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(14)泌尿器科学講座史

ドキュメント内 医 学 部 (ページ 108-111)

沿革

1913(大正2)年2月20日に、土肥章司名誉教授により金沢医学専門学校に皮膚泌尿 器科学教室が開設されて以来、伊藤実教授、長谷川宗憲教授、並木重郎教授、川村太郎教 授がそれぞれ歴任された後に、1955(昭和30)年9月16日、東大講師兼三井記念病院皮 膚泌尿器科医長であった黒田恭一講師に対し「金沢大学教授とし、医科大学教授を併任す ることとするが、実際は泌尿器科学の講義、研究、診療の一切を担当する」との発令がな され、不完全講座ではあるが、現在の金沢大学泌尿器科学教室が開設された。同年11月 16日附属病院において、皮膚科より分離独立して泌尿器科診療が始まり、学生に対しても 泌尿器科学講義が開始された。

1960年4月1日からは完全独立講座となり、教授、助教授、講師各1名、助手5名が泌 尿器科学の定員となった。1966年4月には、外来が現在の場所に、1967年11月には教室 が現在の臨床研究棟6階に移転した。1974年4月、津川龍三講師が金沢医科大学泌尿器科 教授に就任した。1977年11月30日黒田教授が第11期日本学術会議第7部臨床医学の部に

て学術会員となる。1981年7月黒田教授は退職され、福井県立病院長に就任した。1982 年1月久住治男助教授が教授に昇任した。世界ではじめて金蒸気パルスレーザーの実用化 に成功し、がんの先端医療に新たな道を開いたことに対して、1987(昭和62)年11月3 日第41回北國文化賞が授与され、1990(平成2)年11月3日、金沢市文化賞を授与され た。1991(平成3)年7月21日、久住教授が第15期日本学術会議地域医学研究連絡委員 に選出される。同年10月には、内藤克輔講師が山口大学泌尿器科教授に就任した。1993 年3月久住教授が退職した。1995年11月には、並木幹夫教授が大阪大学より着任した。

金沢大学泌尿器科同窓会は、1963年9月21日に設立総会が開催された。以来年に1回 の総会が開催され、会員相互の連絡親睦、後進の育成と泌尿器科学教室の発展に尽力する ことを目的とし、現在に至っている。

診療および研究

黒田教授時代 泌尿器科学教室が独立して診療を開始したのが、1956(昭和31)年11月 16日であり、尿路結核や性病は年ごとに低下傾向が見られたが、泌尿性器非特異的炎症が 最も多く、尿路結石や腫瘍及び前立腺肥大症患者が次第に増加してきた。当科の公的病床 数も開設当時の19床から、1964年には28床に増加し、入院患者数もそれに伴い増加傾向 を示した。北陸地区病院の泌尿器科の現状は、教室開設後の数年間は、皮膚科学及び泌尿 器科学を両方研修した医師の派遣が続いた。1964年に富山市民病院で皮膚・泌尿器科が 分離した後、両科の分離または泌尿器科新設病院が順次増加した。1972年泌尿器科外来 に膀胱・尿道内圧測定装置が設置され、研究のみならず臨床的にも、大いにその威力を発 揮した。膀胱腫瘍の線溶、組織培養による基礎的研究により、膀胱腫瘍再発予防を目的と した抗癌剤及びウロキナーゼの膀胱内注入療法が開始された。1980年泌尿器科用超音波 断層装置が購入され、前立腺疾患の診断や膀胱癌の浸潤度判定のみならず、超音波ガイド 下腎瘻造設術も安全かつ容易に施行可能となった。

研究面では、前立腺、膀胱疾患、特に癌関係のテーマが多く行われ、ついで前立腺手術、

排尿障害及び尿路のX線診断の研究が行われた。前立腺腫瘍の酵素化学、早期診断、前立 腺手術と線維素溶解現象とその対策、さらに癌発生病理についても研究が行われた。膀胱 腫瘍の膀胱壁浸潤に関するX線学的stage診断、及び再発防止に関する基礎的・臨床的研究 が行われた。排尿障害に関しては、排尿を中心としたX線学的形態と、その機能について の研究が続けられた。また、腎性高血圧症における腎血行動態の研究、腎移植術式の基礎 的研究も始まった。また、男子不妊症に対するホルモン治療の基礎的研究も行われた。

1967年11月には、現在の新研究棟へ引っ越しが行われ、生化学実験室も充実し、基礎的 研究も十分行える環境となった。1974年4月津川教授以下5名が金沢医科大学へ赴任し、

膀胱腫瘍を中心とした線溶系の研究、外科的腎疾患の研究及び下部尿路通過障害の研究に グループ分けされた。学会関係では、日本泌尿器科学会金沢地方会が1913(大正2)年 に皮膚科集談会として創設された。1960年12月10日の第200回からは、皮膚科・泌尿器

科演題を分離して開催された。1964年からは、日本泌尿器科学会北陸地方会と改称され、

皮膚科地方会より完全に分離して開催されるようになった。1961年5月には、第49回日 本泌尿器科学会総会が黒田恭一会長により金沢で開催された。1967年11月には、第18回 日本泌尿器科学会中部連合地方会が黒田会長により開催された。1974年10月には、黒田 会長により第19回日本不妊学会総会が金沢で開催された。1980年11月には黒田会長によ り第30回日本泌尿器科学会中部総会が開催された。

久住教授時代 2代目教授として、1982(昭和57)年1月1日付けで教室主任として久 住教授が就任。1981年度特別設備費により、表在性膀胱癌及び膀胱上皮内癌に対するア ルゴン色素レーザー装置が設置された。5月27日、ヘマトポルフィリン誘導体とアルゴン 色素レーザーによる光力学的治療が、膀胱移行上皮癌患者においてはじめて行われた。

1983年1月25日、尿路性器癌患者に対する高用量抗癌化学療法を目的とした無菌治療室 が病室に設置された。当科での膀胱癌に対する光力学的治療がニュースで報道され、各地 より問い合わせが殺到し、本療法の幕開けとなった。11月9日に、金蒸気パルスレーザー が搬入された。1984年、温熱癌治療の基礎的・臨床的研究が本格的に開始された。同時 に、学内より要望の多い腎移植に向けての準備が開始された。2月、外来にレーザー及び 温熱治療室が設置された。4月8日、癌治療用局所深部加温装置による臨床応用が開始さ れた。一方北陸地区においても、泌尿器科内視鏡治療(Endourology)の波が押し寄せ始 めた。1985年2月19日、第1回腎移植連絡会が開催され、当科における腎移植への準備 状況が説明され、各診療部門よりの協力体制が整った。3月20日には当教室第1例目の生 体腎移植、7月11日には献腎移植第1例目が行われた。研究面においては、尿路性器癌に 対する抗癌剤の感受性試験、膀胱癌に対する光力学的治療、尿路性器癌に対する局所深部 加温療法、尿路感染症におけるカンジダ感染、神経因性膀胱における各種薬剤の薬理作用 など、教室員全員でこれらのテーマについての基礎的・臨床的研究を推進した。高度先進 医療機器として、1989年10月体外衝撃波結石破砕装置が搬入され、多くの患者に福音が もたらされるようになった。学会開催については、1990年3月、第23回制癌剤適応研究 会が久住当番世話人により金沢市で開催された。11月には、第11回日本レーザー医学会 大会が久住大会長により金沢市で開催された。1991年5月、第79回日本泌尿器科学会総 会が、久住会長により金沢観光会館を主会場として開催された。8月には久住会頭により、

第13回日本光医学・光生物学会が金沢にて開催された。1992年9月には、久住大会長に より日本ハイパーサーミア学会第9回大会が開催された。これら久住教授が主催された学 会は、いずれも当教室のメインテーマであった尿路性器癌治療の基礎と臨床に関係したも のであり、教授在職期間中に発案され、かつ基礎的研究を基に臨床的治療にまで拡大した 集大成といえる。

並木教授時代 3代目教授として、1995(平成7)年11月16日付けで教室主任として並 木教授が就任した。臨床においては、腎移植の推進を図るべく透析病院における啓蒙活動、

移植コーディネーターの育成などを行っている。また、関連施設を含めた膀胱癌、腎癌、

前立腺癌及び精巣腫瘍の臨床的治験も大規模に行われ、今後は排尿障害及び泌尿器科先端 医療の共同研究の開始も予定している。一方、研究体制としては、教授の専門である男子 不妊、内分泌領域においては、Y染色体の不妊責任遺伝子の同定、精子成熟過程における 分化誘導物質の同定など、分子生物学の技術を駆使した世界でも最先端のプロジェクトが 着々と進行している。また尿路性器癌グループにおいては、膀胱癌、前立腺癌、精巣腫瘍 の転移モデルの開発と転移、浸潤機構の解析、またモノクローナル抗体を使った標的治療、

さらに遺伝子治療の可能性などの研究に精力的に取り組んでいる。前立腺癌のホルモン不 応性獲得のメカニズムと、これを克服すべく癌細胞分化誘導療法の可能性などを基礎的に 検討している。排尿障害に関する研究グループでは、ラット脳梗塞モデルを作成し、膀胱 及び尿道の機能的、器質的変化を追うことにより、これらの病態の解明と新しい治療戦略 の展開を追求している。学内外の他施設との共同研究の必要性を重視し、金沢大学がん研 究所、産婦人科、核医学、解剖学、薬学部、北陸大学薬学部、岐阜薬科大学、東大人類遺 伝学、阪大細胞工学、ピッツバーグ大学、NIHなどとタイアップして共同研究を推進して いる。

現状と展望

現在、当教室の同窓生は150人を超え、関連施設は50病院・医院に達し、更に多くの施 設から泌尿器科医の派遣要請を受けている。これからの高齢化時代において、泌尿器科医 の活動範囲はますます拡大しており、その前途は期して待つべきものがあると考えられる。

医学教育、研究、診療において国際間の情報交換、共同研究の確立は必須であり、研修医 教育を含め、国際的にも通用する優秀な泌尿器科医の育成が今後の大きな課題である。

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