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斜視診断のポイント 1)眼位ずれ

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 192-196)

水頭症と眼

II. 合併症

2.  斜視診断のポイント 1)眼位ずれ

に眼位等の検査が正確にできないことから、一般には2歳頃までに 手術をされるところが多いようです。

 水頭症に合併した斜視の場合は、患児の精神的な発育状態によっ て手術年齢が変わってきます。それは斜視の患児がしっかり物を見 て、視力が良く、両眼で融像できる力がある時は、手術をするとよ く改善しますが、視力が悪く、融像能力のない時は、同じ手術をし ても、再び眼位ずれが起こり、視力も良くなりません。したがって 早期に手術をしたくてもできず、発育に応じた治療を進める必要が あります。水頭症で早期に発症した外斜視もこれと同様です。

 一般の外斜視も比較的早期からみられますが、外斜位や間歇性外 斜視が多く、両眼視の機能が比較的良いので、手術は内斜視のよう に急ぐ必要はありません。

2. 斜視診断のポイント

 また、今回の 16 例の症例中にはみられませんでしたが、遠視の ある子どもが生後1〜2年たったころに、内斜視を発症してくる場 合があります。これは調節性内斜視と呼ばれるもので、遠視眼鏡を 装用することによって正位となります。

3)恒常性か、間歇性か

 斜視には恒常性のものと間歇性のものがあり、恒常性の場合はい つも眼位ずれがみられますので診断を誤ることはありませんが、間 歇性斜視の場合は時によって正位になっていることがあるので、注 意が必要です。

4)視力障害

 3歳未満の子は普通の視力検査ができないので、選択視法(*10)

や、縞視力法(*11)といった方法で検査します。片眼性斜視では 弱視になることがあるので、目標をきちんと見ている方の眼をアイ パッチなどで遮蔽して、両眼が交代固視をするような状態にまで 持っていき、その上で斜視矯正手術に臨むという段階が踏まれま す。

5)読書困難、眼精疲労、複視

 これらを水頭症の子や低年齢児が訴えることは多くありません。

* 10 選択視法(preferential looking 法)=乳幼児の視力測定法のひとつで、乳幼 児が無地の画面よりも縞模様の画面を好んで見ることを利用した視力測定法で す。眼から 50cm の距離で、片方に白黒の縞模様、もう一方にそれと平均輝度 が等しい無地灰色の画面を提示し、被験者が中央ののぞき窓からどちらを見て いるか判定する方法です。

* 11 縞視力法(grating acuity card 法)=選択視法と同じ原理で、縞模様と灰色画 面を選ばせて、縞模様が見えていれば、その縞幅から視力を判定するものです。

6)頭位異常

 頭の位置が首を傾げたような状態にあり、片眼を遮蔽するとこれ が改善される時は、眼性斜頚です。原因となる眼筋を見つけて手術 をすれば治ることも少なくありません。

7)その他

 眼底疾患や網膜芽細胞腫などの初発症状として斜視をみることが あるので、注意しなければなりません。

●注視麻痺

 水頭症がよくコントロールされていない場合、垂直性麻痺がみら れます。

 水頭症の乳児の中に、両眼の上まぶたが後退していたり、眼球が 下の方に偏っていたり、衝動性眼球運動(*12)や滑動性追従運動

(*13)の障害されることによる垂直注視麻痺(*14)を伴った落陽 現象がみられる子がいます。こうした子の予後は悪く、重篤な視力 障害をきたすことがあります。

 後発発生の水頭症や、シャント機能不全を伴った年長児では、脳 圧亢進による上転障害(黒目が上を向けない状態)、瞳孔の対光反 応の欠如と、両眼を中心に寄せた時に起こる縮瞳などがみられます が、こうした動眼神経の異常は、シャントが正常に機能することに よって改善されます。

* 12 衝動性眼球運動=視線と眼球の向き方向のずれを補足する眼球運動

* 13 滑動性追従運動=移動している対象を常に網膜の中心窩に保とうとするために 生じる滑らかな眼球運動

* 14 垂直注視麻痺=中枢性病変による随意的な垂直方向への眼球運動障害

●眼振

 水頭症で脳圧が亢進したため、両視神経が萎縮することによって 視力が低下した場合、眼球が振り子のように左右に揺れる「眼振」

がみられます。注視誘発眼振(*15)は外転神経麻痺が快復する時 にみられます。

 また、キアリ奇形の場合には、Downbeat nystagmus(正面を見た 時に下まぶたの方向に急速に落ちていく垂直眼振)がみられます。

兵庫県立こども病院 脳神経外科 長嶋達也氏のご協力に深謝いたします。

文献

1)高島幸男:中枢神経奇形、459〜464、小川雄之亮ほか編 新生児学 第2版、メディカ出 版、2000, 5.

2)Anthony Moore : Hydrocephalus, Pediatric Ophthalmology, Editor : David Taylor, 498-504, Blackwell Scientific Publications 1990.

3)Ghose S : Optic nerve changes in hydrocephalus. Trans. Ophthalmol. Soc.

U. K. 103 : 217-220, 1983.

* 15 注視誘発眼振=側方視、上方視、下方視をさせると、注視方向に、急速な眼振 をみるもの

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