• 検索結果がありません。

斜視/斜位/偽斜視の違い

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 188-192)

水頭症と眼

II. 合併症

1.  斜視/斜位/偽斜視の違い

・斜視

 片眼は目標を見ているのに、もう片方の眼が目標からずれた眼位 をとっているものをいいます。交代性斜視は各眼が交互に使われる ので、視力も同程度に発達しますが、どちらかの片眼で固視してい る場合は、眼位ずれを起こしている方の眼に抑制が働いて、弱視に なることがあります。

・斜位

 視軸(*4)の潜在的な偏位傾向をもつもので、ふだんは眼位のず

* 1 虚血=血液循環が悪くなること

* 2 視交叉部=左右の視神経が頭蓋内で解剖学的に交叉する部分

* 3 逆行性神経接合部変性=神経を伝達する部分の障害から視覚中枢へと変性が進 行すること

れはないのに、片眼が覆われたり、融像(*5)が破られたりする時 に、固視していない方の眼の眼位ずれが起きるものをいいます。斜 位の程度が軽い場合は問題ありませんが、偏位が目立つと、見かけ 上の問題ばかりでなく、一過性の複視(*6)、頭痛、眼精疲労など の症状を訴えることがあります。

・偽斜視

 視軸は実は正常なのに、斜視と誤られやすい外観を呈するもので す。家族や保健所の検診などで「斜視ではないか」と指摘され、来 院する患者さんの中には、この偽斜視の場合が少なからずありま す。乳幼児期のお子さんには、鼻根部が広い、内角贅皮(*7)、瞳 孔間距離が狭いなどといった特徴がありますので、通常の状態では 鼻側の結膜部分がほとんど見えず、斜視のようにみえることがあり ます。この場合、本当の斜視かどうかを判断するには、鼻根部の皮 膚を指で摘んでみます。その状態で眼位に異常がなければ(=両眼 とも目標物を見ていて、ずれがなければ)、これは偽斜視であり、問 題はありません(図2、3)。

水頭症の斜視

 さて、斜視は水頭症患者の 60 〜 75%に合併症として起こるとい われ、内斜視は外斜視よりも頻度が高く、外斜視の4倍程度、多い とされています。今回の16例中では6例に内斜視を認めましたが、

* 4 視軸=固視している物と、その物を見ている眼の中心窩とを結ぶ線

* 5 融像=我々は両眼のふたつの網膜像を感覚的にひとつのものとして統合してい るが、その統合されたものが「融像」

* 6 複視=物が二重に見えること

* 7 内角贅皮=眼瞼皮膚の半月状ひだが内眼角部を覆い、縦に走っている状態

外斜視は1例もありませんでした。一般に、出生直後から発症する 外斜視は、両眼に重篤な視力障害を持つ人にみられることが多いよ うです。

 斜視には、両眼の眼球が同時に右を向いたり、左を向いたりと、

同じ方向への眼球運動ができる「共同性」と呼ばれるものと、眼筋 が麻痺しているため麻痺筋の反対方向に眼位ずれが起こり、左右同 じ動きができない「麻痺性」と呼ばれるものの2種類があります。

 麻痺性斜視は脳圧亢進による片側、または両側の外転神経(*8)

の麻痺によって発生します。したがって麻痺性斜視は、早期のシャ ント手術などの治療で完全に回復します。

図2 一見して内斜視の

ようにみえる症例

図3 鼻根部の皮膚を摘

むと、内斜視でな いことがわかる。

 しかし、水頭症にみられる斜視の大部分は、もうひとつの共同性 斜視の方で、この場合、弱視になることは多くありません。という のは、例えば右眼だけが斜視の人は左眼が固視眼であり、左眼だけ が斜視の人は右眼が固視眼となっているわけですが、共同性斜視は 左右の眼が交互に固視できる「交代固視」のことが多いからです。

とはいえ、大部分の共同性斜視は、最終的に斜視矯正手術が必要と なります。

 斜視は眼位異常および両眼視機能の異常ですから、眼位が矯正さ れ、両眼視機能が正常化されれば理想的です。

 斜視手術は斜視の種類によって、眼についている上下左右の直筋 か、上下の斜筋のどれかを選んで、前転術、短縮術などの強化手術 をするか、後転術、切腱術などの弱化手術を片眼、あるいは両眼に 行います。それぞれの手術量は術前に測定した眼位ずれをもとに決 められます。

 手術に要する時間は、手術をする眼筋の数によって変わってきま すが、大体 15 分〜 40 分程度で、その前後に全身麻酔の導入や覚醒 の時間がかかります。通常、斜視手術は入院治療となります。入院 期間は施設によって異なりますが、3〜6日程度のところが多いよ うです。

 斜視の治療は、斜視の種類や年齢によって違ってきます。

 乳幼児の内斜視では、眼位の検査、屈折異常の検査を行い、ある 程度の遠視があれば眼鏡装用を勧めます。これは調節性内斜視の場 合、眼鏡をかけるだけで眼位ずれが改善されるからです。眼鏡で改 善しない斜視は手術が必要となります。乳児内斜視は理論的には早 期手術が望ましいのですが、あまり小さいうちですと、術前や術後

* 8 外転神経=眼球の外側、つまり耳側の眼筋を支配する神経

に眼位等の検査が正確にできないことから、一般には2歳頃までに 手術をされるところが多いようです。

 水頭症に合併した斜視の場合は、患児の精神的な発育状態によっ て手術年齢が変わってきます。それは斜視の患児がしっかり物を見 て、視力が良く、両眼で融像できる力がある時は、手術をするとよ く改善しますが、視力が悪く、融像能力のない時は、同じ手術をし ても、再び眼位ずれが起こり、視力も良くなりません。したがって 早期に手術をしたくてもできず、発育に応じた治療を進める必要が あります。水頭症で早期に発症した外斜視もこれと同様です。

 一般の外斜視も比較的早期からみられますが、外斜位や間歇性外 斜視が多く、両眼視の機能が比較的良いので、手術は内斜視のよう に急ぐ必要はありません。

2. 斜視診断のポイント

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 188-192)