3. アジア・中東地域における市場進出状況
3.2. 国別市場動向と展開戦略(アジア)
3.2.8. フィリピン
(1) 医薬品市場
① 全体概要
フィリピンでは、医薬品市場の約70%は海外の医薬品メーカーとなっており、医薬品メーカ ーの売上トップ20のうち4分の3を海外メーカーが占めている。特にGSK、ノバルティス、サノ フィのシェアが高くなっており、他にもトップ20にはファイザー、アストラゼネカ、J&J等が 含まれている143。また、フィリピンでは後発医薬品の重要性が年々増してきており、国内メー カーの間で後発医薬品の取扱いが中心となっていることに加え、海外メーカーでもノバルティ ス傘下のサンド等がシェアを伸ばしている。こうした後発医薬品に対抗するために、新薬の多 国籍メーカーは、いくつかのブランド製品の価格を50%程度まで引き下げる動きも見られてお り144、売上高の伸びが抑制される一方で、貧困層における医療アクセス向上の要因となってい る。
輸入先の割合としては、ドイツと並んで、後発医薬品市場拡大の背景からインドが約10%を 占めている。また、米国(約9%)、フランス(約9%)、スイス(約8%)が続いている。
図表 3-42 医薬品輸入先の割合(2013)
(出典)UN Comtradeよりみずほ情報総研㈱作成
② 戦略:東南アジア諸国へ販路拡大拠点として位置づけ
海外メーカーがフィリピン国内で製造を行っているケースは少なく、基本的には完成品を輸
143 Pacific bridge medical “Philippine pharmaceutical market update 2013” (2013.5.9:
http://www.pharmaphorum.com/articles/philippines-pharmaceutical-market-update-2013)
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http://www.pharmaphorum.com/articles/philippines-pharmaceutical-market-update-2013)
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入して自社で販売するか、販売代理店を通して販売するか、あるいは原料を輸入して現地メー カーに製造委託するかといった方法がとられている。製造委託の場合は、国際標準をクリアす るレベルの現地企業がほぼ1社に限られており(Interphil Laboratories)、大手海外メーカー20 社のうち15社から製造を受託している。また、販売代理店も大手2社(Zuellig Pharma、Metro
Drug)で流通チャネルの約85%を占めている145。
こうしたことから、医薬品業界ではフィリピンが生産拠点として扱われることは少なく、多 くの場合、他の東南アジア諸国へ販路拡大するための拠点としてみなされている。ただし、本 調査対象企業のうちGSKは、フィリピンを生産拠点と位置づけ、国内最大規模の工場を保有し ている。
図表 3-43 調査対象企業のフィリピン拠点の位置づけ
企業名 概要
GSK ・フィリピンを東南アジア市場向けの生産拠点としている。
・グローバルメーカーとしてはフィリピン国内で最大規模の製造工場を保有。
ファイザー ・2009年時点では、Interphil Laboratoriesに現地製造の100%を委託してい たが、現在はカンルバンに製造工場を設立して自社で生産している。
ノバルティス ・周辺諸国に展開するための拠点として、マニラに東南アジア統括オフィスを 設立(2009年)。
・フィリピン国内で、将来的な主力製品(特にワクチン)の臨床試験を多数計 画している。
(出典)Pacific bridge medical “Philippine pharmaceutical market update 2013”及び各社ホームペ ージよりみずほ情報総研㈱作成。
145 Pacific bridge medical “Philippine pharmaceutical market update 2013” (2013.5.9:
http://www.pharmaphorum.com/articles/philippines-pharmaceutical-market-update-2013)
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(2) 医療機器市場
① 全体概要
フィリピンの医療機器市場は、2012年時点で2.68億ドルである。内訳としては、診断機器が 30%、ディスポーザブル製品が26%となっている。医療機器の輸入額は1.89億円であり、X線 CTで中国の存在感が高まっている。なお、日本は一部の診断機器で一定の存在感を有する。
図表 3-44 フィリピン医療機器市場における製品別シェア
(出典)Espicomよりみず情報総研㈱作成
図表 3-45 医療機器の輸入状況
(出典)UN Comtradeよりみずほ情報総研㈱作成
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② 戦略:留学生・研修生をユーザーとして取り込む
フィリピンの医療機関のうち、先端的な設備を持つ施設については、多くが欧米製の医療機 器を導入していることが、「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(医療機器・サー ビスの海外展開に関する市場環境調査)」146における現地医療機関へのヒアリングで明らかとな っており、この傾向は特に大型医療機器で強い。導入の多いメーカーとしては、主にフィリッ プス、シーメンス、GEが挙げられており、特に私立病院では、診断機器はほとんどがシーメン スやフィリップスの製品となっている。同調査によれば、その背景として、フィリピンの医師 の留学先や研修先で欧米製の医療機器が使用されていることが多く、そこで使用方法を身につ けたり紹介されたりした機器を、帰国後、所属する病院に推薦し、導入しているという。
③ 戦略:販売金融
フィリピンでは、医療機器の購入にあたって、「プロフィット・シェアリング」という支払方 法が採用されているケースが多数存在する。「プロフィット・シェアリング」とは、医療機器メ ーカーが製品を納品した後、医療機関側がその医療機器を使用することで得られた診療費(検 査機器であれば、検査料等)を医療機関側とメーカー側でシェアすることで、納品した医療機 器の代金を回収する方法であり、特に、一括払い(前払い)が難しい高額医療機器について採 用されることが多い。
欧米の医療機器メーカーは、ジョイントベンチャーを立ち上げるなど現地企業とも連携して、
無料で機器を本病院に設置する代わりに、得られた収入の一定額を支払う上述のプロフィッ ト・シェアリングのようなシステムを提供していたり、シーメンス社の「シーメンスローン」
等のように医療機器購入のためのローンを提供していたりするなど、現地医療機関が柔軟に自 社製品を購入できる仕組みを提供している147。
④ 戦略:現地の開発事業者との提携
医療ツーリズムによる集客を目指して不動産開発のセンチュリー・プロパティーズがマカテ ィ市で進めている「センチュリア・メディカル・マカティ・プロジェクト」では、GEヘルスケ アがパートナーとなって、同社製のMRI(磁気共鳴画像診断)検査装置やCTスキャン、X線検 査装置、マンモグラフィー装置といった医療設備を納入することとなっており、外来診察の診 療所や日帰り手術などを行う28階建ての医療施設「センチュリア・メディカル・マカティ」が
146 みずほ情報総研株式会社(2012)「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(医療機器・
サービスの海外展開に関する市場環境調査)報告書」
147 みずほ情報総研株式会社(2012)「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(医療機器・
サービスの海外展開に関する市場環境調査)報告書」
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2016年に完成予定となっている148149。
⑤ 戦略:公民連携(Public-Private Partnership:PPP)の活用
フィリピンは、アキノ大統領の重要政策として、PPPを推進している。医療分野では、フィ リピン整形外科センター(Philippine Orthopedic Center;POC)近代化事業のような大規模 事業のほか、PPPの枠組みを活用して、リニアック等の各種の医療機器の購入が予定されてい る。こうした中、2012年度時点では4つの投資機関がPPPを活用したPET-CTサイクロトロンの 導入に興味を示しており、うち1つでは、GEヘルスケアの製品導入が検討されていた150。欧米 の医療機器メーカーは、国策レベルの取り組みにも入り込んでいるといえる。
大統領の進めるPPPの枠組みを通じて機器を導入することで、大統領がレセプション等に参 加することも想定されるため、それによる宣伝効果は非常に大きなものであると考えられる151。
148 Century Properties Group Inc.ホームページ
http://www.century-properties.com/press-room/centuria-medical-makati-to-meet-demand-in-me dical-tourism/
149 NNA Asiaニュース2014年2月18日付記事
150 みずほ情報総研株式会社(2012)「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(医療機器・
サービスの海外展開に関する市場環境調査)報告書」
151 みずほ情報総研株式会社(2012)「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(医療機器・
サービスの海外展開に関する市場環境調査)報告書」
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