第2章 各国(地域)の電波防護規制の状況
2.6 欧州東部
2.6.6 ブルガリア共和国
2.6.6 ブルガリア共和国
-職業ばく露防護規制(60 kHz~300 MHz)、規格・計測局 375 が制定(1990年)
(d) 国家規格BNS 17137-90:「マイクロ波電磁界-許容レベルと管理要求基準」376
-職業ばく露防護規制(300 MHz~300 GHz)、規格・計測局が制定(1990年)
(e)「労働安全衛生法」(官報No.124/1997)(1997年12月23日制定)
(f) 「保健法」(官報No.70/2004)(2004年8月10日制定)377
(毎年修正があり最終の修正は2011年)
(a)のNo.9/1991公衆ばく露の制限値は、周波数範囲の上限が異なるだけで、ロシアの規
制値と同じであり、ICNIRP ガイドラインよりも厳しく制定されている。(b)の No.7/1999 職業ばく露については、さまざまな国の基準から引用して1999年に改正されており、その ため、周波数帯域によっては ICNIRP ガイドラインより厳しい規制値もあれば、緩い規制 値も混在する。No.7/1999 に引用使用されていた(c)、(d)の国家規格(BNS)は他の規格と 置換なく2011年に撤回されたが、撤回後も従来同様、引用という形ではあるが強制力を持 たせて使用している。
(e) 「労働安全衛生法」と(f)「保健法」は職業ばく露や公衆ばく露の健康保護規制を包 括する枠組み法である。(f)では、非電離放射線が管理すべき「居住環境因子」リストに、
電磁界放射設備が管理すべき「公衆の近づく施設」リストにあげられている。
(2)電波防護規制の内容
(ア)公衆ばく露の規制
公衆ばく露は、政令No.9/1991により、30 kHz~30 GHzの範囲で電界強度と電力密度が 規定されている。
同政令の規制対象設備は、電磁放射するラジオ・テレビ送信機、中継局、レーダー、無線 航行局、基地局等の固定設備である。その他の無線機器製品や身体装着型装置は、同政令 の規制対象とはならない。
規制の対象設備は、人口集中地域では、電界強度および電力密度の制限値を超えてはな らない。人口集中地域とは、政令で定住圏、生活圏、リゾート地、レクリエーション、医 療地域、その他と規定されている。
送信基地局周囲には安全区域(Safety Zone)の設定が必要である。放射設備所有者は、
保健省の承認した安全区域計算方法により、この安全区域を決定する責任がある。安全区
375 Agency of Standardization and Metrology: 当時の内閣管轄下の国家機関で局内の独立技 術委員会が各種規格策定を行った。2005年以降は独立機関のブルガリア規格協会が規 格策定を担う。
376 BNS 17137-90. Microwave Electromagnetic Fields. Permissible Levels and Control Requirements.
377 Закон за здравето,ДВ. бр.70 от 10 Август 2004 (Health Law, State Gazette No. 70/2004) http://sacp.government.bg/normativna-uredba/zakoni/zdraveto/
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表 2-64 公衆ばく露の制限値(30 kHz~30 GHz)
(注)稼働周波数が範囲の上限値のとき、次の行の周波数帯の制限値になる。
出典:政令No.9/1991
域の半径に当たる最小許容安全距離は、電磁放射の電界強度または電力密度が基地局から 離れるに従い低下し、規制の制限値と等しくなる位置(地面およびその地面上部の任意の 高さで制限値以下)と基地局の放射源中心との距離と定義される。計算による安全区域の 制限値と等しくなる最外周が、人口集中地域にかからないようにしなければならない。
出力電力の合計が10 Wまでの小規模送信サイトは、安全区域の境界を計算する必要は ない。この場合の送信機の安全区域は、規制の制限値への適合性の評価によって行う。
同政令にはSARの制限値は規定されていないが、ブルガリアは2007年にEUに加盟し たので、EUのR&TTE指令のもとでCENELEC規格のSAR制限値(即ちICNIRPのSAR 制限値)が適用される。
身体近辺で使用する身体装着型無線機器の新しい製品規格BDS EN 50566: 2013は、ブル ガリア規格協会 378 から英語版が発行されており、携帯端末のSARはこれら欧州規格によ り管理される。
市街地・居住地域で同一周波数帯で稼働する複数の送信機の場合、30 kHz以上300 MHz 未満の周波数範囲では各装置からの放射ばく露の電界強度(E1, E2, …, En)の二乗和の平方 根Eсум(下記式)がその周波数帯の制限値より低いことが要求される。
2 2 2 2
1
...
nсум
E E E
E = + +
また、300 MHz~30 GHzの周波数範囲では、各装置からの放射ばく露の電力密度の総和Scyn
(下記式)が10 mW/m2より低いことが要求される。
n
cyn
S S S
S =
1+
2+ ... +
異なる周波数帯で稼働する複数の送信機の場合は、以上の形式を統合した、次式を満足 する必要がある。
378 Bulgarian institute for standardization (BDS):2005年の国家標準化法Law on National Standardizationに基づき設立された独立機関。http://www.bds-bg.org/en
周波数範囲 電界強度
(V/m)
電力密度
(µW/cm2)
30~300 kHz 25 ―
300 kHz~3 MHz 15 ―
3~30 MHz 10 ―
30~300 MHz 3 ―
300 MHz~30 GHz ― 10
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30 kHz~300 MHzの周波数でのE1, E2, …, Enは、周波数帯の異なる(あるいは同一周波
数帯における)複数の装置から放射される個々の電界強度であり、EH1, EH2, …, EHnは、各 周波数帯の制限値である。
300 MHz~30 GHzの周波数でのSсумは、異なる各設備からの放射電力密度の総和であり、
形式は前記と同じである。
(イ)職業ばく露の規制
政令No.7/1999は、EU指令89/654/EEC、特に電磁放射に関する 89/391/EECに基づいて
作成され、ETSI、ACGIH等の規格も参考にし規定された。この政令は周波数範囲0~60 kHz の法的規制であるが、それ以外の周波数域については国家規格を引用することにより法的 拘束力を持たせている。即ち、国家規格BNS 14525-90を引用して60 kHz~300 MHz(無線 周波帯)をカバーし、BNS 17137-90を引用して300 MHz~~300 GH(マイクロ波帯)を カバーすることが政令で明記されている。
2011年にBNS 14525-90とBNS 17137-90が撤回されたことにより、60 kHzを超える周波 数領域での制限値の根拠がなくなった。しかし、政令No. 7/1999では、引用という表現で はあるが、実質的に規制の効力を有するものとされている。
今後は、職業ばく露の EU指令 2013/35/EU が国内法に置換えられ、遅くとも 2016 年7 月1日までには、ICNIRPガイドラインを根拠とする職業ばく露の規制が制定される。
BNS 14525-90とBNS 17137-90の特徴は、電界・磁界強度、電力密度の他に、ばく露時間
も考慮に入れたばく露制限値も規定されていることである。
表 2-65 職業ばく露の制限値(0 Hz~300 GHz)
周波数 範囲
電界強度 (V/m)
磁界強度 (A/m)
磁束密度
(mT)
WE=E2・T (V/m)2・hr
WH=H2・T (A/m)2・hr
電力密度S (µW/cm2)
Ws=S・T
(µW/cm2)・hr 規制
0 Hz 25000 - 60 - - - -
※1
0~100 Hz 25000 - 60/f - - - -
0.1~4 kHz 2.5×106/f - 60/f - - - -
4~60 kHz 625 - 60/f - - - -
0.06~3 MHz 500 50 - 20000 200 - -
※2
3~10 MHz 200 50 - 3200 200 - -
10~30 MHz 200 - - 3200 - - -
30~300 MHz 60 - - 800 - - -
0.3~300 GHz - - - - - 1000 200 ※3
fの単位はHz。※1:政令No. 7/1999、※2:BNS 14525-90、※3:BNS 17137-90
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これら両規格では、ばく露量パラメーター(dose parameter)が導入され、時間T(hr)に依 存するばく露制限値が算出される。このばく露量パラメーターは、ばく露エネルギー量に 比例するものである。
周波数0 Hz~300 MHzの近傍界(near field)ばく露では、時間依存のばく露量パラメー
ター(電界成分WE、磁界成分WH)は、次式で定義される。
WE = E2・T [(V/m)2・hr]、WH = H2・T [(A/m)2・hr]
ただし、E:電界強度(V/m)、H:磁界強度(A/m)、T:時間(hr)
ばく露量パラメーター表示による制限値(WEmax、WHmax)は周波数により変わるが、ば く露されてもよい最長時間(TEmax、THmax)は、下記の式から得られる。ただし、ばく露量 パラメーターの測定値(WE、WH)と制限値(WEmax、WHmax)の比の和は、下記のように、
1以下でなければならない。
TEmax = WEmax/E2、THmax = WHmax/H2 WE/WEmax+WH/WHmax≤ 1
また、マイクロ波帯300 MHz~300 GHzの遠方界(far field)ばく露では、ばく露量パラ メーターWSは次式で定義されるが、これは単位面積あたりのばく露エネルギー量そのもの に相当する。
WS = S・T [(μW/cm2)・hr] ただし、S:電力密度(μW/cm2)、T:時間(hr)
回転するアンテナ(アンテナの他のパラメーターは考慮に入れない)の場合、制限値の 10倍の値まで許容される。即ち、マイクロ波のばく露量パラメーターの制限値は、継続的 送信アンテナでは 200(μW/cm2・h)であるが、回転するスキャンニングアンテナでは 10
倍の2000(μW/cm2・h)まで許容される。
このようなばく露時間を含むばく露制限値の概念は、ロシアをはじめ旧東欧諸国の電磁 界規制で適用されてきたが、現在はロシア、ポーランド、ブルガリアの規制に残っている。
旧東欧のチェコ、ハンガリー、ルーマニア、クロアチアでは、公衆ばく露の EU 指令
1999/519/EC準拠に転換し、時間の概念は適用されなくなった。
(ウ)基地局の設置手続き
地方自治体において、保健省の下部組織の地域保健検査局 379 が政令9/2001に基づきば く露制限値適合の許可手続きを担当し、地域建築管理局が「国土計画法 No.1/2001(2001
379 Regional Health Inspection
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年3月31制定)」380 に基づく建築許可手続きを担当する。
基地局の設置手続きは、放射設備の設置計画申請段階と基地局建築後の監査段階の2段 階で行われる。
第1段階では、申請者は基地局周囲の安全区域を計算し確定した安全区域を示し、人口 集中地域のばく露強度が制限値内にあることを示す証拠書類の提出が必要である。建築許 可申請も必要である。国立公衆衛生・分析センター(NCPHA)は、提出書類の安全区域の 評価、ばく露評価の監督を行う。
第2段階では、第1段階の許可取得後、基地局の構造物を建築した後に、設置基地局か らの放射電磁界のばく露強度を実測し制限値への適合性について監査が行われる。人口集 中地域内で、ばく露が高くなりそうな3ヵ所以上の地点で、保健省により承認された測定 法により、申請者が監督官とともに実測し適合性を評価する。地域内の人々にとって最悪 条件となる運転モード(電力、方向、変調等)で、かつ、最大出力で放射を実施し測定す る。
(エ)規制等の経過措置
政令No1/1991は、1991年の制定後2002年に一部修正がある程度で、特に経過措置の規
定はない。電磁放射を行う全ての固定設備は同政令に適合しなければならない。
(3)規制制定の関連機関
保健省を中心に環境省または労働社会政策省が参画して1991 年、1999年の電磁界防護 政令の制定が行われた。保健省、労働社会政策省がその規制管理を担当する。
保健省の研究機関である、国立公衆衛生・分析センター(NCPHA)381 は、公衆衛生およ び電磁界ばく露分野に関する規則および測定方法の開発を行い、測定の実施、基地局設置 の第1段階における安全区域の評価、ばく露評価、規制管理の支援などのほか、これらの トレーニングを行う。
独立機関の通信規制委員会(CRC)382 は、無線周波スペクトルの割当配分、周波数使 用許諾の管轄機関である。
(4)地方レベルの電波防護規制
ブルガリアでは地方レベルでの規制は行われていない。
380 ЗАКОН ЗА УСТРОЙСТВО НА ТЕРИТОРИЯТА В сила от 31.03.2001 г (Law on Spatial Planning, State Gazette No.1/2001) http://www.lex.bg/bg/laws/ldoc/2135163904
381 NCPHA: National Centre of Public Health and Analyses.
http://www.ncphp.government.bg/en
382 CRC: Communications Regulation Commission http://www.crc.bg/index.php?lang=en