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67被害者のための出発前の準備

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支援提供団体は、帰還のためにどのような具体的支援が提供される予定なの か、基本的な概要を被害者に提示することが求められる。帰還する被害者が特 に知りたいと考えるのは、通常、どのぐらいの期間で家に帰れるのかというこ とである。面接担当者は、その事案に特有の事情(たとえば身分証明書が手元 にあるかどうか)を踏まえながら必要な措置を評価し、プロセス終了までにか かる時間を見積もることが求められる。被害者に対しては、どのようなプロセ スなのか、それには平均してどのぐらいの時間がかかるのかについて、はっき りした情報を提供するべきである。また、出発が予想していたより早まったり 遅れたりしても驚くことがないよう、プロセスを早めたり遅らせたりする可能 性のある要素があれば、それについても情報を提供しておくことが求められ る。

被害者の帰還が滞りなく安全に進むようにするため、支援提供団体は、被害者 が出発前に十分な準備を整えられるようにするべきである。そのため、次の点 に関する情報を提供しておくことが求められる。

利用可能な権利と選択肢、ならびに帰還に関する規則とその理由

受入れ先組織の電話番号と担当者名

渡航援助金の支給(該当する場合)

渡航中はアルコールを摂取してはならないこと(特に薬を飲んでいる場合)

受入れ国で利用することのできる支援

社会復帰にかかわるさまざまな選択肢についての情報を被害者に提供する際に は、最終的な社会復帰計画は受入れ国で、社会復帰のための最終的な評価を経 て策定されることを強調しておくのが重要である。

...

何よりも重要なのは、受入れ国(帰還先)でどのような選択肢がありうるのかについて、

被害者が現実的に把握できるようにすることである。委託元団体のスタッフが誤った印 象を与えてしまうと、被害者の効果的社会復帰に有害な影響を及ぼすことになる。

...

支援提供団体は、被害者の出発/委託までに、以下の条件が満たされるよう努

力することが求められる。

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被害者の身体的・精神的条件から見て、現在の一時的滞在場所から安全にか つ自発的に出発することが可能であること。

被害者が、出発にかかわるあらゆる手続について理解し同意していること。

被害者との協力により、到着時に(少なくとも一時的に)滞在できる安全か つ適切な場所が決まっていること。

必要な法的書類、行政書類、被害者の身分証明書および旅行書類が出発前に 漏れなく揃っていること。

支援の委託状況およびケアのフォローアップにかかわる提案について、被害 者に余すところなく説明・提示が行なわれたこと。

受入れ国(帰還先)の支援提供団体に被害者を委託する場合に、あらゆる必 要な書類と、安全確保にかかわる提供可能な情報が、受入れ先組織に対して 提供済みであること(下記参照)。

経由国または受入れ国(帰還先)の提携NGOその他の支援提供者に被害者 を委託する場合には、渡航や支援にかかわるあらゆる手配が事前に完了・確 認されていること。また、それら提携 NGO や支援提供者が、今後の支援に ついてのアドバイスの送達を受け、それを受領していること。

被害者に対し、関連するあらゆる個人書類(必要に応じて医療ケアの記録、

案件進展記録その他のデータを含む)のコピーが渡されていること。

被害者に対し、出発、移送およびフォローアップ支援にかかわるあらゆる措 置についての情報が十分に提供されていること。

経由国または目的国にいる被害者で一時在留許可を求めている被害者 国連・人身取引補足議定書第 7 条は、締約国が、適当な場合には、人身取引被 害者が一時的または恒久的にその領域内に滞在ができるよう、立法その他の適 当な措置をとることを考慮するよう、勧告している。永住許可や一時在留許可

(または一時査証や人道査証)の発給制度がある国では、人身取引被害者に対 し、関連する手続や次にとるべき措置についての情報が提供されるべきであ る。被害者の個人的状況(たとえば、人身取引加害者に対する訴追手続への参 加を理由として査証を発給される資格、ないしその他の関連の地位を有してい るなど)と、支援提供組織のこれまでの実務経験(書類を整えて決定を受ける までに通常どのぐらいの時間がかかるか、また成功の見込みはどのぐらいかな ど)にもとづき、面接担当者は、どのような措置をとらなければならないか、

手続の完了にどのぐらいの時間がかかるかを評価することが求められる。被害

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者に対しては、手続およびそれにかかる平均的期間についての情報がはっきり と伝えられるべきである。また、被害者が心の準備を整えられるように、そし て予想外の事態に動揺する可能性を最小限に留めるために、手続を早めたり遅 らせたりする可能性のある要素があれば、それについても告知しておくことが 求められる。支援提供団体は、手続にどの程度の時間がかかるかを把握し、ど のような支援を提案・提供するかについて適切な計画が立てられるようにして おくべきである。

経由国・目的国にいる被害者で庇護を希望している被害者

人身取引被害者を対象として活動する支援提供団体は、自国や出身コミュニ ティへの帰還を恐れる被害者もいることを十分に承知しておかなければならな い。したがって、被害者に対しては、どこで人身取引加害者からの逃亡に成功 して助けを求めたかに応じて、目的国か経由国のいずれかにおいて、庇護手続 その他の保護制度へのアクセスが保障されるべきである。自国に帰還させられ れば危険な状況に陥る人身取引被害者が存在することは、国連・人身取引補足 議定書第14条に留保条項が含められたことで、すでに認知されているところ である。

国連・人身取引補足議定書第 14 条の規定は次のとおりである。「この議定書 のいかなる規定も、国際法(国際人道法並びに国際人権法、特に適用可能な場 合には、1951 年の難民の地位に関する条約及び 1967 年の難民の地位に関 する議定書並びにこれらに含まれるノン・ルフルマン原則を含む。)の下にお ける国家及び個人の権利、義務及び責任に影響を及ぼすものではない」。

ノン・ルフルマン原則は、国際的保護の中枢をなす原則として言及されること

が多い。1951 年の難民の地位に関する条約(以下「難民条約」)に掲げられ

たノン・ルフルマン原則は、国際慣習法としての地位を得ている。すなわちこ

の原則は、時の経過を経て、まだ難民条約の締約国となっていない国も含むあ

らゆる国を拘束するようになったということである。すべての国がノン・ルフ

ルマン原則を尊重しなければならない。この原則には次の要素が含まれる。(i)

庇護希望者や難民を、その生命や自由が脅かされるおそれのある場所に送還し

てはならない。(ii) たとえ密入国または人身取引によって連れてこられた場合で

あっても、庇護希望者や難民がその国で安全を求めることを妨げてはならな

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い。そうしなければ、その生命や自由が脅かされるおそれのある国へ送還され る可能性が生ずるためである。(iii) 迫害を逃れて国境に到着した人々に対し、自 国の領域へのアクセスを否定してはならない(庇護へのアクセス権)。

ノン・ルフルマンの義務は、拷問等禁止条約第 3 条をはじめとして、国際的・

地域的人権関連文書のもとでも存在する。自由権規約委員会が一般的意見31 号(パラ12)

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で展開した人権法上の義務の解釈も、出身国での非人道的なま たは品位を傷つける取扱いや処罰(国家以外の主体によるものも含む)を恐れ る人身取引被害者にとっては、とくに関連性が高いと言える。

子どもについては、児童の権利委員会が一般的意見6号で次のように説明して いる。「……〔児童の権利〕条約上の義務を履行するにあたり、国は、児童に 回復不可能な危害が及ぶ現実の危険性があると考えるに足る相当の理由がある 国に児童を帰還させてはならない。このような危害としては、条約第6条およ び第37条で規定されている権利の侵害が挙げられるが、けっしてこれに限ら れるものではなく、またそのような危害が現在帰還が予定されている行き先の 国に存在するか、またはその児童がその後に送還させられる可能性のあるいず れかの国に存在するかも問われない」

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ノン・ルフルマンの原則違反となる可能性があるのは、出身国における迫害そ の他の重大な危害を恐れる人身取引被害者が帰還させられた場合である。重大 な危害には、再度の人身取引、人身取引加害者や犯罪者ネットワークからの報 復、また迫害に相当するほどの排斥・社会的排除・差別などが含まれる。たと えば、出身国でふたたび人身取引の被害に遭うのではないかと恐れたり、人身 取引加害者や人身取引ネットワークの関係者による報復、いやがらせ、威嚇、

脅迫を恐れたりする被害者も存在するだろう。また、人身取引被害者が、出身

国の公的機関による脅迫・差別や、家族やコミュニティによる社会的排除・排

斥を恐れるのも珍しいことではない。家族によって人身取引の被害者となった

子どもが出身コミュニティに帰還した場合も、さまざまな形態の不当な取扱い

を受けるおそれが高まりかねない。

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