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スイス連邦

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第2章 各国(地域)の電波防護規制の状況

2.4 欧州中部

2.4.3 スイス連邦

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令によって連邦政府(Bundesrat)が制定すべきである」(第13条)等の規定に沿って、電 磁界政令(NISV)が制定された。

(2)電波防護規制の内容

(ア)比吸収率(SAR)

スイスでは携帯電話端末機に関する法的規制はなく、ICNIRP ガイドラインの SAR 2 W/kgを援用しており、SARの測定はEUの欧州規格通りに測定している。

スイスはEUおよびEEA(欧州経済領域)協定に加盟していない。しかし、これらに関

係なくスイスは、多少の時期的な遅れはあるが、自主的に EU 指令ならびに欧州規格に準 拠しているという。

なお、固定の基地局アンテナは、スイス国内に限定されるので、スイス独自の法律で規 制される。

(イ)公衆ばく露の制限値

電磁界政令(NISV)は、0~300 GHz の周波数範囲における公衆ばく露の電磁界規制を 規定するものであり、固定的常設設備からの放射を用心(Vorsorge)のためにできるだけ 低く(即ち、経済的に許容され技術的にも動作条件からもできる範囲内で低く)抑えるよ うに制限するための「設備制限値」と、それ以外の場合に適用される「ばく露制限値」と の2つの規定で構成される。

電磁界政令(NISV)の適用対象設備は、送電関係設備、携帯電話基地局、放送局等の常 設設備のみであり、次の設備・装置・機器等には適用されない。

・携帯電話端末機自体、電子レンジ、調理器、電気器具等の電気機器

・「医療製品政令」235(1996年)による医療装置

(例えば、ジアテルミー装置、磁気共鳴映像装置など)

・心臓ペースメーカー等の電子医療生命維持システムに影響する放射源

(これら放射源の機器は「EMC政令」236 で規定される)

・軍隊員に影響する軍事施設からの放射

・従業員に影響する企業内設備からの放射

州(Kanton)は、電磁界政令(NISV)を執行する責任があり、同政令の規定に関係する 他の連邦法や国際協定を適用する場合には、連邦政府が同政令の執行に責任がある。

電磁界政令(NISV)の公衆ばく露制限は、以下のように大きく2つに分けて規定されて

235 Medizinprodukteverordnung(1996)

236 Verordnung über die Elektromagnetischen Verträglichkeit(SR 734.5)

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いる。

① 用心のためのエミッション(放射)制限 237 としての「設備制限値」238(表2-26)

科学的に未解明部分のある長期的影響に配慮するために、電磁界政令(NISV)では、既 に述べたように、「経済的に受容可能であれば、用心策として、エミッション(放射)は技 術と動作条件の許す限り制限すべきである」(第11条)が規定されている。この規定に沿 って、特定8種類の常設設備(表2-26の高周波の 3設備の他に超低周波の5設備を含む)

に関して、用心のために保護する対象の「センシティブ使用場所」に対しエミッションを できるだけ抑える「設備制限値」が規定されている。

「センシティブ使用場所(OMEN)」239 は、「連邦環境保護法」(第13条)での「子供、

病人、高齢者、妊婦などの特に感受性の高い人々に及ぼすばく露(Immission)240 の影響 を考慮すべきである」の規定に従い、「非電離放射線防護政令(NISV)」(第3 条)におい て下記(a) (b) (c)のように定義されている。

(a) 長期間、人々が規則的に占有する建物内の部屋 (b) 土地計画法で指定された公立・私立の子供の遊び場 (c) (a)、(b)の用地として許可されている未開発地域

具体的には「センシティブ使用場所」として、子供、病人、高齢者、妊婦などの感受性 の高い人々の滞在・居住場所のほか、一般の人々が多く集まる場所や長時間滞在・居住する 場所を含み、託児所、幼稚園、子供の遊び場(公園)、学校、高齢者の施設や病院のベッド ルーム、住居、アパート(貸間)、オフィス(長時間勤務する仕事場)などが含まれる。

ただし、民家に属す庭は、公共的子供の遊び場とは異なり、「センシティブ使用場所」と はみなされない

高周波の移動無線通信設備(携帯電話基地局など)の「設備制限値」は、ICNIRP ガイ ドラインの制限値に対し10倍の安全係数が設定され、即ち、ICNIRPガイドラインの値の

10分の1(10%値)として定められた。

このほか電磁界政令(NISV)では、8種類の設備に関し、既設設備の場合、規定適合の ための改良・移設の期限または適合免除の判断、また新設設備の場合、設置手続き、測定・

計算方法などが規定されている。適切な測定・計算方法は連邦環境局(BAFU)が勧告する ことと規定されている。

237 vorsorgliche Emissionsbegrenzung(= Precautionary emission limitation)

238 Anlagegrenzwert(= Installation limit value)

239 OMEN: Orte mit empfindlicher Nutzung (= Places of sensitive use)

240 Immission (= exposure)

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表 2-26 用心のためのエミッション(放射)制限としての設備制限値(実効値)

(「センシティブ使用場所」における単一設備に適用される)

規制対象設備 電界強度

(V/m)

電磁界政令

(NISV)

の記載条項 (a) 携帯電話通信設備と WLL(ワイヤレス

ローカルループ)の送信設備

(実効放射全電力(ERP)6 W以上)

付属書1 の64項

①900 MHz帯で送信する設備 4.0

②1800 MHz帯以上で送信する設備 6.0

③両周波数帯(①②)同時に送信する 設備

5.0 (b) 放送その他無線応用の送信設備

(実効放射全電力(ERP)6 W以上、

年800時間以上稼働) 付属書1 の74項

①長波、中波の放送設備 8.5

②その他全ての送信設備 3.0 (c) レーダー設備

(実効放射全電力(ERP)6 W以上、

年800時間以上稼働)

5.5

(全走査サイ クル平均)

付属書1 の84項 出典:1999年電磁界政令NISV

(注 1)上記3 種の高周波設備以外に、下記 5種の超低周波設備(ただし④を除く)に対 し、「設備制限値」として磁束密度1 µTが規定されている。

①電力輸送用の交流高架電線と単層交流地下ケーブル(付属書1の14項)

②変圧器設備の電流搬送部分(付属書1の24項)

③異なる2つの高電圧間の変電所と高電圧開閉装置(付属書1の34項)

④屋内電気配線設備(付属書1の4項)

⑤鉄道・トラム(付属書1の54項)

(注 2)上記の 8 種の設備以外の設備については、経済的に許容され技術的に動作上可能

な限り、当局がエミッション制限を規定することと明記されている。

(注 3)上記(a)の携帯電話通信設備と WLL の送信設備から除外される設備(付属書 1 の

61項「適用範囲」に2009年9月1日の改正で追加された規定):

・指向性アンテナ

・建物内に設置され建物専用の送信アンテナで実効放射電力(ERP)が6 W以下

・ERPが6 W以下の送信アンテナで、他の送信アンテナとの間隔が5 m以上の場 合、または、他の送信アンテナとの間隔が5 m未満で両方合わせてERPが6 W 以下の場合

(注4)上記(注3)のERPの6 Wは、基準動作モード(最大送信電力で最大の音声とデ

ータの通信量での動作状態)での値。

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② ばく露制限値(表2-27)

科学的に解明されている放射の影響から一般公衆の健康を保護する目的で、「ばく露制限 値」241 が表2-27のように制定され、次のような場合に適用される。「ばく露制限値」には、

ICNIRPガイドラインの制限値がそのまま適用される。

・人々が立ち入ることができるあらゆる場所に適用される。

(例えば、草原、森林、ハイキングコースなどにも適用)

・人体全体への一様な放射に対してのみ適用される。

表 2-27一般公衆のばく露制限値(実効値)

周波数 電界強度

(V/m)

磁界強度

(A/m)

磁束密度

(μT)

平均

(分)

<1 Hz ― 32000 40000 *

1~8 Hz 10000 32000/f2 40000/f2

8~25 Hz 10000 4000/f 5000/f *

0.0025~0.8 kHz 250/f 4/f 5/f *

0.8~3 kHz 250/f 5 6.25 *

3~100 kHz 87 5 6.25 *

100~150 kHz 87 5 6.25 6

0.15~1 MHz 87 0.73/f 0.92/f 6

1~10 MHz 87/√f 0.73/f 0.92/f 6

10~400 MHz 28 0.073 0.092 6

400~2000 MHz 1.375√f 0.0037√f 0.0046√f 6

2~10 GHz 61 0.16 0.20 6

10~300 GHz 61 0.16 0.20 68/f1.05

fは対応する行の周波数範囲に記載の単位の周波数

*最大実効値(rms値)に基づく。

(出典:1999年電磁界政令NISV付属書2の11項)

(ウ)職業ばく露の制限値

スイスには電磁界の職業ばく露規制の法律はないので、半官半民の唯一の労災保険機関

SUVA(スイス傷害保険会社)242 の労災保険制度によって、労働者は間接的に保護されて

いる。SUVAの「職場における制限値」243 で、職場での最大ばく露制限値が規定されてい る(表2-28)。

241 Immissionsgrenzvert(= Exposure limit values)

242 SUVA: Schweizerische Unfallversicherungsanstalt

243 Grenzwerte am Arbeitsplatz 2014, SUVA

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表 2-28 選び出した産業用周波数に対する職業ばく露の制限値(実効値)

周波数 電界強度 E(V/m)

磁界強度 H(A/m)

磁束密度 B(μT)

電力密度 P(W/m2

0 Hz(静的) 40000 163000 200000 1)

16 2/3 Hz 20000 1200 1500 1)

50 Hz 10000 400 500 1)

400 Hz 1250 50 62.5 1)

30000 Hz 610 24.4 30.7 1)

13.56 MHz 61 0.16 0.20 10

27.12 MHz 61 0.16 0.20 10

40.68 MHz 61 0.16 0.20 10

433.92 MHz 62.5 0.17 0.21 11

900 MHz 90 0.24 0.30 22.5

1800 MHz 127 0.34 0.42 45

2450 MHz 2) 137 0.36 0.45 50

5800 MHz 137 0.36 0.45 50

24125 MHz 137 0.36 0.45 50

1) これら周波数では該当なし。 2) 電子レンジで通常使われる周波数。

出典:SUVA「職場における制限値」2014

この SUVA の職業ばく露の制限値は「非電離放射線防護政令」を参考にし、ICNIRP ガ イドライン (Health Physics 74, 494-522, 1998) の職業ばく露の制限値とほぼ同じ制限値を 設定している。職業ばく露は公衆ばく露よりも5倍緩い制限値である。

従業員が職場で電磁界による健康障害を訴えた場合、ばく露値が制限値以下であれば労 災保険は支払われないが、制限値を超えていたらSUVAにより保険が支払われる。

(エ)基地局の設置手続き

携帯電話通信事業者は基地局アンテナ設置計画申請を自治体当局に提出し建築許可を取 得する。国の環境規制、空間計画規制、地域建築基準に適合しなければならない。

提出に必要な書類には、サイトのデータシート(送信電力、アンテナの主ビーム方向、

事業者を特定する情報等)が含まれる。

例えば、アンテナの高さ、電力、指向方向などについてかなり詳細な計算値のデータを 提出しなければならない。アンテナからの電界強度Eは次式で計算する。

E = 7/d×�ERP/γ

E:アンテナの電界強度[V/m]

d:アンテナと場所との直線距離[m]

ERP:申請するアンテナの実効放射電力[W]

γ:方向の減衰係数

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アンテナ設置場所の管轄自治体当局(村、町などのレベル)では、この計算値と申請書 をもとにして設置許可の結論を下す(連邦、州レベルで許可を出すのではない)。

既存の基地局アンテナを大幅に修正、手直しをする場合にも、この同じ手続き方法に従 って申請しなければならない。

全ての場所で ICNIRP の参考レベルへの適合が要求される。さらに「センシティブ使用 場所」(住居、学校、病院、職場、子供の遊び場など)では、用心のためのばく露制限とし ての「設備制限値」への適合が必要である。

設置後、基地局からの放射電磁界ばく露の強度を屋内で測定検査方法は次のように行う。

最も健康に影響を与え障害の問題がありそうな場所で測定する。長く居る所、家庭内の居 間、学校やオフィスの屋内、子供の遊び場、公共の場などで測定する。屋内の測定は電磁 界強度が場所により非常に異なり難しいが、最大強度の場所を探し測定する。室内で床上

0.5 m程度から身長の高さ程度までアンテナを持ち回り、最大強度の場所を探し測定する。

(オ)規制等の経過措置

古い設備に対しては「改造の義務」(電磁界政令NISV第8条)の規定があり、最大の改 造期間内での制限値適合が要求される。

用心のためのエミッション制限である「設備制限値」に適合すべき8種の設備のうち、3 種の高周波設備(携帯電話通信設備・WLL、放送・無線応用設備、レーダー設備)の場合、

最大の改造実施期間は5年間と規定されている。経済的に期間内の改造実施ができない場 合、当局は改造期間の半分を延長してよいとされる。なお、超低周波設備の場合、原則的 な最大の改造期間は3年間となっている。

また、「2009年7月1日の改正に対する経過措置」(電磁界政令NISV第20条)では次 のように規定している。2009年7月1日の改正発効以前に認可され「用心のためのエミッ ション制限」(第4条)等の規定に適合していた設備は、設備を取り換える、別のサイトに 移転する、付属書 1「用心のためのエミッション制限」に沿って変更する、等の処置を行 った後、速やかに付属書1の規定を順守しなければならない。

しかしながら、スイス環境局の担当官によれば、2009年改正以前の既存設備については、

改正政令は適用されない、という。高周波設備は10年程度経過すれば、新技術の導入ある いは設備の耐用年数等により設備の更新があるから、その申請時に改正政令に適合するこ とでよいとの理由による。

(カ)2009年の規則改正点

2009年7月1日の改正の電磁界政令(NISV)の主要点は、付属書1の62項「概念」の 新規規定である。第20条の経過措置はこの規定に関するものである。62項「概念」では、

近接する複数の送信アンテナが同一設備に属すか否かを決定する概念を定めたもので、次 のように規定されている。

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