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(7)放射線医学講座史

ドキュメント内 医 学 部 (ページ 89-92)

沿革

当講座の前身は、1917(大正6)年4月に小池才一部長(当時講師)の下に創設され た石川県立金沢病院理学診療部で、同部は1922(大正11)年4月の石川県立金沢病院の 文部省移管に伴い、金沢医学専門学校附属病院理学診療科と改称されている。1933年10 月小池助教授(当時金沢医科大学)は急逝されたが、同年に後の放射線医学教室の初代教 授となる平松博先生が入局し、1936年5月に理学診療科医長(当時助教授)に任じられ ている。1945年3月平松助教授が教授に昇格し、理学診療科は完全講座として認められ たが、この時期、相前後して全国の放射線科が独立している。1949(昭和24)年5月金 沢医科大学は金沢大学医学部となったが、当教室は7月に診療科名を放射線科と改め、教 室名を金沢大学医学部放射線医学教室と改称した。1959(昭和34)年、院内各科に分散 配置されていたX線発生装置とX線技術者が統合され、放射線部が発足し、1956(昭和31)

年5月に附設された医学部附属X線技師学校(後の医療短大放射線技術学科)とともに、

診療・研究を進める体制となった。放射線科病棟は、1956(昭和31)年8月現在の第3 病棟が落成し、5階に28床をえた。現在の6階には1971年6月に移転した。1968年4月 に現在の臨床研究棟6階に研究室を移転し、現在に引き継がれている。1972(昭和47)

年に分離独立した核医学講座に引き継がれるRI部門の歴史は、1952年3月の平松教授の 提案による金沢大学アイソトープ委員会の設置、1964年6月アイソトープ部の独立に始 まるが、以後の沿革については核医学教室の稿を参照されたい。平松教授は1975年3月 退官し、高島力教授が同年5月、第2代教授に就任した。

診療と研究

平松博教授在職時代(1945年3月〜1975年3月) 平松教室発足当時は、基本的な線量

測定に関するものから、X線を用いた生体測定、心臓 の形態と機能に関するもの、骨格の形態と計測、放射 線生物では放射線によるガス代謝の変動、放射線血液 学、特に白血球の形態と機能の変動についての論文が 多い。当時の診断装置は、単純写真と消化管、気管支、

子宮・卵巣などの造影検査法、断層撮影が主であり、

論文は、各臓器の正常像や計測に関するもので、対象 とした臓器も単純写真で検討可能な肺、心大血管、横 隔膜、骨などであった。後の高島教授時代に教室の主 研究テーマの一つとなる血管造影法、特に超選択的造 影法の開発は、昭和40年代になってからなされている。

放射線治療部門は発足当時、研究の重点が置かれず、

現在のような根治的線量を照射できる装置はもちろん

存在しなかった。1927(昭和2)年3月に深部治療室完成との記録があるが、その詳細 は明らかでない。60Co遠隔照射装置(27キュリー)の設置は1954年11月であり、2,000 キュリーの線源を持つ本格的高エネルギー放射線治療装置である60Co遠隔照射装置の設置 は1962年10月である。また、初期の放射線治療の対象疾患も現在とは大きく異なってい た。1968年3月ベータートロン照射装置、1973年3月60Co遠隔照射装置(3,000キュ リー)が設置されている。教室の発足当時は、前身である理学診療科の影響が強く物療内 科的性格があり、放射線以外に紫外線、赤外線、超短波、低周波などが研究されていた。

その一つとしての温泉医学は、現在の放射線医学の領域ではないが、当教室では当時高原 温泉研究所として、1949年7月に石川県吉野谷村中宮温泉に温泉治療学研究所を開設し、

1963年には岐阜県吉城郡上宝村栃尾温泉に、種々のX線装置、自動気象観測器などを持つ 研究所を開設している。1960年に山中温泉で開催された第25回温泉気候学会の会長も平 松教授が務めている。

平松教授在職中の学位取得者は、442名、論文1,289編を数え、1950年4月には第9回 日本医学放射線学会総会が、平松教授を会長として金沢で開催されている。また平松教授 は1958年4月から2年間、第20代医学部附属病院長を務め、退官後の1969(昭和44)

年北國文化賞を受賞、1974年4月には、アメリカ放射線学会名誉会員に推薦された。

高島力教授時代(1975年5月〜1999年3月) 他大学の放射線医学講座は診断、治療、

核医学の3部門からなるが、1972(昭和47)年3月に核医学部門が分離独立し、当教室 では診断・治療部門を担当している。現在では、Interventional  Radiology(IVR)が放 射線医学の新しい柱となり、当教室でも診療・研究の大きな部分を占めている。

高島教授、上村良一講師を中心とする呼吸器グループは、Digital  Radiographyの臨床 導入当初より、Fuji  Computed  Radiography(FCR)とX線CTを中心に肺癌の早期発見 と質的診断能の向上について研究を進めてきた。その成果は、1986年4月第45回日本医 写真7ー19 放射線科 平松博教授

学放射線学会総会の宿題報告「第1部:肺癌診断の新 しい展開 −X線CTとcomputed radiologyによる−」

「第2部:肺癌診断における一回撮影エネルギー差分 法」、及び1996年4月の第55回日本医学放射線学会総 会における会長講演「金沢大学病院における胸部単純 撮影の現況とエネルギー差分法導入について −Fuji Computed  Radiography  (FCR9501ES)を用い て−」をはじめとする論文群にまとめられている。血管 造影を中心とした腹部画像診断部門では、高島教授らが 開発した緩速注入肝動脈造影(Infusion  hepatic arteriography)は、肝細胞癌での血管造影による検 出能を向上させた国際的に有用な方法として評価され たが、その後研究を引き継いだ松井助教授を中心とす

るグループは、血管造影とX線CTを組み合わせた動注CTの有用性を早くから報告し、門 脈造影下連続CT(CT  during  arterial  portography)は、1984(昭和59)年の報告か ら現在まで、肝結節性病変検出のgolden  standardとなっている。現在では、さらに動注 CTを中心とした画像診断で硬変肝における肝結節病変の非観血的な質的診断を可能とし た。現在の画像診断の大きな柱の一つであるMRI装置は、専用の独立した研究棟の内に設 置され、1988(昭和63)年5月より稼働した。この恵まれた環境と独自の撮像法の工夫 により本学の画質は高く評価され、角谷真澄講師を中心としてメーカーと共同開発を行っ ている腹部領域の研究成果は、内外からも評価されている。中枢神経グループは、X線CT、

MRIを臨床面を中心に研究を進めている。川島博子助手を中心にした乳腺の画像診断では、

MRIを用いた診断法の研究の成果が昨年の放射線学会で評価され、日本医学放射線学会最 優秀論文賞を、松井助教授に次いで当教室2人目の受賞を果たした。IVRでは、松井助教 授を中心として肝細胞癌に対する肝動脈塞栓療法を中心に研究、臨床経験を積み、その成 果は小肝細胞癌に対する subsegmental  TAE(亜区域塞栓療法)(1994年)にまとめ られた。放射線治療部門は、1981(昭和56)年3月直線加速器(ライナック照射装置、

10MVX線)と治療計画コンピュータの設置、1995(平成7)年2台目の直線加速器(ラ イナック照射装置、10MVX線)、治療計画用CT装置の設置と器機の充実が図られ、肺癌、

特に小細胞癌と悪性リンパ腫の治療を中心に、他科と密接な関係を築きながら診療・研究 を進めている。院内各科と共同で、術中照射(1976年〜)、骨髄移植のための全身照射

(1981年〜)、温熱放射線併用療法(1984年〜)、早期乳癌に対する乳房温存療法(1986 年〜)なども大きな成果を挙げている。

高島教授は、1984年から1995年までの11年にわたり日本医学放射線学会理事を務め、

放射線学会の発展に貢献した。この業績により、1995(平成7)年のAmerican  College of  Radiologyの名誉会員にノミネートされ、現在名誉会員である。1996年4月から1998 写真7ー20 放射線科 高島力教授

年3月まで附属病院長を務めた。高島教室開講以来、27名が学位を取得している。また平 松教室開講以来、本年(1997年)までに本学及び他大学・研究所に35名の教授を送り出 している。

現状と展望

X線CT、MRIを中心とした診断器具の進歩はさらに、非侵襲的、高速かつ詳細な画像を もたらし、血管造影などの侵襲的な診断法は、治療法の一つとして発展していくものと考 えられる。特殊検査であったCT、MRIも、一般検査の一つとして広がっていく可能性もあ る。血管系では、メタリックステントを使用しての閉塞性動脈・静脈疾患の治療症例が増 え、大動脈瘤の血管内治療も人工血管用膜付きステントにより可能になる可能性が高い。

脳神経外科と共同で研究が進められている脳血管動脈瘤の血管内治療や、末梢脳動脈での 血栓溶解療法も可能となり、外科手術にとって代わる可能性もある。治療部門では、これ まで外照射治療が主体であったが、1998年から、遠隔操作高線量率密封小線源治療装置 の導入が決定している。本装置では子宮癌のほか、気管支、食道、鼻咽腔、胆道といった 部位の腔内照射が可能で、患者のQOLを保ちながら根治照射も期待でき、適応・治療効果 の更なる改善が期待される。

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