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キアリ奇形

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 114-117)

先天性非交通性水頭症の原因疾患

3.  キアリ奇形

 「キアリ奇形」は、後頭部にある小脳や脳幹の一部が頭の骨から 脊椎側に落ち込んだ状態をさします。落ち込みの程度が軽く、小脳 扁桃という小脳の一部のみが落ち込んだ場合(小脳扁桃の下垂)を 1型とし、脳幹の一部や小脳の虫部という部分までが落ち込んだ場 合を2型としています。MRI検査を行えば、脳幹、小脳の落ち込み を明瞭に示すことができます。

 キアリ1型奇形では、小脳や脳幹が圧迫されて症状が出ることが ありますが、水頭症はほとんど合併することはありません。しか し、脊髄の中に空洞をしばしばともないます(脊髄空洞症)。正常 では頭の中の髄液が脊髄の方に行ったり戻ったりする動きがみられ ますが、キアリ1型奇形では小脳の一部が脊髄側に落ち込むため、

この髄液の動きが妨げられ、髄液の一部が脊髄内に貯まって空洞に なるといわれています。空洞は頚髄や胸髄に発生しやすく、空洞が 大きくなって上下にも広がって脊髄を障害します。

 キアリ2型奇形は脊髄髄膜瘤に合併します。神経管癒合不全症の ひとつである脊髄髄膜瘤は、水頭症、キアリ2型奇形を 80%から 90%の例に合併します。これらの病気の合併は、髄液が脊髄髄膜瘤 の部分から外に漏れ出すことが原因とされていますが、みんなを納 得させるほどはっきりした説明は今のところなされてはいません。

 このように、キアリ奇形に合併する水頭症は、非交通性水頭症と は断定できませんので、先天性非交通性水頭症の項目で分類するの ではなく、むしろキアリ奇形+水頭症+髄髄膜瘤をひとつの病気と して脊髄髄膜瘤(二分脊椎)の項目で扱うべきかもしれません。

 脊髄髄膜瘤の赤ちゃんでは、水頭症と共にキアリ2型奇形を合併 していると考えます。脊髄髄膜瘤の治療や合併する水頭症の治療が 終わっても、このキアリ2型奇形の症状には十分注意する必要があ ります。この2型奇形の症状は、落ち込んだ脳幹や小脳の障害によ り、呼吸障害(ぜい鳴、無呼吸、チアノーゼなど)、嚥下障害(ミ ルクを飲みがへた、むせるなど)、上下肢の麻痺などの脳幹障害が あります。キアリ2型奇形は脊髄髄膜瘤の例ではMRI 上 80%から 90%の頻度で認められますが、上に述べたような症状を呈するのは 10%程度と、決して高率ではありません。しかし、呼吸障害、嚥下

障害が進行すれば生命にかかわる危険な状態となるため、緊急の外 科治療が必要となります。

 この症状は、生後すぐから1、2歳頃まで、出現するかどうかを 見極める必要があります。このような症状はシャントが閉塞しても 発生することがありますので、シャントの機能にも注意する必要が あります。

 キアリ1型奇形では、脳幹や小脳の症状よりも、脊髄空洞症によ る症状のほうが目立つ例が多いとされています。脳幹や小脳の症状 では、歩く時にふらつく、眼球が揺れるのでものが見にくい、と いったことがあります。空洞症では、背骨(脊柱)が左右に曲がっ た側わん、上肢や体の一部の温度感覚や痛覚が鈍くなる症状(解離 性知覚障害)、手の筋肉のやせ(萎縮)などをきたします。MRI を 用いれば容易に小脳や脳幹の落ち込みは判別でき、脊髄の MRI を とれば脊髄空洞の有無を確認できます。

 脊髄髄膜瘤の例で、脳幹の症状が出現したり進行した場合、小脳 や脳幹の圧迫を緊急に改善するために、後頭部の大後頭孔の骨を一 部取り除き、さらに脳を覆う硬膜を開いて、脳の圧迫を取る「減圧 手術」の必要があります。新生児期にこの手術を行うと、術中の出 血、麻酔の問題などの危険性を伴います。また、この治療を急いで 行っても、脳幹の機能が回復できないほど障害されていることがあ ります。そのため、術後にミルクを口から飲むと誤飲して肺炎や窒 息を起こすことがあるので、気管切開や人工呼吸器が必要となるこ ともあります。

 一方、キアリ1型奇形では症状がゆっくり進行することが多いの で、手術を緊急で行うようなことはまずありません。大後頭孔部の 脳の減圧手術によって、小脳や脳幹の症状は改善します。しかし、

脊髄空洞症による症状が全く消えてしまうほど良くなる例はほとん どなく、何らかの症状が残りますので、早めに治療すべきでしょ う。脊髄空洞症に対する手術では、髄液の流れが充分に改善するよ うな手術を行わないと、空洞が小さくならなかったり、再発したり します。脊髄空洞症に対する手術を一度行った後に、再手術が必要 となる例が 10% ぐらい報告されています。

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