント・カテーテルの抜去・設置、脳室内洗浄などがあります。
神経内視鏡により水頭症の原因検索としての脳室内の観察ができる うえに、脳室内の洗浄や隔壁の除去などができます。また、たとえ シャント手術が必要であっても、脳室カテーテルの確かな位置への 設置ができ、脳室穿刺のときに生じた小出血や組織の小片(脳室カ テーテルの閉塞の原因のひとつです)を同時に洗い流すことができ ます。こうした十分な洗浄は感染の予防に役立ちます。さらに、髄 膜炎がある場合でも神経内視鏡手術は行え、十分な脳室の洗浄は髄 膜炎の治療に役立ちます。
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脳室内腫瘍第三脳室というところは大脳の中心部の下部にあり、周囲は視神
経、視床下部、脳幹部という大切な働きをする場所に囲まれた部屋 です。従来、開頭でこの場所に到達する手術は技術的にも難しく、
手術の後に意識が戻らないこともあり、また、回復しても患者さん の体調が落ち着くまで何日もかかることもめずらしくありませんで した。神経内視鏡により、従来開頭術により大きな侵襲を要した脳 室内腫瘍に対し、安全かつ確実に生検が可能となりました。特に第 三脳室内腫瘍に対しては、熟練者が行う限り、その恩恵は大きく、
安全かつ直視下に組織が採取できるので、早期にその後の治療方針 を決定することもできます。
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くも膜嚢胞くも膜嚢胞に対する治療法は、主に開頭術による嚢胞の開窓・被 膜除去と、嚢胞−腹腔短絡術(シャント手術)が行われていますが、
前者では症状に比して、開頭という大きな侵襲があることのほか に、解放した嚢胞腔に生じる硬膜下出血が問題となりますし、後者 ではシャントという異物が体内に入ることや、シャント依存になり 得ることを考えれば、手術を受けるかどうかは慎重でなければなり ません。
したがって、これまでは症状のない症例に対しては保存的に経過 を見ることが少なくありませんでした。これに対し神経内視鏡手術 は、低侵襲的であるばかりでなく、髄液中という生理的状態で、直 視下にリアルタイムな観察ができ、しかもシャント・カテーテルと いう異物を残さないことから、最近行われるようになってきまし た。神経内視鏡を用いることで、開頭することなく、嚢胞内膜を開 窓し、嚢胞内容を正常髄液腔へ解放するのです。この方法は、若年 齢であるほど、術後に脳実質が回復しやすいといわれています。
内視鏡は欧米では硬性鏡を用いたという報告が多いのですが、こ の場合でも機動性に優れた脳室ファイバースコープが有用です。
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その他・下垂体腫瘍に対する経蝶形骨洞内視鏡手術
・脊髄疾患への応用(椎間板ヘルニア、脊髄空洞症、脊髄くも膜嚢 胞、脊髄終糸肥厚:脊髄係留症候群など)
・顕微鏡手術の死角を補う:観察目的(脳動脈瘤など)
・てんかんの焦点凝固焼灼
・多汗症 など