2 養殖生産の事例
2.1 北彩漁業生産組合(トラウトサーモン)
2.1.1 養殖魚及び商品
青森県むつ市大畑沖のトラウトサーモン(ドナルドソンニジマス)養殖
【活〆海峡サーモン】生食用他
【水氷〆海峡サーモン】生食用他
2.1.2 養殖漁場環境と生け簀の概要
初めはギンザケと現在の海峡サーモン「ドナルドソンニシマス」の2種類を養殖していまし たが、冷水性魚類のドナルドソンニジマスの方がギンザケより津軽海峡に適していること がわかった。他方、ギンザケに比べて成長が遅く手間がかかるため、高い単価での販売を 目指す必要がある。(ギンザケは淡水で約1年間育成されるが、ドナルドソンは淡水で約2 年間育成される)
潮の速い津軽海峡の外海での養殖(図2.1.1)は上質な旨みがあり身が締まる。しかし 冬季の低気圧や夏季の台風時期には高波が押し寄せるなど厳しい環境下に置かれる。過去 に2度、生け簀もろとも全滅した。
(生け簀)
3km沖合 設置水深25m 12m×12m×13m×6 基 収穫量 65t(2016年シーズン)
図2.1.1 養魚場・養殖場・加工場の位置
154 2.1.3 養殖の概要と特徴
種苗購入、養殖から加工・出荷まで一貫した管理(図2.1.2、図2.1.3)が行われてい る。
図2.1.2 養殖生産サイクル(時系列)
www.kaikyou.com/より作成
図2.1.3 主な作業状況
155 具体的には次のとおりである。
① 岩手県八幡平と地元大畑の養魚場(淡水)で、約2年間育てた幼魚(約500g)を活魚 水槽の積んだトラックで大畑へ輸送。パレットをトラックのクレーンで吊り、これに 水及び水と幼魚を入れて計量し、幼魚の実重量を算出。平均重量/尾で割り、尾数を推 計する。
② 大畑に到着した幼魚の海水馴致を、大畑漁港内の生け簀で4日間かけて海水馴致す る。
③ 沖合の生け簀で週5回※、給餌(EP)する。消化時間が長いことから、朝または昼に 給餌。このとき、表面水温を計測し、時系列的に記録。水中メガネで生け簀内を覗 き、搾餌行動や遊泳状況、成長状況を確認して給餌量や給餌をコントロールする。
給餌の際に、“魚を観る”ことが重要ということである。
※当初は毎日給餌していたが、その後3日給餌して1日休みとか2日給餌し2日休みとか給餌日をいろいろ変え て、魚の消化状況を調べた。その結果、現在の4日給餌の2日休みということになった。
④ 収穫~大きいものを選別し、出荷用生け簀に移し替え、収穫時期は5月から8月末ま での期間に行われる。
⑤ 水揚げの際には、鮮度保持のため水氷〆又は活〆・脱血処理が行われる。全数量を活 〆・脱血処理を行うのがよいが船上での作業に時間を要することから、両者の方法がと られている。
ア.水氷〆(従来からの水揚げ方法)~タモ網で水揚げ後すぐに、3℃から5℃の氷水 に入れて魚の動きを止める。
イ.活〆・脱血処理(2005年より出荷開始)~一匹一匹タモで掬って水揚げ後、すぐに 魚の動きを止め、エラと尻尾の血管から血抜きし、その後すぐに3℃から5℃の氷 水に入れて冷却。
(活〆の特徴)
a.硬直時間を遅らせることができるのでそれだけ鮮度のよさを長く保つことがで きる。
b.活〆処理を行った魚肉はプリプリの食感を長時間保つことができる。
c.ハラス部分でも色がよい。内臓に血が少なく、生臭さがない。
⑤ 陸揚げ後、速やかな一次処理する。
⑥ グループ会社で最終製品に加工し、大畑漁港内の大畑町簡易加工処理施設において直 売を行っている。また2003年よりグループ会社を通じてエンドユーザーへ通信(ネッ ト)販売を開始。レストラン・居酒屋とはface to faceで対応し、購入者には現地を 視察してもらうとともに、生産者側も自分たちの生産・出荷した商品がどのようにお 客に提供されているのかを確認している。このように購入者との信頼関係を構築して いることから、トレーサビリティシステムは特に求められていない。
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収穫から出荷までの流れを図2.1.4に示す。活〆あるいは水氷〆により鮮度が保持でき るが、数時間以内には加工場で一次処理される。
2.1.4 今後の課題
生産量が大きくないなかで、経営上は問題なく運営されているものの、さらに経営改善 や養殖方法の改善を目指すとすれば、次のような課題がある。
① 種苗購入数の精度よりも、斃死数や最終的に生け簀に残る成長の遅い尾数を減らすこ と。
② 高水温だけでなく、低水温の影響も重要であり、漁場環境の把握が必要。
③ 荒天時に生け簀を避難させるにも容易に生け簀の移動が困難であることや、移動でき たとしても、漁港内の水深が足りないこと。
図2.1.4 収穫から出荷までの流れ(海峡サーモン)
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