• 検索結果がありません。

(16)耳鼻咽喉科学講座史

ドキュメント内 医 学 部 (ページ 114-117)

して患者の期待にこたえ、外来患者数、年間手術件数、病床稼働率もともに高い水準を維 持している。

現状と将来の課題

臨床医学講座では、医療面においても最新・最高の水準を絶えず維持することが求めら れるのは当然であり、当教室においては、高度の技倆と最新の設備を要する網膜・硝子体 手術が既に実施され、黄斑下手術も最近開始され、従来不治であった疾患も治療して好成 績を収めている。さらに、最近社会的にも注目されている屈折異常(近視、乱視)矯正手 術も既に開始されている。研究面では当教室の長年の蓄積のある視覚電気生理学的手法の ほかに遺伝子学的手法、分子生物学的手法も加えて眼疾患の早期診断・病態解明に努めた い。その成果は、失明の第1原因とされる糖尿病網膜症に関して既に得られている。

1907年4月10日、官立医学専門学校規定により学科科目中に耳鼻咽喉科学が制定され、

翌1908年9月11日金沢医学専門学校にも、はじめて耳鼻咽喉科学が規定されるに至り、

宮田が外科学と耳鼻咽喉科学の講義を兼務担当することになった。このころから耳鼻咽喉 科を専門に志す者の入局がみられるようになった。1914(大正3)年3月、宮田は耳鼻 咽喉科学研修のためドイツへ留学したが、同年夏に第1次世界大戦が勃発し、やむなく帰 国し、東京帝国大学耳鼻咽喉科教室岡田和一郎教授の下で1917年4月まで研修した。そ の間、佐崎伊久(1905年、金沢医専卒)が講師となり、職務を代行した。1921年7月4 日、宮田は外科の担任を解かれ、専任の耳鼻咽喉科学教授となり、同年9月12日退職した。

宮田の後任には、当時退職していた佐崎伊久が教授となり耳鼻咽喉科学を担当した。

その後1923年、官立医科大学官制により金沢医科大学となり、同年3月7日、当時九 州大学助教授で、欧州留学から帰朝直後の久保護躬が、金沢医科大学としては初代の耳鼻 咽喉科学教授として就任して講座を担当した後、1929年11月8日千葉医科大学へ転任し た。次いで、九州大学助教授であった山川強四郎が後任教授となり、1931年10月30日大 阪帝国大学へ転任した。その後当時熊本医科大学助教授であった松田龍一が教授として着 任し、30年にわたり講座を担当し、1963年3月停年退職した。同年5月10日当時農協高 岡病院長であった豊田文一が後任教授となり、1973年3月停年退職した。同年6月1日、

金沢大学助教授であった梅田良三が教授となり、1990年3月停年退職した。現在は、同 年8月1日から金沢大学助教授であった古川仭が教授に就任し、教室を主宰している。

診療と研究

宮田篤郎・佐崎伊久教授時代(1903〜1924年) 鼻科領域の悪性腫瘍に対する手術的療 法並びに放射線治療についての研究がなされ、その成果の一部は、1919(大正8)年日 本耳鼻咽喉科学会第23回総会で「鼻及び副鼻腔の悪性腫瘍の治療」と題して宮田教授から 宿題報告された。

久保護躬教授時代(1925〜1929年) 聴器生体固定法についての研究がなされた。

山川強四郎教授時代(1930〜1931年) 慢性上顎洞炎の治療に関する臨床研究がなされ た。

松田龍一教授時代(1932〜1962年) 次の各項目について研究がなされた。①耳性眼球 震盪。②音声言語障害並びに聾唖に関する研究。③女性における性的現象の耳鼻咽喉疾患 に及ぼす影響に関する研究。本研究は、1938(昭和13)年日本耳鼻咽喉科学会、第42回 総会において宿題報告された。④嗅覚に関する研究。

豊田文一教授時代(1963〜1973年) ①僻地における耳鼻咽喉科医療に関する研究。毎 年北陸3県の僻地検診を実施して成果を挙げた。②音声言語障害に関する研究。言語外来 を開設して、言語障害児の治療に大きく貢献した。③嗅覚に関する研究。特に臨床的嗅覚 検査法の開発について研究を進め、1971年度の文部省総合研究「嗅覚検査のための基準 臭と検査方式の研究」の研究代表者となった。その成果として、T&Tオルファクトメトリー

が開発され、本邦の標準的嗅覚検査法として普及するに至った。

梅田良三教授時代(1973〜1990年) ①嗅覚に関する研究。本研究は、1981(昭和56)

年第82回日本耳鼻咽喉科学会総会で「嗅覚障害の診断と治療をめぐって」と題して、宿題 報告された。②腫瘍免疫に関する研究。③音声言語障害に関する研究。④顔面神経麻痺に 関する研究。⑤身体動揺に関する研究。

古川仭教授時代(1990年〜現在) ①EBウィルスによる上咽頭癌の発癌のメカニズムの 研究。EBウィルスの前初期蛋白Zと上咽頭癌の発癌機構の関連を分子生物学的解析。また 頭頚部癌の浸潤転移に関し、マトリクスメタプロティナーゼに関連した研究も並行して行 われている。②嗅覚に関する研究。動物を用いた種々の病態モデルを作製し、in  situ hybridization・電顕を中心として発展している。嗅覚の他覚的検査は、非常に難しい分 野であるが、教室で開発中の電気生理学的検査法でこの分野に先鞭がつけられた。③人工 内耳と言語発達に関する研究。従来、補聴器以外に有効な方法がなかった難聴児の教育に、

金沢方式と呼ばれる文字言語を早期から刺激し乳幼児の言語発達を促す方法に加えて、人 工内耳を導入して、より健聴児に近い発達を促す研究と医療がなされている。④頭頸部再 建外科に関する研究。頭頸部癌切除後の機能障害に対して、血管柄付き遊離組織移植を行 い、術後機能障害を最小限に食い止めるため種々の自家移植組織が検討されている。

現状と展望

診療面では、人工内耳手術、内視鏡下鼻内手術、遊離皮弁による頭頚部再建手術など、

先端医療を取り入れ新技術の導入に努めている。

平衡・嗅覚・アレルギー外来など専門外来を行っており、嗅覚外来には、北陸以外の遠 方からも患者さんが紹介されてくる。アレルギー外来では、アレルギー性鼻炎に対しての day  surgeryとしてKTPレーザーを用いての下鼻甲介焼灼手術を行っており、侵襲が少な く効果的で、患者さんからの評価が高い。

他大学に比して、言語外来は充実しており、常時2名以上の聴覚言語療法士が言語発達 遅滞・聴能訓練・失語症の言語指導などに従事している。人工内耳埋め込み手術後のリハ ビリは、言語療法士のサポートが不可欠であり、当科がいち早く人工内耳での高度先進医 療の指定を受けられたのも、このような背景が大きな要因である。入院診療は、木曜日の 教授診察を核として、月・水・金曜日が手術日で、年間450件以上の手術を施行している。

以前と比較して手術件数は減少傾向にあるが、これは長手術時間件数の増加によるもので ある。頭頚部癌の手術は、再建手術を含めると10数時間に及ぶことも珍しくなく、咀嚼・

嚥下・呼吸・発声など人間として生きていくのに不可欠な機能を回復させるため、再建手 術を必要とする。当科では、血管付き遊離皮弁を用いて、整容的にも機能的にも患者さん に満足してもらえるよう努力している。

教育に関しても、スタッフ一同積極的に取り組んでおり、卒後教育の面では入局1年目 は指導医の下で耳鼻咽喉科全般の基礎的修練を受け、大学院生はほとんどが学位を取得し、

医局員は5年間で学会認定専門医の資格を取得している。

以上、21世紀に残された大きな課題であろう癌の克服と感覚器障害の治療に対し、基礎 と臨床の両面から教室員一同日々研鑽をしており、今後とも多方面からの御支援と御鞭撻 を賜りたい。

ドキュメント内 医 学 部 (ページ 114-117)