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第 3 章 研究課題

3.1 研究課題と仮説

3.1.1 中級レベルの日本語学習者が用いる存在場所を表す「に」

表3-1は、日本語能力が中級レベルの日本語学習者が書いた作文から場所を表す「に」

と「で」が用いられている箇所を抜き出したものである。作文には、2.2.3 の日本語能 力が中級レベルを対象とした先行研究では見られなかった「に」と「で」の用例がある ことに気がついたためデータとして活用した。その「に」と「で」の用例とは、「*クラ スで2人韓国人がいる」、「*あの喫茶店にコーヒーを飲む」、「*寮にいません、大学でい る」そして「*中国で、お盆のような日もある」である。

作文は、筆者が担当した九州女子大学別科日本語研修課程の「中級クラス」に対し行 われていた日本語の授業の1つである「作文」の中で書かれたものである。「中級クラ ス」の日本語学習者は、日本の大学への進学を目指す者、自国の大学で日本語および日 本文化を学び半年間日本に滞在している短期留学生、配偶者の留学や仕事の関係で来日 し滞在している聴講生などで構成されている。日本語能力の差も大きく、初級日本語学 習用の教材を用いた日本語学習を終えたばかりの日本語レベルの者、旧日本語能力試験 の3級または2 級に合格している者、旧日本語能力試験の2級または1 級受験予定の 者、人数は最も少ないが旧日本語能力試験の1級に合格している者、自国の大学で日本

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語および日本文化を1~2年間学んだという日本語レベルの者などである。作文は個人 が特定されるような部分を省き、将来的に筆者が研究資料として用いても良いという了 解を作文を書いた日本語学習者に得たものである。

表3-1に示した文は日本語学習者が書いた通りに抜き出しているため、日本語の文と して正しいとは言えない表現や表記もあるがそのまま掲載した。作文は日本語学習者A

~E が2001年に、日本語学習者F~M が2002年に書いたものである。作文は90分 間の授業の中で約60分間使って書かれた。1回の作文の文字数は400字~600字でA4 の用紙に横書きである。作文を書くときには辞書を用いても良く、筆者や他の日本語学 習者と話しても良いという自由な雰囲気の中で書かれたものである。日本語学習者が書 き終わった作文は筆者が日本語の表現を正してコピーを取った。作文の内容については、

翌週の同じ曜日の同じ時限の作文の授業中に日本語学習者と筆者が1対1で10分程度、

日本語学習者が自身の作文を見ながら筆者が作文のコピーを見ながら意味の取り違い のないことを確認した。

表 3-1の左端の 1行目1列の「名前」は、日本語学習者の名前をA~Mのアルファ ベットで表したものである。「名前」の( )内の国名は日本語学習者の母語を示してい る。日本語学習者L の母語が「英語・中国語」であるのはLの申告による。Lによれ ば、Lは中国で出生し何年後かに一家でカナダに移住した。Lの国籍はカナダでありL は中国語と英語をどちらが母語なのか分からない程両言語とも使いことなしていると いう。Lの両親の母語と国籍は不明である。

表3-1の1行目2列の「作文の題名」とは日本語学習者が書いた作文の題名を省略し たものである。「こんな人」とは「〇〇さんってこんな人」という作文の題名の省略で ある。日本語学習者が2人1 組または3人1組となり、出身地および来日前後の生活 など自身のことをお互いに20~30分間話した後に、話をした相手について紹介すると いう課題の作文である。「子供の頃の家」とは「子供の頃住んでいた家」という題名の 省略である。日本語学習者が2人1組または3人1組となり20~30分間子供の頃住ん でいた家について話をした後に、日本語学習者自身が子供の頃住んでいた家について書 いた作文である。「七色しか」も日本語学習者が2人1組または3人1組となり20~30 分間、日本語学習者が知っている「昔話」について話した後に、書いた「昔話」である。

「盆踊り」、「こどもの日」、「ねぶた」はそれぞれの日本語学習者が日本の年中行事が写 されている写真(パネル)を見ながら書いた作文である。日本語学習者は自身が興味を持 った1枚B4サイズの日本の年中行事の写真(パネル)を1枚選び、2人1組または3人 1組となって写真について20~30分間話をした後、写真に写っている様子を描写する などその年中行事について書いた作文である。「ねこ」、「人魚」、「かかし」、「ハッカー」、

「オゾンホール」、「ホームヘルパー」は、日本語学習者が百科事典を作るつもりになっ て、それぞれについて100文字~150文字で書いた作文である。1行目3列の「番号」

とは4列の2行目以下に示された日本語学習者が書いた文の番号を示すものである。

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表3-1の1行目4列の場所を表す「に」、「で」とは、作文の中で用いられた「に」と

「で」を抜き出したものである。「・・」という表記は語の省略を表している。日本語 学習者の実名が書かれていた部分は「〇さん」と表記した。誤用には1.1と同じく文頭 に「*」を付した。すなわち、問題となる格助詞に下線を施し、下線を施した格助詞が 誤用である文には文頭に「*」を付しているということである17。以下、表3-1を示す。

表 3-1. 「中級クラス」の日本語学習者が書いた場所を表す「に」と「で」

名前 作文の題名 番号 場所を表す「に」「で」

A(中国) こんな人 A-1 〇さんとはソウルで生まれ育ちの若い女子大学生だ。

A-2 ・・お姉さんを離れて日本に来たそうだ。

A-3 *今は学校の寮で住んでいる。

A-4 まわりに日本人の大学生がたくさんいるそうだ。

A-5 東京の渋谷にいって、・・

B(中国) こんな人 B-1 今、私のクラスで一番やさしい人、ふとった人は誰?

B-2 吉林省で生れた。

B-3 *今の〇さんは小倉で住んでいる。

B-4 日本に初めて来た時の彼は・・

B-5 世の中で一番楽しかった時や思い出に残っているこ とを・・

B-6 託児所で子供たちと一緒に漢字の勉強だ。

B-7 *大学の同じクラスの友達の誕生日パーティーの中に 今の彼女と知りあった。

B-8 ・・大学へ入るために勉強している。

B 盆踊り B-9 お盆というのは、先祖の霊を迎えるために、公園など に「やぐら」をたて、・・ことだ。

B-10 写真には、一人おとこの人は「やぐら」ていうところ の上に立っていて、太鼓をしている。

B-11 やぐらの上に、いろいろな白い紙をかけて、白い紙の 上にはたぶんこん回の祭のためにお金出した人の名 前を書いている。

B-12 *「やぐら」のまわりに、いっぱいの人は踊っている。

17 誤用は、例えばM-9の促音の表記のように、一方では「わらたり」(=「笑ったり」) の「っ」が抜けていたり、また一方では「深かった」と正しく表記されたりしているとい う場合もあるが日本語学習者が書いたものをそのまま示した。但し、このような誤用には 誤用であることを示す「*」を付していない。

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B-13 ところで、・・私の国では、正月の日は、家族の全員 で一緒に料理を作って、・・テレビを見る。

B-14 近くの親戚の家に、おくり物を持って、礼を言って行 く。

B-15 写真のように皆は一緒に踊ることがあまりない、中国 で。

B-16 *中国で、お盆のような日もある。

B-17 でも、日本で、お盆の時、いろいろな所で盆踊が行わ れる。

B 七色しか B-18 森の中に七色しかという神様がいました。

C(中国) こんな人 C-1 *今年の十月に日本に来て今は「本村荘」というとこ ろで住んでいる。

C-2 高校の時学校の寮に住んでみんなといっしょうに遊 んだりするときいちばんおもしろかったといった。

C-3 大学に入って 2 年生になってからきれいな女を知り合 って恋愛したといった。

D(韓国) こんな人 D-1 *ほかの韓国人の中でいた。

D-2 今年の四月に日本に来た。

D-3 *・・、反面、心の中でかちたいの勝負欲もある。

D こどもの日 D-4 *古いそうな広いたたみまでいるから子供たちは生足 でいる。

D-5 うしろにあるかいだん形の二三だんのだいの上に 色々なものがおいてある。

E(モンゴ ル)

こんな人 E-1 *私は日本で留学している同級生について・・

E-2 *世界で美しい 500 の市として選ばれた・・

E-3 *ダイランに仕事をしながら、生活しているそうだ。

E-4 お姉さんは日本に留学しているそうだ。

E-5 *大学から歩いて 5 分のところで住んでいるそうだ。・ E-6 ・・山の中で遊んでいたことだそうだ。

E-7 山の中へ入って友達と一緒によく遊んでいたそうだ。

E-8 〇さんはおはかの上にのぼって、・・

E-9 〇さんは日本に日本語の勉強をしに来た。

E-10 *将来は日本の大学で進学するつもりだそうだ。

F(中国) こんな人 F-1 別科に入ってから・・

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F-2 タイで生まれ、・・

F-3 *学校に行かられてきた。

F-4 ・・日本に留学して来た。

F-5 *日本に暮らすにつれて、

F-6 日本に住みたいな、・・

F-7 大学院に入りたいな

F ねぶた F-8 この祭りは・・青森県青森市で・・行われている・・。

F-9 広い道路に集まり、・・

F-10 普通のシャツをきている人も行列に入って、・・

F-11 *その中で、サングラスをかけ、ねので頭をつつんで 忍者のようにしている人もいる。

F-12 巨大な人形の中に電気がつき、明るくて道を照らして いる。

F-13 道の両側にいる市民たちが長い首をして楽しみにし ているようだ。

F-14 *人形が道に行進し、・・

G(中国) こんな人 G-1 *クラスで 2 人韓国人がいる。

G-2 韓国のポハンで生れた。

G-3 そこに住んでいたが、・・

G-4 大学は大田で勉強した。

G-5 *韓国の田舎みたい静かな所で主人と二人ですみたい から、・・

G-6 ヨーロッパに旅行したくて、オストラリアに留学した い。

G-7 彼女はヨーロッパに旅行したくて、・・

G-8 そのあと、韓国でホテルとか、空港とか、サービスの 仕事をしたい。

G ホームヘル パー

G-9 ホームヘルパーとは老人の家で世話をする人だ。

G-10 ホームヘルパーはいえにいたら、子供たちもとても安 心だ。

H(中国) こんな人 H-1 *私のクラスの中で〇というひとがいる。

H-2 ・・ふるいまちでうまれたそうだ。

H-3 洛陽一番有名な高校にはいた。

H-4 いい学校にはいりたいとおもう。

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