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38 第4章 クルーズ船寄港候補地の選定手法の提案

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第4章 クルーズ船寄港候補地の選定手法の提案

前章では、現在の寄港地の分析を行い、大規模な港湾だけでなく、地方港湾や、漁協も寄港地 として選ばれており、また今後の寄港回数の増加も期待できることが分かった。また、その一方 で、西日本への寄港回数が多いことも分かったが、今後さらにクルーズ振興が拡大し、フライ&ク ルーズ等の増加や、日本船社の事業拡大、北太平洋を渡る欧米船社の航路拡大によっては、東日 本での寄港回数が増えることが期待できる。

しかしながら、東日本の港の中からクルーズ船の寄港地として適する港を選定する方法は定ま っておらず、各自治体としても、自港がクルーズ船にとって魅力的な場所なのか判断することは 難しい。そこで、将来の新たな寄港候補地として、寄港実績の無い港湾・漁港から「観光地とし ての魅力」と「既存交通体系によるアクセスの不便さ」双方の特徴を兼ね備え、クルーズ船で訪 れる優位性が高い場所の選定を行う。

4-1.寄港魅力度の概念と算出方法

本研究における寄港魅力度は、クルーズ船を使って訪れることの優位性を示すものであり、「港 の近くに魅力的な観光資源があり、かつ既存の交通体系では訪れにくい場所を表す指標」という 概念を定め、以下の式(a)から算出を行う。

𝑃

𝑖

= 𝑆

𝑖

𝐴

𝑖

(a)

𝑃𝑖:i港の寄港魅力度 𝑆𝑖:i港の観光魅力係数

𝐴𝑖:i港の海上アクセス優位係数

算出方法としては、各港周辺の観光資源の豊富さを示す「観光魅力係数

𝑆

𝑖」に、各港へ訪れる際 にアクセスの起点となる、最寄りの新幹線または特急停車駅、高速道路インターチェンジ(以下、

IC)

、空港といった交通体系からのアクセスの悪さ(距離的遠さ)を示す「海上アクセス優位係数

𝐴

𝑖」を乗じる。これにより算出された数値を、各港におけるクルーズ船の寄港価値を表す「寄港 魅力度

𝑃

𝑖」として扱う。各係数の詳細な算出方法については後述する。

本研究で提案する寄港魅力度の算定方法として、観光魅力係数と海上アクセス優位係数を対等 に(同じ比率で)扱い両係数を乗じる理由としては、例えば、観光地としてとしての魅力度が高 く、アクセスも良い場所は「訪れやすい人気観光地」となり、あえてクルーズ船で訪れなくとも 比較的手軽に楽しむことができる場所といえる(図-4-1-1)。一方で、観光地としての魅力はある ものの、アクセスが不便な場所は「魅力はあるが訪れにくい観光地」となり、アクセス手段を改 善することで、地域の観光産業が活性化する可能性を秘めている。その中でも、沿岸地域にある

「魅力はあるが訪れにくい観光地」は港からは距離が近く、クルーズ船で入港できればアクセス が容易になる可能性がある。そのため、寄港魅力度では単に観光地としての魅力が高い場所を導 き出すのではなく、既存の交通体系によるアクセスの不便さという条件も同時に満たす地域を抽 出することを目的とし、観光魅力係数と海上アクセス優位係数を乗じることとしている。

わが国におけるクルーズ船の寄港に適する港の選定と誘致方策に関する研究 クルーズ船寄港候補地の選定手法の提案

観光魅力係数と海上アクセス優位係数の取り扱い については、両者を加算する方法も検討した。しかし、

加算する場合、観光魅力係数と海上アクセス優位係数 のどちらか片方だけの係数が大きければ寄港魅力度 も大きくなってしまう。本研究の観光魅力度は観光魅 力とアクセス不便性両方を満たす場所を抽出するも のであり、つの係数を乗じることが適していた。係 数同士の計算比率も

:、:

など様々なパターン で計算を行った。しかし、加算する場合は先述の通り 片方の係数が非常に高い地域が抽出されてしまう結 果となり、本研究の目的に対して適切ではなかった。

乗じる場合も比率を変えると全体の数値が変化する のみで、順位に変動はなく、

:で計算を行うことと した。

4-2.観光魅力係数の算出方法

(1)観光魅力係数の計算式

観光魅力係数の算出に用いる式(E)を以下に示す。

𝑆

𝑖

= ∑ 𝐹

𝑥

𝐷

𝑥

(E)

𝑆𝑖:L港の観光魅力係数 𝐹𝑥:観光要素ごとの重みづけ

𝐷𝑥:観光地までの距離による重みづけ

観光魅力係数は、各港から

NP

圏内にどれだけ多くの 観光資源が存在するかを示す数値としている(図)。算 出方法は、地域に存在する各観光地の要素ごとに重みづけを 行った「観光要素ごとの重みづけ

𝐹

𝑥」に、その観光地から港 までの距離(近さ)を評価する「観光地までの距離による重 みづけ

𝐷

𝑥」を乗じ、各港の

NP

圏内に存在する観光資源 の数だけ係数を加算する。

なお、観光地を抽出する範囲を

NP

とした理由は、港 から離れた内陸部に観光地があることも魅力の一つではあ るものの、港から遠い観光地までを対象とすると、あえてク ルーズ船で行かなくとも既存の交通体系でアクセスしやす

い観光地も含まれるようになり、本研究における寄港魅力度を構成する要因である「クルーズ船 で訪れる強み」(海からアクセスすることの優位性)が希薄になってしまうためである。また、寄

魅力があるが 訪れにくい 船であれば アクセスしやすい 低

高 訪れやすい 人気観光地

観光地の魅力 交

通 利 便 性

観光地とアクセス性の関係図

観光魅力係数の概念

:観光地(大きいほど魅力が高い)

わが国におけるクルーズ船の寄港に適する港の選定と誘致方策に関する研究 クルーズ船寄港候補地の選定手法の提案

港地自身がクルーズ船の寄港によって恩恵を享受できるよう、港から近い範囲でクルーズ船客に 活動してもらえる可能性の高い場所を抽出することを考え、活動範囲が広域になりすぎないよう

NP

と設定した。

さらに、

年~年の北海道におけるクルーズ船の滞在時間(入港時刻から出港時刻まで)

を調べると、平均約

時間となっている。そこから上陸・出港準備時間、昼食時間などを引く と、クルーズ船客が観光できる時間は実質

時間程度となる。そのような限られた時間の中で 複数の観光地を訪れるためには、港から観光地までの距離の近さも重要と考え、各観光地までの 距離による重みづけを行い、港の近くにより多くの観光施設を有する場所の観光魅力係数がより 高くなるように設定を行った。

(2)観光要素の違いによる重みづけの考え方 観光魅力係数に算入される

観光要素とその重みづけを表

に示す。観光地の魅力は、

その観光要素の内容によって 魅力の大きさが異なるため、観 光要素によって係数を変える、

「重みづけ」を行う必要があ る。そこで、観光魅力係数とし て用いる観光要素の選定と、

「観光要素ごとの重みづけ

𝐹

𝑥」 の算定を以下の手順で行った。

観光要素の選定は、観光庁が 作成した「観光地の魅力向上に 向けた評価手法調査事業報告 書」に記載されている「観光客 が観光地で何を楽しみにして いるのか」のアンケート結果

を基に行った。その結果、表に記載のある

つの項目が上位に挙げられていた。本研究で は、その中の「温泉」「自然景観」「文化的な名所旧跡」「観光文化施設」の

つの観光要素につい て重みづけを定めることとしている。

これは、「食」「自然体験」「買い物」の

要素については、それぞれの具体的な施設を特定する ことが難しいことが理由として挙げられる。さらに、筆者らが全国各地の自治体へヒアリング調 査を行ったところ、「買い物」は、九州の自治体では中国発着クルーズの場合に免税店などでの 消費が目立つという話があったが、北海道の自治体からは、そこまで大きな消費は期待できない という回答を得た。「食」についても、船内の食事は無料であるためクルーズ船客はあまり寄港地 の飲食店を利用しておらず、昼食時には船内に戻る場合も多いという実態がある。このような理

順位 分類名称 楽しみに

訪れる割合

重みづけ 係数 温泉 自然景観

文化的な名所旧跡

自然体験 買い物

観光文化施設

各観光要素の重みづけ𝐹𝑥と当該施設の数

温泉 ZHEサイト楽天トラベルの「温泉地一覧」に記載されて いるもの。

自然景観 ZHEサイトWUDYHOの「自然・景勝地一覧」に記載され ているもの。

文化的な 名所旧跡

国指定文化財、および各道県指定文化財に登録されている もの。

観光文化施設国土数値情報の「文化施設データ」から学校関連施設(公 共施設大分類コード学校)を除いたもの。

各観光要素の抽出条件

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