先天性交通性水頭症の原因疾患
6. 全前脳胞症
らかになることが少なくありません。
頭蓋底部、頭蓋前項部の脳瘤では、脳瘤の逸脱部位より、鼻腔内、
口腔内、眼窩内に拍動性腫瘤が突出し、眼間開離、いびき、視床下 部・下垂体系内分泌機能障害を示します。また、前頭篩骨型で一側 性拍動性眼球突出を示す例があります。顔面正中奇形に合併する、
くり返す髄膜炎や髄液漏が、これら頭蓋底部、頭蓋前項部の脳瘤診 断の契機となることがしばしばです。
手術時には、頭蓋内組織の逸脱部位と頭蓋欠損の大きさ、逸脱し た頭蓋内構造物(脳組織、髄液腔;脳室・脳槽・くも膜下腔)、脳 血管;動静脈の分布と灌流状況、静脈洞と脳瘤の位置関係の把握が 重要になりますので、以上をレントゲン写真、CT、MRI、脳血管 写で精査します。特に MRI は合併する脳先天異常(異形成、低形 成、キアリ奇形、脳幹空洞症、脊髄空洞症、ダンディ・ウォーカー 症候群、くも膜嚢胞など)の検索に有用です。
治療は顕在性二分脊椎と同様で、生後早期に行います。手術は、
逸脱した脳組織を中に戻し、硬膜を形成し、周囲の骨膜、筋膜で欠 損部を補強して、頭皮の形成を行います。
水頭症に対しては短絡(シャント)術を行います。
予後を決める最大の因子は、逸脱した脳組織の範囲、部位と量で す。一般に、前頭部、頭蓋底部脳瘤の予後は良好ですが、脳の逸脱 が著しく、前頭が平坦化した小頭を示す例は予後不良です。二分頭 蓋では、2 年以上生存した人の 61% が、健常な成長を遂げます。
化します。この過程に異常を生じ、前脳胞の形態が残ってしまうこ とにより発生するのが 「全前脳胞症」です。
大脳半球、嗅球、側脳室、第三脳室を含む終脳と、視床、視床下 部、下垂体、視球を含む間脳の形成異常を示します。単眼症、兎唇、
口蓋裂などの顔面正中部の奇形を特徴とします。
分類は、前脳胞の分割程度により半球間裂、脳葉形成のない
「Alobar(無脳葉)型」、大脳半球は痕跡的にあり、一部に半球間裂 を認める「Semilobar(半脳葉)型」、半球間裂はよく形成されるも、
半球間裂の深部で帯状回が連続したり、半球間裂は完全に分離して いるのに嗅球の低形成を合併する「Lobar(脳葉)型」に分けられ ます。
Alobar 型では、トルコ鞍低(無)形成、大脳鎌、上矢状洞の無 形成、天幕付着縁の上昇、半球非分離を示します。単脳室は第三脳 室に続く髄膜に覆われ、半球非分離と天幕、小脳との間に突出した 巨大な腔(dorsal sac)をなします。その先端は第三脳室の天蓋で あり、穹隆部に突出します。皮質は低形成で、脳溝の異常をみます。
基底核の発達はさまざまであり、大脳脚がひとつのことがあり、
また、脳瘤、ダンディ・ウォーカー症候群を合併する例もあります。
頻度は、自然流産の 8.4%、生存出生児の 0.1 〜 0.8/1000 を占めま す。染色体異常は trisomy13 などが知られています。
症候は、眼窩間距離の短縮をともなう顔面正中奇形(図9)のほ か、体温調節が不良で、無呼吸発作がみられ、次第に精神発達遅滞 が明らかになり、長期生存例では、視床下部―下垂体系障害が明瞭 になります。
Alobar型では、一般に顔面正中奇形が著しく、水頭症の非合併例 では小頭になります。骨格、心奇形や視床下部―下垂体系内分泌障
害(尿崩症、慢性高 Na 血症など)を合併し得 ます。ほとんどの場合、
生存は不可能です。
Semilobar型、Lobar型 では、精神遅滞を主徴 とし、顔面奇形は一般 に軽いです。顔面奇形 と半球分離状況は必ず しも相関せず、水頭症 はむしろ顔面奇形の軽 症 例 に 多 い よ う で す 。 診断は、大脳半球分離障害、嗅球/嗅索無形成、基底核分離障害を MRI で確認します(図 10)。しかし、Lobar 型は診断がかなり困難 です。治療は、水頭症に対して脳室短絡術を行います。
図9:全前脳胞症
図10:ダンディ・ウォーカー嚢胞を合併した全前脳胞症のMRI所見