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シャントの合併症

ドキュメント内 ガイドブック_医療編 (ページ 34-38)

成人の正常圧水頭症

7.  シャントの合併症

 水頭症のためのシャント術は広く行われ、患者さんの快復に貢献 しています。しかし、これはいつでも安全であるとは言えません。

種々の合併症が報告され、そのうち、三大合併症として知られてい るのがシャント装置の詰まり、感染、脳脊髄液の流れ過ぎです。

 装置の詰まり、感染については、新しい装置の開発、手術法、抗 生物質等の進歩により、かなり避けられるようになりました。しか し、脳脊髄液の流れ過ぎ現象に関してはまだ問題が残されていま す。「水は高き所より、低きに流れる」という極めて当たり前の自 然現象が、患者さんが座ったり、立ったり、歩いたりする際の体位 の変化によって、シャント管内の髄液にも影響を及ぼすのです。

 小児水頭症においては、シャントによる髄液の流れすぎが、脳室 をスリット様にしてしまい、活発な動きを示す子供さんほどその現 象が見られます。

 一方、座高の長い成人の場合は、この自然現象が小児より大きく 作用し、硬膜と脳表との間に血液が溜まる硬膜下血腫が出現し易く なります。McCullough と Fox6) の 1974 年の報告では、成人の NPH では、約 20% に硬膜下血腫が生じているとあります。

 このため、私どもの施設ではこの脳脊髄液の流れ過ぎ現象を防ぐ ための「アンチサイフォン」と呼ばれるバルブを、管の間に設置し て、長いこと治療してきました。これは、小児の水頭症においても 効果を発揮し、スリット様の脳室の出現を減少させることができま した7) 。成人の NPH では、このバルブを用いなかった群では、硬 膜下血腫は 30 例中 9 例に出現し、30% の出現率を呈したのに対し、

用いた群 62 例では皆無で、出現率 0% と対照的でした8) 。  近年、頭皮上から装置のバルブ圧を好みの値に調節可能な圧可変

式バルブが広く用いられるようになり、小児の水頭症ではこの脳脊 髄液の流れ過ぎ現象をかなり防止できるようになりましたが、座高 の長い成人の水頭症で、立ったり座ったりすることの多い患者さん の場合は、圧可変式バルブをもってしても、この脳脊髄液の流れ過 ぎ現象を防止することができないことが分かっています。

文献

1) Adams  RD,  et  al:  Symptomatic  occult  hydrocephalus  with    normal  cere- brospinal fluid pressure : A  treatable syndrome.  New Eng J Med  273: 117-126, 1965

2) Hakim S, Adams RD: The special clinical problem of symptomatic hydro-cephalus with normal cerebrospinal fluid pressure. Observations on cerebrospinal fluid hydrodynamics.  J Neurol Sci 2:307-327, 1965

3) 厚生省特定疾患 難治性水頭症調査研究班(森 惟明班長): 特発性正常圧水頭症の 病態と治療指針.  第1版,  pp.  2-3,  にゅーろん社,  1998

4) 所 和彦、ほか:腰椎持続ドレナージを用いたシャント術の適応決定.  厚生省特定疾患  難治性水頭症調査研究分科会(分科会長 森 惟明) 平成9年度研究報告書, pp. 133-135, 1998

5) Miyake H, et al: A clinical survey of hydrocephalus and current treatment for hydrocephalus in Japan: analysis by nationwide questionnaire. Child's Nerv Syst 15:363-368,1999

6) McCullough DC, Fox JL:Negative intracranial pressure hydrocephalus in adults with shunts and its relationship to the production of subdural hematoma.

J Neurosurg 40:372-375,1974

7) Chiba Y, et al:Importance of anti-siphon devices in shunt therapy of pedi-atric and adolescent hydrocephalus. In hydrocephalus-pathogenesis and treatment 1991; pp 375-382, edited by Matsumoto S &Tamaki N, Springer-Verlag, To-kyo

8) 千葉康洋、所 和彦:水頭症シャント術における髄液流出過多現象の予防策 - 小児例 と成人例の相違について- 厚生省特定疾患 難治性水頭症調査研究分科会(分科会長  森 惟明)平成 9年度研究報告書, pp. 121-123, 1998

Section B 水頭症の治療

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